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TRANS ISLAND 儚き島 回顧録

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2002年2月19日から5年間260週間をかけてオンライン配信された連載ネット小説『TRANS ISLAND 儚き島/真名哲也』。スマートフォン黎明期に掌上の端末で読む未来形の小…
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2023年5月の記事一覧

067.紙は有限、電子は無限

2003.5.27 【連載小説67/260】 東京滞在が1週間になる。 成田空港への着陸アナウンスを耳にして、心地良い眠りから覚めて見下ろした大都会に一瞬目眩のようなものを感じた僕も、時差ボケが数日で解消可能なように東京(文明)時間にすんなり同調した。 東京に1週間も滞在したのは、本業である各種出版活動の打ち合わせを一気にこなすためだ。 日頃はメールを通じてのやりとりが多い編集者たちと、久しぶりに顔を合わせて行う打ち合わせも悪くない。 僕の中には、クリエイティブワークに

066.空想作家宣言

2003.5.20 【連載小説66/260】 イラク戦争とSARSの影響がハワイ観光にも大きな打撃を与えているのだろう。 昨夜泊まったワイキキの大手ホテルでも、かなりの従業員が解雇されたと聞く。 頼みのゴールデンウィーク期間の日本人ツーリストも減少したようで、常夏の楽園に元気のなさを感じた。 そんな影響もあって、ホノルル国際空港発成田行きのJAL便は満席にほど遠い状態。 エコノミーの最後部窓側席を指定した僕の横は空席で、8時間のフライトは少しゆったりできそうだ。 機内に

065.手記の持つ物語性

2003.5.13 【連載小説65/260】 手記の持つ物語性。 そんな可能性について考えている。 『儚き島』の連載も今回で65回を重ねる。 週1回のスローペースに加えて、ネットワーク配信だから量的ストック感覚が希薄になるのだが、400字詰めの原稿用紙に換算すると既に600枚以上。 単行本にすればかなりの厚みになるはずだ。 ミスターGとの会話の中で、彼がこの手記を何度となく読み返し、僕の記したフレーズの幾つかを諳んじるまでに記憶してくれていたことに驚いた。 そう、書き

064.熟成する島

2003.5.6 【連載小説64/260】 「少しスピードダウンしてもいいんじゃないかな?」 そう、ミスターGは僕にアドバイスをくれた。 確かに、マーシャルとの交流や島嶼国家連携プロジェクトなどが広がる中、ここのところ会合が増えている。 加えて、それらの準備に関わる情報収集やメールのやりとりで、常時接続のインターネットに向かって深夜まで作業を続ける日も少なからずある。 もちろん、これに本業の執筆活動もあるから、僕の日々は随分スピードアップしていたことになる。 多分、他のエ