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クイズあり!キーワードは「世界遺産は平和のとりで」:世界遺産ゼミDAY2レポート

皆さん、こんにちは!TABIPPOイベントライターのさっつんです。

4月29日にスタートした世界遺産ゼミ。待ちに待ったDAY2が5月18日に開催されました!DAY1に引き続き、イベントレポートをお届けします。

本日の講義のテーマはこちら。

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講師は、前回に引き続き、世界遺産検定マイスターの片岡英夫さん。DAY2では、世界遺産に欠かせない用語の解説や世界遺産条約についてなどの講義が開かれました。今回も楽しく学べるように、クイズを交えての講義!あっという間の時間でした。

それでは早速、講義の内容をレポートします!

ユネスコと世界遺産条約について

テレビで世界遺産の話題になると、ほぼ関連して出てくる単語が「ユネスコ」。皆さんはユネスコがどんな意味を持っているかご存知でしょうか?

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片岡さん作成のスライドに書かれている通り、英単語の頭文字をとってUNESCO(ユネスコ)と呼ばれています。

第一次世界大戦(1914年〜1918年)
ドイツ・イタリア・オーストリアの三国同盟とイギリス・フランス・ロシア三国協商で主に争っていた戦争

第一次世界大戦から初めての総力戦(化学兵器やエネルギー)

いろいろなものを使用したため、その分敗戦国(特にドイツ)の植民地を取りあげるなど、当時のドイツ経済を超えるような賠償金を要求

そんな中で世界恐慌が起き、同時にヒトラーが登場。ドイツ国民の不満をドイツ内ではなく、外へ向けていった

この流れで、第二次世界大戦が勃発します。結果、ドイツは敗戦したけれど、第一次世界大戦の失敗を活かし、経済が破綻するほどの賠償金などを戦勝国側は要求しませんでした。

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たくさんの尊い人命が失われた2つの戦争を踏まえて、戦後に作られた国際連合。諸国民の教育、科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉の促進を目的とした国際連合の専門機関として、ユネスコが設立されました。

ユネスコで採択された世界遺産は、まさにその国の文化と平和の理念の象徴。世界遺産を知って、それを守ること。そして、世界中の民族や文化、自然を理解し大切にすること。それこそ、ユネスコの理念の実現に近づくことなのです。

例えば、アンコール・ワットからみるカンボジアについて。みなさんは、アンコール・ワットがいつ創建されたかご存知ですか?

当時の日本でいうと、実は平安時代に創建されています。私たちの祖先が麻のような服を着ている時代に、カンボジアではあれほどの壮大な建物が作られていたのです。

言い換えれば、1,000年前はカンボジアが先進国で、日本はまだアジアの辺境に過ぎなかった時代ということになります。カンボジアに対して見る目が少し変わりませんか?

「世界遺産だから行く!」のも、旅の楽しみ方の1つだと思います。一方で、その世界遺産について詳しく知った後に、改めて現地で世界遺産を見ると、また新しい発見があるので、おすすめです!

世界遺産は「地球の宝」

ここからは、世界遺産の中身について触れます。世界遺産は、単なる観光地のお墨付きではなく、次世代に遺していく地球の宝です。

世界遺産については、世界遺産条約に則って、さまざまな取り決めが行われており、条約を締結した国は、遺産の保護・保存における国際的援助体制の確立や、次世代への伝達を義務付けられます。

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世界遺産は、どうやって守っていくのかが大切。登録前の審査では、遺産をどうやって守っていくのか、保全状況はどうなっているのかも見られます。
 
守る保証人はその国の政府ですが、政府だけではなく、世界遺産がある地域に住んでいる住民が主体的に守ろうとしないと世界遺産から消えてしまうことになります。

例えば、ドイツの『ドレスデン・エルベ渓谷』は元々世界遺産でしたが、住民投票でエルベ川に近代的な橋を建設することが決定しました。結果、保全管理が不十分で、景観破壊が起こる懸念があり、その後橋の建設が始まったため、世界遺産から抹消されました。

世界遺産があるものの、内戦や貧困で苦しんでいる国にはいろいろな国が援助して守っていきます。

繰り返しになりますが、世界遺産は決して有名観光地のお墨付きではなく、未来永劫に遺していく大切な宝物であることを指します。これらの宝物を人類が国際的にお互いに協力し、保護する必要から生まれたものです。

ちなみに初めて世界遺産に登録された物件はこちら!

