「カンボジアで地球を体感する」
世界一周89日目(9/25)
「プレアヴィヒア」の存在を知ったきっかけは確かカンボジア、カンポットだったと思う。
自分のバーをオープンさせる夢を持つファンキーなバイタクの運ちゃん、レイさんの持つレビューノートに「まこっちゃん」という日本人の男の子の感想が書かれていたのだ。
「もし、レイさんに会ったら僕のフェイスブック宛にメッセージを下さい」
最後にそう書かれていた。
まこっちゃんにメッセージを送った後(残念なことにメッセージの返信は未だに返ってこない)彼がどのような旅をしてきたのかを覗いている時に偶然、
「プレアヴィヒア」の存在を知ったのだ。
国境にあるこの遺跡は帰属をめぐってカンボジアとタイとの間で小競り合いがあったらしく、観光地としてオープンされたのはここ数年のことらしい。そして訪れた人はその絶景に言葉を失うと言う...。
タイやラオスなどカンボジア以外にもアクセスできるのだが、ここからプレアヴィヒアへ行くためには一日バンをチャーターしなければならない。一台だいたい120〜130ドル。高い!高すぎる!
今までケチって旅してきてシェムリアップで観光ラッシュにさらされている僕はプレアヴィヒアへ行くのを諦めかけた。
だが、YAMATO Guest Houseへ移って初日に「一緒に行きませんか?」というクソありがたいお誘いが。
「これは『チャンス』だ!これを逃したら僕は一生プレアヴィヒアへは行かないだろう」そう思った。こういうカーシェアは日本人同士の方が断然やりやすい。
「それに人数が集まらない場合もあるんだ。おれはツイてるんだ!そうに違いない!」
ありとあらゆるポジティブ変換できる要素をかき集めて、自分が世界で一番ラッキーガイであるように思考を転換した。
だがそのプラス思考をもってしても、プレヴィヒアで打ちのめされる事態に直面するとはその時の僕には知る由もなかった。
前日の夜には7人だった希望者も次の日には22人になっていた。
バンを2台チャーターしてプレアヴィヒアへ出発する。バンンは4時間走り続け、プレアヴィヒアのある山の麓で昼食休憩を取った。それからしばらく走り、バンを乗り換え、山を登った。斜面の急さからいかに目的地が険しい場所にあるのかが分かる。
乗り換えた車を降り、徒歩で進んでいくと、もう僕のテンションは最高点に達した。
絶景ポイントまで続く道は大きな石畳となっており、間から草が生えている。その雰囲気を僕は一瞬で好きになってしまったのだ。
みんなの先頭に立ってずんずんと進んでいった。
ぬかるんだ地面を避けて前の石に飛び移ろうとした時ー...
おもいっきり滑ってコケた。
ええ。そりゃもうギャグみたいに「スコーン!!!」と。
爆笑するみんな。
僕はもちろん笑えない。服は泥まみれ。僕の愛用しているCANON KissX3は泥に浸かった。
「ヤヴァイ....」
急いでレンズカバーを外し中を見てみるとレンズまでは浸食していないものの、レンズのズームとピントを調整すると「ジャリジャリッ...」と不吉な音と感触がする。
テンションは一気に落ち込み、周りのみんなとは放つオーラが一瞬にして変わった。いつの間にか僕がみんなのあとをトボトボ着いていくかたちになり、ウキウキワクワクだった僕の心はカメラの安否にもっていかれた。
だが、遺跡を通り抜け端まで行くとその光景に目を奪われた。
アンコールワットと同じだ。ここも「体感」する場所だった。地平線いっぱいに豊かな自然が広がり、風が吹き抜ける。この場所は晴れているが遠くの方に大きな雨雲が見えた。
「うわぁ!おれ、地球におる!」
坊主頭の野球部くんがそう叫んだ。
そうだ。まさに僕たちは今、地球にいる。
帰り道での僕の「そこ滑るから気をつけて!」の言葉はかなり説得力を持っていたと思う。
「いや、大丈夫っすよ」
サラッと返すみんな。
だ、誰か!僕をフォローしてくれ!!じゃなきゃ救われない!
一緒に来ていた大阪のあんちゃんがこう言ってくれた。
「あそこで一番テンションの高かったヤツが一番先にコケなくちゃいけなかったんだよね。そうすればみんな転ばないように気をつけるじゃないか」
それはまさに救いの言葉だった。
そうかぁ...。おれがコケたのには意味があったんだー...(涙目)
ヴァンが宿に戻ってから僕が真っ先に向かった先はカメラ屋さんだったことは言うまでもない。
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