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「チャイナトレイン」

世界一周33日目(7/31)



モンゴルから陸路で国境を渡った僕はその日のうちに別の街まで移動することに決めた。中国にノービザで滞在できる日数は15日。ビザの延長が手間だった僕はそのまま弾丸で中国を縦断し、香港へ抜けるルートで旅することに決めた。

世界一周をするからには中国という国も見てみたい。けれど、長いするつもりもなかった。


呼和浩(フフホト)特東駅まで切符を来たのだが、まだ完成したばかりだということもあり、駅は綺麗で大きかった。

いつ弾けるか分からない中国バブル。フフホトの町には誰も住まない投資目的のビルが立ち並びそれでも新しい建物が作られ続けている。フフホト東駅もバブルの影響を受けて作られたのだろう。



駅で買ったのは「硬座」という安いチケットだった。

だがそれがどのような席なのかは分からなかった。

聞いた話によると中国の電車はそうとう気合を入れて望まないといけないらしい。

地元民で溢れかえり、空調のなかった時代は車内は灼熱地獄。旧正月や連休に入ると乗車率が200%を超え、満員過ぎて死者も出たくらいだと言うのだから不安じゃない方がおかしい。

フフホトのゲストハウスで会ったスペイン人のあんちゃんは「ちくしょー!おれもピンヤオに行くのに座る席すら取れなかった!」と地団駄を踏んでいた。

そもそも「硬」ってなんだ⁈

そんなのに座ったらお尻がまっぷたつに割れちゃうんじゃないか‼⁉





指定された車両に乗り込むと自分が想像していた座席よりもずっとキレイなシートが僕を待っていた。

人口が多い中国ならではの向かい合わせのシートではあったが空調が効いているため車内は涼しく、昔バックパッカーたちが語ってきた様な凄惨な「硬席」ではなかった。

日本の電車に近く、あまりコミュニケーションは交わされない車内にロシアやモンゴルの地元民にフレンドリーに話しかけられるわちゃわちゃとした列車が少し恋しくなった。


面白かったことももちろんある。

中国の列車では頻繁に車内販売が行われているということだった。

「ほらぁ、見てください!
こんなに水を吸収するんですよ!」

みたいな吸収性抜群のタオルや

「さて♪さて♪さては南京玉簾ぇ♪」

的なパズルを販売したり(一体誰がそんな柄も絶望的なおもちゃ買うんだ⁈
…と思ってたら、前に座ってたサブカル系の中国人の大学生が買ってた)

お祭りで買う様な電池内蔵のキラキラ光るコマを販売しているのだ!

どれもこれもいらないものばかり。

中国の電車はなかなかにファニーだ。

このまま12時間の列車の旅が続くのだろうと思っていた。





3時間程走った後に列車は途中の駅に停車した。

人が大勢乗り込んでくることによって一気に、車内の温度が上がった。

人口密度の増加と彼らの上昇した体温で窓ガラスが曇る。

馬鹿でかい荷物を背負った乗客たち。

「なんなんだ‼この人たちは⁈」と思わずにいられない。明らかに元からいる乗客と今入ってきた乗客とではテンションに差がある。

なんぜだか分からないがエアコンが止まっていることに気づいた。


僕は額の汗を拭いながら新しくやってきた乗客たちを座りながら眺めた。

明らかに自分の体より大きな荷物を棚にぎゅうぎゅうに詰め込んでいく。

「そんなに荷物詰めたら棚壊れちゃうんじゃないか⁈」ってくらい。

これが「硬席」ってヤツなのか?


ていうか指定席は3席分なのになんで僕の列に4人もいるんだ⁈

てめ(指定席が埋まると「立ち乗り」切符がうられるのだ)


しばらくするとエアコンが入り再び涼しくなったと思いきや、今度は寒さで凍えることになった。思わず、パタゴニアのアウターを羽織った。

だが、それでも寒いのだ。

他の中国人は大丈夫なのだろうか?



その日僕は備え付けの小さなテーブルに浪人生が予備校で寝る様につっぷして寝た。

明け方になり、列車は12時間の旅を終え平遥(ピンヤオ)の町に着いた。

僕の体はバキバキだった。

確かに硬座はキツいぜ…。


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。