ドイツ  『アーヘン大聖堂』
ポーランド『クラクフの歴史地区』
     『ヴィエリチカとボフニャの王立岩塩坑』
エチオピア『シミエン国立公園』
     『ラリベラの岩の聖堂群』
セネガル 『ゴレ島』
アメリカ 『メサ・ヴェルデ国立公園』
     『イエローストーン国立公園』
カナダ  『ランス・オー・メドー国立歴史公園』
     『ナハニ国立公園』
エクアドル『ガラパゴス諸島』
     『キトの市街』

世界遺産の種類(クイズあり!)

世界遺産は全部で3種類に分類されます。
▷文化遺産
→建造物群、遺跡、記念物、文化的景観など人類の歴史が生み出したもの
▷自然遺産
→地球の生成や生態系
▷複合遺産
→文化遺産と自然遺産、両方の価値を併せ持つもの

では、ここで問題!

Q.2019年10月26日から登れなくなった世界遺産はどれでしょうか?
A.コロッセオ最上階
B.エベレスト
C.ウルル(エアーズロック)
D.自由の女神




正解は……Cのウルル(エアーズロック)でした!
ウルルは先住民族のアボリジニが所有している土地で、1976年から2084年までオーストラリア政府がアボリジニから借り受けて、国立公園として運営しています。

アボリジニにとって、ウルルは聖地として崇めていること、安全対策の側面から長い間登山禁止の声がありました。そこで観光客がどれくらいウルルに登りたいのかアンケートを取ることに。結果は、1990年代は74%だったのに対し、2010年には28%、2015年には16.2%までに激減し、登山禁止が正式決定となりました。

続いて、ウルルに関してのクイズを2問出題!

Q.ウルルの正しいスペルはどれでしょうか?
A.URURU
B.ULULU
C.URULU
D.ULURU
Q.高さと周囲の組み合わせはどれが正しいでしょうか?
A.185メートルー約3キロ
B.348メートルー約9キロ
C.408メートルー約12キロ
D.858メートルー約34キロ



正解は……スペルの問題の正解はD周囲と高さの問題はBが正解でした!

文化的景観について

先ほど、文化遺産の説明で「文化的景観」という言葉を使いましたが、皆さんは文化的景観はどのようなものを指すのかご存知でしょうか。

字だけ見ると少し退屈になるかもしれませんが(笑)、文化的景観とは「自然と人間の共同作品」に相当するものであるとされています。人間社会が自然環境による制約の中で、社会的・経済的・文化的に影響を受けながら進化してきたことを示す遺産に認められる概念です。

文化的景観は、大きく3つのカテゴリーに分類されます。

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「意匠された景観」は人間がデザインして、自然と同化した景観をもつ世界遺産が該当します。
例:フランス『ベルサイユ宮殿』

「有機的な景観」はすでに発展過程が終了している「残存する景観」と現在も伝統な社会の中で進化する「継続する景観」に分けられます。
例:フィリピン『フィリピンのコルディリェーラの棚田群』(残存する景観)
日本、和歌山県・奈良県・三重県『紀伊山地の霊場と参詣道』(継続する景観)

「関連する景観」はその地に住んでいる民族が、自然によって大きな影響を与えられ、宗教的・芸術的・文学的な要素と強く関連する景観をもつ世界遺産が該当します。
例:ニュージーランド『トンガリロ国立公園』

文化的な景観と呼ばれる概念が生まれたように、時代が変わっていくにつれて、世界遺産にも概念や価値の変化が訪れます。

もともと世界遺産は、石の文化を中心とする有形文化で、オリジナルのものではないといけないという概念がありました。そのため、当初はヨーロッパのものがとても多かったです。しかし、地域によって建築に使う資材は異なりますよね。
例えば、アジアなどは木の文化、アフリカは土の文化があります。このような違いを取り入れるために、「同じような材質や方法で補強をすればオリジナルとして認める」と変わっていきました。

