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「香港、漫画博物館、ラッキーゲストハウス」

世界一周44日目(8/11)


「なぁっ!
東莞の女とヤったの?
あぁ〜〜〜!
おれもトウカン行きたかったなぁ〜!!」

まさか初対面の旅人にそんなことを訊かれるとは思わなかった。

僕はここである人と待ち合わせをしていたのだが、どうやらその人が僕がトウカンからやって来ることを言ったみたいだ。

トウカンという街は売春で有名だったようだ。


「やぁ〜!マジでヤバかったっすよ!
もう何がヤヴァイか分かんないくらい
ヤヴァかったっす!!」

と僕は答えた。

ここで「いやぁ、僕なんもやってないっすよ〜!」なんて正直に言ったところで相手は勘ぐって、「なに言い訳してんだよ!?ヤったんだろ?なっ?なっ?」と返してくる事は分かっていた。

僕は相手と声のトーンを合わせ、同じボリュームで言い返してやった。



「でっ?
どうだったんだ?」

「…」



このループから抜け出すにはどうしたらいいのでしょうか?

ていうかそこまで有名なのかトウカン!?

っていうかこの人がエロいのか!?


ここは歴史ある日本人宿ラッキーゲストハウス。

香港のジョーダン駅から徒歩4分の距離にあるらしいのだが、

僕は案の定この宿をなかなか見つけられないまま猛暑の中汗だくになって、何回も人に道を訊きようやく辿り着いたのだ。

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話を中国を出発した朝まで戻そう。

この日の朝、僕はバスで国境の町、深圳まで行った。日曜日だということもあり、中国から香港へ入る旅行者の数は尋常じゃなかった。

その後僕は外国人用のゲートから出国/ 入国の手続きを済ませ、元を5000円分くらい香港ドルに両替してメトロに乗り込んだ。

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香港に入って急に物価が上がったような気がする。

今まで100円くらいで安く食べる事のできたラーメンもここでは300円近くする。

道路には2階建てバスが走り、

街は日本の繁華街並みの人で歩きずらさを感じ、

痰を吐く「カァァアアァァ....ペッ!!!」という音は聞こえなくなった。

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ここ香港に来て行きたかった場所がある。

漫画博物館だ。

最近できたらしくここでは香港の漫画の歴史を見る事ができるのだ。

Googleマップでルートを調べて番号を確かめて乗り込んだバスは案の定、逆方向に走って行った。

分かった。これは方向音痴の呪いなんだと思う。どこかでこの呪いを解いてもらわないと僕は一生道に迷い続けるだろう。タイあたりに除霊師いないだろうか?



漫画博物館は古い建物を改装した作りになっており周りをビルが囲んでいた。入場無料で、清掃員のおっちゃんたちがガラスをくまなく磨いていた。

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香港の漫画の歴史は「のらくろ」のようなコマ割りの単純なものから日本で手塚治虫がディズニーを真似して漫画を描いたように似た様な漫画の成長過程を辿っていた。

本の漫画の影響もそこにはあったのだろうが、単なる真似にとどまらずオリジナリティのあるところまで昇華させていることに僕は驚いた。

よりリアルに近づけて漫画を描く人もいればデフォルメが上手い人もいた。

漫画に決まりなんてないことを改めて知った。

どんなに絵が上手なものよりも僕は味がある方が好きだ。

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その中でも一番僕が気になったのはStella Soというアーティストだった。

絵はもちろん上手いんだけど、独特のペンタッチや色使い、見ていて楽しくなる絵だ。

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自分のオリジナリティを出すためにはやっぱり描くっきゃない。

香港の漫画家たちの歴史に触れると僕は漫画が描きたくなった。

ギャラリーを見終わった後ビルに囲まれて四角形の空を見上げて思った。『香港にこんなアーティストたちがいたなんて』と。

旅に出なかったら分からなかったことは沢山ある。

自分の知らなかった物を知れた喜びは大きい。

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宿に戻るとさっきの日本人旅行者の方々は今日の夜帰国されるようでパッキングや空港までのルートを調べていた。

自分が24歳の漫画家志望(無職)の旅人であることを話すと僕と同い年くらいのあんちゃんがこう言った。



「24かぁ〜...若いね。
最近若い旅人に会わないなぁ〜…

『20代か.…』

おれは20年前に
ここに来たんだよなぁ〜...」

「えっ!?今おいくつなんですか?」

「36」

「!!?」

アジア人は歳をとっても外見が変わらない人が多い。今目の前で話している人が一体何才なのかわからなくなった。

話によるとあんちゃん、いや、そのお兄さんは

中学卒業後、飲食店で働き16歳で世界に旅だったと言う。

24歳の時はワーホリでオーストラリアの新聞の広告スペースを売っていたとか。

砂金にまつわるビジネスをしにアフリカに渡り、現地人を雇って金の採掘をしたり

ミャンマーの国境に迷い込み兵士たちに銃を突きつけられて200ドルの賄賂を要求されて交渉の末、一人2ドルまで落とし、町まで送ってもらったり...

ほんの15分の話のなかで彼がいかに波瀾万丈の人生を送って来たかが分かった。

漫画そのものだった。




まるで漫画のようなキャラクターたちに出会う「旅」は漫画じゃ表現できないのであろうか?いや!僕は挑戦してみたい!


僕の描きたいテーマ。

それは「旅」

旅する漫画家が描く旅漫画。

どんな形になるかは分かんねえけどやってみよう!

自分が知らないだけで世界にはすごいヤツらがわんさかいる。



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先日電子書籍「僕らの旅の話」をリリースしました。

僕が世界一周を終えてから描いた短編です。

無料版は途中まで収録しておりますので、続きが読みたくなった方は有料版をお読みいただけますと幸いです。
なお、Kindle Unlimited利用者の方は無料で読むことができます。


それではみなさん、良い旅を!

引き続き、旅する漫画家シミの世界一周の記録
「Life is Journey」をお楽しみください!

現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。