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[巴の港と夏の夜]

ひと時の夜風が聴こえてくるよ
ある夏の日の夜のこと
雲影が月とたわむれている
止めどない気がするだろう

ひとしずくにもしも込められたのなら
海原うなばらを漂いながら
体から力が抜けていく
ただ港がつまえるのを待つ

明日が来なければと願う
いだ港のように
あなたの胸の中に眠る
巴の港のように

ある夏の夜のこと

ひとこと夜風の置き手紙を見た
あの夏の日の夜を超えて
過ぎてしまえば微睡まどろむような
日々も金縛かなしばりではないから

明日が来ることでまた
あなたを恋しく思えるのなら
決して必ずと呼べない続きを
愛せる日が来るのだろうか

一つだけ願いを聞いてほしいよ
ある夏の日の夜のこと
夏の夜の夢は変わらないと
朝日がじきに覆す

ひとしずくにもしも成れたなら
海原を漂いながら
身体からだも委ねた彼方かなた
出逢う怖さも知らないままで

明日が無邪気なその片手で
奪い去る昨日のことも
あなたのことと風をただ覚えている
あなたの胸の中にただ眠る
巴の港のように

独り言と寝言とか交差する
ある夏の日の夜のこと
雲影の止んだ向こうの空は
明日を迎え入れている

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