そのほかにも「シリアル・ノミネーション・サイト」や「トランス・バウンダリー・サイト」と呼ばれる概念もあります。

「シリアル・ノミネーション・サイト」は別々の場所にある、文化的・自然・地理学的に関連する遺産を指します。
例:日本『明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業』

「トランス・バウンダリー・サイト」は国境を越えた、あるいは国境をまたぐ遺産を指します。
例:日本・インド・アルゼンチン・スイス・ドイツ・フランス・ベルギー『ル・コルビュジエの建築作品:近代建築運動への顕著な貢献』

さて、世界遺産の概念やその価値基準について講義が開催されていましたが、ここでクイズです!

Q.世界遺産の数は現在いくつあるでしょうか?(2021年5月18日時点)

このクイズは選択式ではなく1200件より、多いか少ないかで出題されていました。さて答えは...?



1121件です!
各遺産の内訳は、文化遺産が869件、自然遺産が213件、複合遺産が39件です。文化遺産の登録数多いですね。

ただ、この数は今年変わる可能性があります。なぜなら今年は世界遺産委員会が開催されるからです。推薦した世界遺産は世界遺産委員会で登録されるか否かが決まり、そのため遺産の数が増える可能性があります。

続いてのクイズも、世界遺産の数についてのクイズです!

Q.世界遺産の物件数が1番多い国はどこでしょうか?

さて、皆さん国連加盟国193ヵ国のなかで、どの国が1番世界遺産が多いかわかりますか?ヒントは歴史が長い国です。なんとなく想像できるのではないかな?と思います。それでは正解発表です!
答えは……





3位 スペイン 48件
同立1位 イタリアと中国 55件

イタリアと中国が55件ずつ……この2ヵ国で世界遺産全体の約10パーセントを占めていることになります。ちなみに、4位がドイツ5位がフランスで、上位5ヵ国だけで世界遺産全体の20パーセント以上を占めています。

果たしてこれは正しい世界遺産のあり方なのかと疑問が生まれ、地理的な不均衡を是正しようと、現在、グローバル・ストラテジーと呼ばれる新しい考えが生まれています。

例えば、ユネスコと締約しているのにも関わらず、世界遺産の数が極端に少ない国から世界遺産登録を促すことや、産業関係や先史時代の遺跡、20世紀以降の文化遺産の登録を目標としています。

さて、ここで講師の片岡さんによるとても役に立つ豆知識をお伝えします!
毎年増えている世界遺産ですが、その世界遺産に行ったのにもかかわらず、翌年旅行先の近くでもし世界遺産が生まれたら悔しくありませんか? 

そんな時は、旅行前にユネスコのサイトをチェックするのをおすすめします。ユネスコのサイトには、世界遺産の暫定リスト(Tentative Lists)があります。暫定リストは世界中の国の世界遺産候補が掲載されているのです!

もし、このリストに掲載されている物件が世界遺産に登録されたら「私、ここに前行ったよー!」と家族や仲の良い友人にお話することができますよ!

(※リンク先は英語表記です)

以上が世界遺産ゼミDAY2の内容です。

私は世界遺産が好きと言いつつ、暫定リストをサイトで見られることを知らなかったので、まだまだ勉強不足だなと感じた時間でした。同じように勉強になったと思っている受講生もいるようで、嬉しいです。

世界遺産ゼミでは、世界遺産について今まで知らなかったことを知られるので、とても勉強になります。それではDAY3のイベントレポートをお楽しみに!

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取材・文:さっつん
福岡在住。本業の傍でライターとして働く。ハリー・ポッター好きが高じて、大学時代に初海外で単独イギリス留学。渡航国は乗り継ぎや留学含めて9ヵ国。好きな分野は世界史(歴史学科卒業)と世界遺産(世界遺産検定2級所持。1級勉強中)。好きなことは映画鑑賞と写真撮影。

編集:五月女菜穂
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