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「バックパックを背負って5時間ハイキング」

世界一周237日目(2/20)

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もう一度、日の出を見て僕は宿をチェックアウトした。

向かう先はチャングナラヤン。そこまでハイキングできるというのだ。

最初のうちは楽だった。

ナガルコットのバス停まで来てしまえばあとはずっと坂道を降りるだけ。

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途中にいた警備員のお兄さんが「こっちがショートカットだ!」なんて教えてくれたり、

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ちょっとしたアドベンチャー気分を味わっていた。

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ショートカットを抜け、バスが通るメインの車道に出てから徐々に肩にくるようになった。

わかってる。僕は荷物を持ってき過ぎたんだ。

そりゃ、カトマンズで泊まっていた宿に原稿用紙やスケボーやら重りになるようなものは置いてきたさ。だけど、圧縮袋に入れた衣類は全部持って来ちゃったし、よくわかんないけどギターだって持って来た。寝袋もパソコンも一眼レフもあまり活躍する機会のないgorillapod(三脚)もバックパックとサブバッグに別れて入っている。

ナガルコット2泊3日の滞在に持って来た荷物は、使った物よりも使わなかった物の方が多い。そもそもサブバッグを前にかけてトレッキングするヤツがいるだろうか?(僕だ)

ここで出会ったツーリストたちはほとんど軽装だった。

「トレッキング」という言葉に踊らされているのは間違いない。『ようは山を登ればいいんだろ?』と思っていたのだ。できることならトレッカーのみなさんに土下座したい。

頭の中のマスオさんが「えっ!?トレッキングってこんなじゃないのかい?」とすっとぼけた声を出す。どうしてマスオさんが浮かんだのかはわからないけど。

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どれくらいの荷物がベストなのか?みんなどんな荷物で臨むのか?基礎知識なしで挑んだ長距離の移動。これがフル装備だったらそのままバスに乗ってカトマンズまで帰ったことだろう。

不思議なものでバックパックを背負って歩くのもだんだんと慣れてきた。来る時にバスであっという間に通り過ぎてしまった場所をこうして歩いてみると、身近な物に目が向くようになる。

朝9時の山歩き(下に向かって)は気持ちがよかった。

周辺の山々やアーケードのようにかかる松林や途中いくつもあるレストランの脇で通学バスを待つ子供たち。僕を抜去る通学バスの窓から子供たちは「ナマステー!」と声をかけてくれた。

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ナガルコットのバスターミナルから坂道を下りきった中継地点でマウンテン・デューとココナッツ・クッキーを買って休憩した。

横にはバスが2台ほど泊まっており、中年の欧米人ツーリストたちがゾロゾロと出て来た。「チャングナラヤンに行くんだったら、彼らについていけばいいよ」売店のお兄さんが教えてくれた。「いや、いいよ。だってあの人たち歩くの遅そうじゃない?」余裕ぶっこくウサギさん状態。

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「そろそろ行こうかね」と山道を歩き始めた瞬間、ハイキングはトレッキングになった。背負った荷物が足に来る。一歩一歩が重たい。二時間以上バックパックを背負っていると肩が痛くなってくる。

バックパックを背負った移動で何が一番しんどいか?足にたまる乳酸か?流れ出る汗か?運動量を上げた体が酸素を求めた呼吸か?いやそうじゃない。

肩への重みだ。

腰に負荷をかけるウエスト・ベルトを締めていても肩にはしっかりバックパックの重みを感じる。そして時間が経つにつれて重みは「痛み」に変わる。

僕は理解した。
トレッキングの難易度は背負っている荷物の重さに比例するということを。それでも歩き続ける。

欧米人ツーリストたちには、案の定開始20分で追いついてしまった。

のんびり歩く彼らとは違う道で目的地を目指したのだったが…

ん…これ道だよ…ね?

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「あー、すんません。えっと、チャングナラヤンってこっちですよね?」

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やー、のどかだなぁ…。

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水飲んで休憩。この時ほど水を美味しく感じたことはなかった!

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途中まで来た所で、方向音痴っぷりを発揮して道を逸れててしまっていたことが発覚。

近くにいたおっちゃんが「菜の花畑を突っ切って行け!」と僕にアドバイスしてくれる。

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あぜ道をバランスをとりながら進む僕。その後も舗装されていない道を進み民家を通り抜けて行った。

そう!これはもはや散歩でもハイキングでもトレッキングでもない!
アードベーンチャーーーーーっっっ!!!

歩いていてもランナーズ・ハイになるのだ。バックパックを背負ってこんな田舎道を歩いている自分が急におかしく思えてきた。自分が物語の主役になるとテンションも上がる。

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チャングナラヤンまでの道は最後に急な斜面が待ち受けていた。

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坂本さんには悪いけど、上を向いては歩けない。だって坂道が続くのを見たら心が折れそうになるから。

道路の脇にある黄色い点線を見ながら少しずつ登って行く。バックパックを降ろして休憩していると後ろからバスが僕を追い越して行く。

あぁ…。僕はなんでこんなヒーヒー言いながら坂道を上っているんだろう?自分で自分のしていることがよく分からなくなってくる始末。

あれ、さっきのテンションはどこに行ったんだろう?



歩き始めて5時間。やっとの思いで辿り着いたチャングナラヤンは歴史ある小さな建造物だった。

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小さな通りの雰囲気が好きだ。入場料を払ってゲートをくぐり、近くのレストランにバックパックを預かってもらった。

中をぶらつき、1時間もしないで僕はカトマンズへ戻るバスへ乗り込んだ。

たった2日間離れていただけなのに、タメル地区に戻るとどこか落ち着いた。
また同じ宿の同じ部屋に荷物を降ろすと
「帰ってきたな」そんな気持ちになったのだ。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。