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「もっと上手くなりたい」

世界一周177日目(12/22)

ひょんなことから舞い込んだウォールペイントの原案依頼。

今日はネットカフェに行かずに朝食を食べてのままDFCへ向かった。

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いつものように25ルピー/42yenのカプチーノだけ注文すると店員は

「50ルピーだよ。2倍量だったらね」と言ってきた。

あぁ、愛すべき人懐っこいインド人よ。このちょっとしか入っていないカプチーノの量を増やしてくれるなら僕は喜んで倍額払おう。

「そう、2倍にしてくれるの」
と僕が50ルピーを支払おうとしたら、
「ウソウソ!冗談だって」
とつまらないジョークをかましてきた。

昨日集中して下描きをしている最中にヒマになった店員たちが僕のすぐ近くでジロジロ見てきたり、テーブルの相向かいに座ってきたりするもんだから、

僕は思わずピリピリオーラ全開で彼らを撃退してしまった。たぶんそのことで仕返しにからかってきたのだろう。ふふ♪お茶目だなぁインド人は(イラッ)

「いいか?これは遊びじゃないんだ。君たちのボスに頼まれて描いているんだ。分かったらさっさとあっちに行ってくれないか?集中を乱さないでくれ!」

そう言って近寄るなオーラ全開で外部からのコンタクトシャットダウン。


確かに長時間テーブルを使わせてもらっているけど、僕だってお店が混んでくれば席を外すしお店との距離感は意識している。

でも忘れちゃならないのはここがインドだってこと。集中して絵を描いている時にテーブルを揺らされたり、肘をついてくるのが嫌い。ミリ単位でペンを動かす作業中の些細な振動はほんとうにイラっとさせられる。
「おい!てめえ揺らすんじゃねえよ!」このくらい言っちゃうくらいモードが切り替わります。

彼らからしてみたら僕の豹変ぶりに驚いたことだろう。昨日はヘラヘラと愛想のよかった僕が急にピリピリし始めたんだから。寄ってくる店員2人くらいに軽くキレると、店員たちは僕の集中を乱さないように遠くから観察するようになった。悪いね。でも、今日中に仕上げちゃいたいんだ。

ここから5時間。
新しい下描き2時間とペン入れ1時間半×2。

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プロの漫画家だったらもっとずっと早いんだろうけど、今までにない試みにけっこう時間がかかった。

原稿用紙ではなくいつもとは違う太めの色紙に漫画を描くのに使う道具で絵を描く。一番太い線が描けるGペンを使ったけど、0.4ミリの耐水性のペンの方がよかったかな?まぁこういうのも回数を重ねていけば勝手が分かってくるんだろうな。


そして描いていて思ったことは『これ、ウォールペイントなんてできないだろうな』ということ(笑)。オーナーのスマンスは拡大コピーだか転写だかよく分からないが、僕の描いた絵を映すんだと言ってきた。

だけど、転写したところでこの細かい絵を再現するにはかなり根気と時間がかかるだろう。僕はフリーハンドで絵を描くことにこだわっている。デジタル化する流れと完全に逆行している。手で描くからこそその人のオリジナリティが出ると思っているし、僕はそっちの方が好きだ。

いくらでも写実的に描くことのできるアーティストはいるけど、たとえ線がゆがんでいたとしても、その人の世界観が出ている絵の方が好き。日本の漫画家だと松本大洋さんの絵なんかそう。めちゃくちゃアジがある。香港の漫画博物館で見たステラ・ソウの影響も受けている。今回はあんなかんじの絵が描きたかった。

「ごちゃポップ」とでも言おうか?ヴィレッジ・ヴァンガードみたいなごちゃごちゃした雑貨屋さんが好き。でもドンキホーテは好きじゃない。なんだかワクワクしないから。好みの問題すね。


『もらったら嬉しいだろうな。
「これは日本の漫画家からプレゼントされたんだぜ!」
とか自慢するのかなぁ?』

なんて自分の絵を受け取った時のリアクションを想像すると頑張れる。

そりゃずっと同じ姿勢で同じ紙に向かっているわけだから集中力も使うし、時間が経てば経つほど脳ミソが疲弊してくる。だけど、誰かが僕の描いた物を待っていてくるから頑張れるんだ。

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大学生の時、1年間在籍したごみゼロナビゲーションという環境対策NGO。周りの仲間たちが僕の描く絵にレスポンスをくれたことが単純に嬉しかった。

「誰かがいてくれるなら、僕は絵が描ける」
その気持ちで漫画家になることを決めた。

僕がデザインを完成させた時、お店にスマンスはいなかった。

僕はチーフに完成させた2枚のデザインを渡して宿に戻った。


あとで撮った写真を見返すと至らない点の方にばかり目がいってしまう。何事も積み重ねだ。きっと次回はもう一歩分だけ上手くなっているはず!

集中力にも密度がある。今日はもうヘロヘロだ。
もっと上手く描きたい…


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。