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BtoB SaaSセールスに本質的な価値を【後編】

こんにちはゆーたです。前回の投稿よりまたまた時間が過ぎてしまいましたが、後編を書かせて頂きました。

・前編ではシステム検討における大前提の心構え
・中編ではセールスとしての心構え
・後編では最終ステップとしての心構え←本記事での内容
の全3編構成でBtoB SaaSセールスとしての本質的な価値をお伝えさせて頂きます。 

※前編、中編についてまだご覧になっていない方は、以下のリンクよりご覧になってから本記事をご覧下さい。私の簡単な自己紹介と当記事シリーズを解説する上での定義が記載してあります。


上申というBtoBビジネスの商慣習

まずはじめにBtoBビジネスとBtoCビジネスの違いはなんでしょうか?当たり前なんですが、会社間の取引か一個人での取引かの違いがあります。では会社間の取引は一個人の取引と比較して何が違うのか?

それは、"上申"というプロセスが存在することです。
意味を述べると「意見を上の者に申し述べること。」(goo辞書より抜粋)

中には中小企業の社長と商談して、その場で発注が決定する場合や、少額での取引の場合は部署の予算内で自由に決裁を取ることができるなどの例もありますが、多くの企業にとってシステムを導入するという事は会社の今後の方向性や生産性、利益などに大きな影響を与えるため、上申をうまく成功させることはBtoB SaaSにおいて重要な意味を持ちます。

私の記事の【前編】【中編】の内容が理解できれば、「御社のサービスいいですね!一度上司に掛け合って社内検討を進めてみます!」まで進むことは出来ると思います。

ただ、これまで私も担当者の中で「絶対に御社にします!」と言っていたのに上申のステップで社長や役員からどんでん返しを喰らい、失注したケースが多かったです。

上申失敗

『●●様 お世話になっております。note商事株式会社の鈴木です。
先日よりご提案いただきまして誠にありがとうございます。

さて今回のシステム検討の件ですが、役員に話をしたところ、××の点で反対を受け今回のシステム導入を一度白紙に戻したい(他社に決定したい)と思います。

◯◯さんにご尽力いただいたにも関わらず、申し訳ございません。
この度はご提案誠にありがとうございました。 』

こんなお断りメールが来るのはBtoB SaaSに限らず日常茶飯事で
「えっ!うちの会社のシステム導入でいくって言ったじゃん!」という
営業マンの悲痛な叫びが今日もどこかで聞こえてきます笑

私は当時他責になって「あの担当者、力無いし何かイケてないなー」と思ったこともあり、今では強く反省してます。

【前編】【中編】では、相対する担当者、経営者に対して、システム導入の大前提を理解した上で、4つの「不」と「必然性」を元に担当者合意を取りにいく手法をお伝えしましたが、【後編】では上申後のどんでん返しを喰らわないため、上申向けのチェックリストを提示しながら、抜け漏れ無く担当者の上申力と上申意欲を上げていけるような説明をしていきたいと思います。今回のnote1.2万字あるので本当に長いです。ただBtoB SaaSビジネスに従事している方であれば、確実に納得できる部分もあると思いますので、時間がかかってでもいいので、休憩を挟みながら読んでみて下さい。


なぜ、上申がうまくいかないのか?考えられるリスクを担当者は勿論のこと営業自身も最初から100%想定が出来ていないからです。どこかに確認や認識の漏れがあり、それが綻びとなり失注へと繋がります。

「リスクは目に見えないからリスクである」という明言を前職のメンバーが言っていたように、目に見えないリスクは考えればキリがないが、一方で目に見えないリスクも含めて事前に予見しながら進めていくことでお客さんの上申力を上げることもできると考えます。

上申前のすり合わせに時間をかけるべき3つの理由
①目に見えないリスクを営業が担当者に気づかせる
→上申プロセスを顧客任せにせず、営業がコントロールする
②担当者の上申意欲を上げる

→何度断られても、立ち向かう気持ちを持つこと
③担当者の上申力を上げる
→上司や経営層が納得するような説明が出来ること

それでは本題です。内容盛りだくさんではありますが、【後編】で皆様にやって欲しい事はただ一つ、以下のチェックリストに沿って、担当者と打ち合わせをして下さい。

最低でも30分、希望で1時間ほどお客さんの時間を確保してください。一部の例外を除き、時間を確保していただけないお客様は大前提自分の力を過信しているか、そもそも自社サービスの導入意欲が高まっていない状態だと考えますので、過信しているケースに対しては、逆にこちらからチェックリストにある項目の質問を投げかけてみましょう。後者の意欲が高まっていない場合は初回商談の失敗かもしれませんので再度やり直すか諦めた方がいいかもしれません。

