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note6 : 香港2011.3.23

【連載小説 6/100】

昨夜、マカオから香港に戻った。
明日「SUGO6」第2番目の訪問地へ向けて旅立つが、まずは既に16日の段階で決定していた次なるデスティネーションについて報告しておこう。

この日「dice」アプリで出た目は「1」。以下のメッセージが表示された。

>>>>> Dice Roll ②/2011.3.16-20:00<<<<<
Hong Kong → Manila
【マニラ Manila】2番目の訪問地はフィリピンのマニラ。3/30まで7日間滞在。スペイン統治時代の面影を残す城郭都市の歴史とフィリピン独立の英雄の軌跡を追う。
>>>>>SUGO6 Support Desk<<<<<

そして、翌日にフライトはキャセイパシフィック航空CX919便(14:40香港発→16:40マニラ着)、滞在先はマニラホテルが予約済とのメールが届いた。フィリピンはセブ島やボラカイ島を訪れたことがあるが、首都であるマニラは空港を経由したのみで初めての訪問となる。

PASSPOT社からのミッションにあるようにフィリピンはスペインによって統治された歴史を持ち、「イントラムロス」という城郭都市跡には見どころが多いらしい。
旧イギリス領の香港、ポルトガル領のマカオの次は旧スペイン領、ということで僕の旅は「東洋と西洋の交差点」を渡り続ける歴史紀行が続く。

また、人物史が好きな僕の志向を知って担当スタッフが挙げてくれた“フィリピン独立の英雄”については、プロフィール資料がPDFで届いたが、非常に興味深い人物である。“彼”について次回にレポートしたいと思う。

さて、今回はPASSPOT社がプロデュースする「SUGO6」のビジネスモデルをレポートすることになっていた。

これまでの連載で「SUGO6」という今までにないユニークな旅の仕組みについては大筋理解してもらえたと思うが、このプロジェクトに関する金銭面からビジネスの成り立ちを解説しておこう。

(1)会員組織
「SUGO6」に参加するツーリストは、まずPASSPOT社と以下の条件で会員契約を結ぶことになっている。
《入会金》100万円
《年会費》10万円
《資産》5000万円以上の金融資産を有していること
《海外渡航歴》過去に10回以上の海外旅行経験があること

「SUGO6」は旅慣れた富裕層をメインターゲットにしている。
世代的には団塊の世代より上の所得と時間にゆとりのある層がメインだが、登録会員には一部50歳前後のエグゼクティブ層も含まれているらしい。
シニア富裕層を対象とした海外旅行ブランドであれば数多く存在するが、PASSPOT社のビジネスは“旅のステイタスクラブ”運営にあり、昨年のサービス開始以来、既に口コミで200人以上の会員が存在するということなので、同社が創業1年目にして獲得した売り上げの規模は推定できる。

この会費は一般の人々からすれば高額に思われるかもしれないが、僕は的確な数字だと思う。
実は以前に豪華客船で世界を旅するシニア層を追うドキュメンタリー企画でステイタスにこだわる富裕層を数多く取材したことがあるのだが、その経験から考えると、贅沢な旅の中にも知的冒険要素を組み込んだ「SUGO6」の魅力に共感する層であれば、この会員契約条件は問題なくクリアできるラインだと思う。

(2)トラベル情報業
PASSPOT社は旅行商品を造成する旅行代理店ではなく、「世界一周」の旅をサポートする情報事業を展開するIT企業である。
●航空会社
●ホテル
●各種オプションツアー
のブッキングに関しては外部提携各社とのネットワークを構築し、「SUGO6」アプリを通じた各社WEBサイトとのリンク部分でコミッションを発生させている。
つまり旅を構成する“パーツ”を売るのではなく、無数に存在するそれらの中から適正な情報を選択し提供するのがPASSPOT社のビジネスなのである。
そのために、会員に対しては「世界一周」ルートの設定段階から専属スタッフが付き、渡航中の会員を情報面で総合的にサポートするコンシェルジュ的役割を担っている。

(3)マイルチャージ
PASSPOT社は、そのコンセプトを「旅情代理店」としている。
※“旅行”ではなく“旅情”である。

パッケージ化された旅行商品を造成するのではなく、海外旅行というパーソナルな体験における「情報」と「情緒」を提供することを事業ミッションとしており、その対価を「マイルチャージ」として参加者から受け取ることにしている。
つまり、「SUGO6」の旅そのものが一種の知的エンターティンメント商品であるとの位置づけから、具体的には「世界一周」の旅に対して1マイルあたり10円のチャージが請求される仕組みになっている。

※参考までに今回の僕のルートでは総移動マイルを50000以内に収まる予定なのでマイルチャージは50万円になる。

また、このチャージで集まった資金の一部が、前回紹介した若者向けプログラム「ATJ」のファンドとなっている。

以上のビジネスをわずか10数人のスタッフで運用しているのが創業1年に満たないPASSPOT社なのである。


さて、次回はマニラからのレポートになる。

実は「SUGO6」というネーミングには、“双六”とは別に「6大陸を巡るスゴイ旅」というコンセプトがあるらしい。
アジア、ヨーロッパ、アフリカ、北米、南米、オセアニアの6地域が必ずルートに含まれるからだ。

だとすれば、10ヶ月に及ぶこの旅は、たとえるなら“旅情代理店”のPASSPOT社と旅行作家・真名哲也のコラボレーションによる6章だての長編ストーリー。
そして、今日でその【第1章アジア編 第1節:香港】が終了ということになる。

アジア編がこの先第何節まであるかは不明だが、ストーリーテラーである僕自身が明日から始まる第2節を前に先行きの見えない展開にわくわくしている。

おそらく、このペースでいけば連載は100回前後になるだろう。物語はプロローグから本編へ入る、といった感じだ。
旅を前に進めよう。

>> to be continued

※この作品はネット小説として2011年3月23日にアップされたものです。

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