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[みちのく]

八甲田の船に
せた黄色の揺らめき
セピアと似ていて違う
もう動かないの
あなたは知らないのね

斜陽と呟いたって
建てかわった新町通
アウガとの隙間のあいだ
一人は寒いから
あなたにいてほしい

押し返しも抱き止めてもくれない街
おし黙る景色は あの冬と同じ

アーケードを二人
ふと何年物の悪戯
晴れ雪が運ぶ声
"アスパム上がろ"
あなたは許すかな

陸奥むつ湾を船出は絶えない街
置き去りの荷物と手元のチッキ

時代をこぼす左手に
所在しょざいなく右手
あなたに触れさせて

八甲田の山は
透き通るような雪化粧
思い出は沢山なのに
もう動かないの
あなたは知らないのね

早足が少し離れて
口をついて出る善知鳥うとう
いつかの分のお礼参り
叶えるために
あなたと出逢ったの

若かった僕の影 消え去った街
若草が足早に通り過ぎる道

左手はしばれたまんまで
所在なく右手
あなたに触れさせて

斜陽と呟いたって
合浦がっぽの木々は高いまま
国道との隙間の間
一人は寒いから
あなたにいてほしい

好きよと言わせて
この街を詰めた木箱より
けれどお願い 師走しわすの今日
誰かといたいから
あなたにいてほしい

一人は寒いから
あなたにいてほしい

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