「前に進むために戻ろう」
世界一周138日目(11/13)
イミグレーションオフィサーが7時に僕をバス乗り場まで連れて行くらしい。
早めに起きてパッキングを済ませてレセプション前に降りてぼぉっと待っていた。
スタッフさんが「朝食を食べて行く?」と言ってくれたので、揚げパンとコーヒーとバナナをいただいた。パスポートはまだ返してもらえていない。
これからどうなるのだろうか?
7時過ぎにやって来たのは、校庭で野宿している僕に寝ていいよと言ってくれた人だった。ややっこしい問題に発展してしまったのを悪く思ったのだろうか?
ホテルの宿泊代を立て替えてくれようとしたので僕は「これは僕の問題ですから」と10ドル分のミャンマー通過で支払った。
5分後に昨日のオフィサーたちがやって来てそのまま車でバスターミナルまで連れて行かれた。
「いつパスポートを返してくれるんですか?」
「まだだ!」
バス乗り場ではもたもたと他の乗客たちが荷物を運んだりしていた。
バスの出発までは時間がありそうだ。
オフィサーたちはパスポートのコピーを取ったり、僕の乗るバスの写真を撮ったり、何度も何度も僕のパスポートを眺めていた。そんなに見たってなにも出てこないのに…ただ、一緒に来てくれたオフィサーCさん(多分この人はイミグレ職員じゃない)は「安心しな。パスポートは返ってくるから」と言ってくれた。昨日と同じように僕にタバコを勧めてくれた。
不安になっても仕方ない。ここまで来たら成り行きに身を任せるしかない。僕はお礼を言ってタバコを一本受け取った。こういう時タバコには助けられるよ。
出発する直前になりようやくオフィサーはパスポートを返してくれた。僕はオフィサーたちに脱帽して頭を下げタチレク行きのバスに乗り込んだ。昨日と同じ最前列。たぶん外国人は最前列に座らせるのだろう。窓の外に年配の欧米人の旅行者の姿を見た。彼らはこの行き止まりの町に何をしにやって来たんだろうか?
バスが走り出してもいつものように眠りに就くことはなかった。ずっと同じことをぐるぐるぐるぐる考えていた。『これからどうしよう?』パスポートを返してもらう直前にイミグレーションポフィサーに旅のルートを確認してもらうとトンジーにさえ行けばあとは陸路でマンダレー、ヤンゴン、タイまで行けると言っていた。
「Taunggyi(トンジー)にさえ陸路で行ければ…」
無駄に払ってしまった往復2,000円分のバスチケットと10ドルのホテル代が痛い。
『そうだ!タチレクの町に来た時、あの英語を全く解さなかったローカルバスのチケット売り場の女のコはもしかしたらトンジー行きのチケットを売ってくれるかもしれない!』
バスが関所のようなところを通過する。
バスは補助員がさっと降りてお金のやり取りを済ませるが、ミニバンはすぐには通過できずに制服を着た職員とやりとりをしている。もし仮にトンジー行きのチケットが買えたところで途中でバレたらおしまいだ。今度はきっと国外追放かもしれない。
『もういっそタイに逃げ帰ってしまおうか?』
そんな考えも浮かんだ。こんな時、アイツならどうするかな?
おれがミャンマーに感じたものはこんなものではなかっただろう?写真アプリfotopediaで見た美しい景色を見ないでいいのか?
タチレクに戻った僕は再度バスターミナルに行き、トンジー行きのバスチケットがあるか尋ねたが英語を話せるトゥクトゥクドライバーが(いいタイミングでいるんだよ!)トンジーへは飛行機じゃないと行けないと教えてくれた。もう何回同じことを聞いただろう?僕は入って来るところを間違えたのだ。
タチレクと言う町はタイのメーサイという町からのビザランの目的しか果たさない。
腹をくくった。
前に進もう。
この先にある物を僕は見よう。
ローカルの航空券を扱うお店では外国人向けのチケットは販売していないとのことだったので、離れた旅行代理店へ徒歩で向かう。
「2キロだぞ!タクシーを使え!」とお店のおっちゃんは言ったが、2キロくらいなら歩けると思った。だが、いくら歩いても教えられた代理店は見えてこない。他の人に道を訊くも「あっち」と指をさすだけ。見落としてはいないんだろうけど…
のたのた歩いているとバイクに乗った三つ編みの女のコが「乗せて行ってあげるわよ」とニケツさせてくれた。め…女神だ…!!!
そこから100メートルも進まないところに代理店はあったのだけど。
「チューズテンバーデー!(ありがとう!)」とお礼を言い女のコに別れを告げた後旅行代理店に入ると僕は翌日のチケットを99ドルで購入した。
こういう時のためにタイで新券の100ドル札を用意しておいたのだがデザインが新しくなったため、お店の女性スタッフは「これ本物?」と言ってきた。僕も新しい100ドル札には驚いているんだ!折れ曲がった旧100ドル札を見せると彼女たちは安心してそれを受け取ってくれた。もう後には退けないぜ。
ここで野宿をしてまた厄介ごとになるのは避けたい。今日は宿に泊まろう。僕は安宿を探してタチレクの道を歩き出した。チケットを買った旅行代理店からいくら歩いても宿の看板は見えてこない。
『おれは…なんでこんなひーこら言いながら旅をしているんだろう?』
「思い通りにはいかないのも旅」誰かがそう言った。
やっと見つけたモーテルの値段は300バーツだったが、値切って250(787yen)になった。Wi-Fiは24時間100バーツから。
ほんの数時間でいいから半額にしてくれと言ってもレセプションのおばちゃんは電球を換えるように手をヒラヒラとさせて「NO」のサインを作るだけだった。洗濯物を済ませて軽くシャワーを浴びると僕は国境付近のマーケットに足を運んだ。
そこで買ったのはこの旅始まって以来の3代目の腕時計。
パチもんのCASIOの耐水性の腕時計。値切って300バーツ。
なんで買っちゃったんだろう?たぶん「前に進むぞ!」っていうことなんだと思う。
買って15分もしないうちに壊れた。
ベルトを調整しようと思ったら留め具が「バキャッ!」と外れた。この時計が日本製であるわけがない!クレームに行こうとさっきの腕時計を買ったお店に行こうとするも、どこだったか分からない。なぜかタチレクの国境付近のマーケットにはパチもんの腕時計屋が死ぬほどあるのだ!?他のお店の店員は「うちなら200バーツで売ってるよ」とファッキンな事実を抜かしやがる!
迷いながら辿り着いたさっきのお店には別のスタッフがいた。腕時計を交換してくれ!と言うとヘラヘラしたヤツが「もう100バーツ払ったらな」と言う。
ふざけんなよ!30分も経ってないのに壊れたんだぞ!とごねていると、さっき僕に時計を売った男のもとへ連れて行ってくれた。
「オォ~!!!ブルガリ!ブルガリ!」とよくわからない単語を連発しながらささっと留め具を別の留め具に取り替えてくれた。
おぉ!意外と素直だったな。まぁ、買ってすぐのことだったしな。
すぐ買って壊れてしまう200バーツの腕時計より留め具を交換して僕だけのものになった300バーツの腕時計の方がいい。
いいことあるさ。
明日の飛行機で僕はミャンマー第三の都市Taunggyi(トンジー)へ向かう。
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。