上申チェックリスト

大きく6つのステップに分かれます。
今回は便宜上、A〜Fの順番で表記します。順番は必ずしもAからで無くても構いませんが最終的には全項目聞き切りましょう。

A) 推進者の育成/選定
B) 必然性の育成 (≒ 上申ストーリー)
C) 推進者チェック
D) 関係者攻略シナリオを固める (リスクを潰す)
E) 発注プロセスを抑える
F) その他のリスクを考える
上記の6ステップを一緒に考えていきましょう。

A) 推進者の育成/選定

まずは、育成と選定を行います。ポイントは大きく3つです。

① 推進エネルギーの確認
② 自社推進度
③ 推進能力

① 推進エネルギーの確認

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バイヤーとして案件を進めるやる気、本気度合いがあるかどうかを見極めます。推進エネルギーを確認するために、私は軽くお客様にテストをします。

「そもそも御社が抱えている課題は何か?」
「課題解決の手段としてシステム導入という選択肢で大丈夫か?」
という少し形式的な質問も大事ですし...

SMB規模の実務担当者様であれば、
「あらためて今どんなことに困ってて◯◯さんって大変なんでしたっけ?」
「◯◯さんが今一番解決したい事って何ですか?」
という担当者の感情に寄り添った言い回しも大事だと思います。

「人事システムが入っていない事が課題です」とか
「私は何でもいいんだけど社長(上司)からシステム入れろと言われて...」
みたいな回答が返ってくる場合は、商談を最初からやり直して下さい。

② 自社推進度
他の選択肢ではなく、現時点で自社サービスでやりたいと思っている度合いはどれくらいなのか?私は直接確認しています。

ここで
「60%ぐらいですね!」とか
「上司が結局は全てを判断するんで...」
みたいな回答の場合はここまでの商談に失敗していると思って下さい。担当者の気持ちを上げきれてないです。
(ラッキー受注は勿論ありますが、受注に必然性が無いです。)

ここがそもそもない場合はそもそも【中編】でお伝えしているスコアに到達していないです。

③ 推進能力

推進するための社内調整や巻き込み等の能力があるかどうか。ここは事前の商談でわかる部分ですが、社内の組織体制や自身の役職や経歴、担当者自身のシステム導入の経験があるかにも依存します。必ず初回商談で現状の組織体制やシステム導入経験の有無を確認してみましょう。

B) 必然性の育成 (≒ 上申ストーリー)

続いては、これまでの商談で醸成してきた必然性を育成することで、上申ストーリーを明確にしていきましょう!完全な必然性ではなくてOKです。クロージングのタイミングで固めていきましょう!ポイントは以下4つです。

① 課題
② 時期
③ 投資額
④ 自社サービスの必然性

① 課題

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なぜこの課題に取り組む必要があるのか、システム導入ニーズの有無を説明できるかをお客様に確認しましょう。
「(中期経営計画の達成を目指す上で)人員カットが必要になったから」

「(繁忙期の残業が増えてしまい)労基から是正勧告を受けてしまったから」
「(ルーティンワークを楽にして)戦略人事に力を入れていきたいから」

こんな感じの理由が担当者から出てくればGoodですが、ここまで出てこないケースも多々あります。その場合は

「経営陣は今回のシステム導入ついてどう考えているんでしょうね?」

「◯◯さんが抱える問題を解決したら全社にどんなメリットがありそうですかね?」
と質問のテイストを変えてみてもいいかもしれません。

② 時期
なぜこの時期にやる必要があるんでしょうか?ここは早期受注においてめちゃくちゃ大事です。一般的にシステム導入には時間がかかります。課題を解決するためのタイムリミットはいつなのかをまずは確認しましょう。

「今後2,3年で解決出来ればいいです。」

「まだハッキリと決まってないんですよ。」
って回答が来た場合は「不急」における時期の必然性が無いですので、商談は失敗です。(中編で解説しています。)

「今すぐにでも解決したい!」

「今すぐにでも導入したい!」
といった回答が担当者から得られてはじめて「その時期にやるためにはいつ頃までに進めなくちゃいけないですよね!」の流れで逆算のストーリーを提示してあげましょう。

具体的には、
・システム導入の補助金に合わせて
・予算執行の時期に合わせて
・システム本稼働期間に合わせて
・課題解決までのリミットに合わせて
ここは販売している商材によって時間軸が大きく変わるかもしれません。

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③ 投資額

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会社として投資する必要性を説明できる事が重要です。
私個人の意見ですが、実はこの投資額だけは綿密なすり合わせをしたく無いのが事実です。

担当者や役員の中には「投資対効果」と「費用対効果」をうまく理解出来ていないケースが多く、投資額を費用と捉えてしまう事が多くあります。

「これまでシステム無しでやってたのに、初期費用100万円もかかるの?」
「対象やプランを絞ってスモールスタートでやれればいいんじゃない?」

そういう意見が挙がる可能性は高く、本来の課題解決のための「投資」ではなく、システム導入のための「費用」と考えてしまいます。実際に費用対効果を完全に証明し検証出来ないので慎重に検討したいという結論に行き着く可能性があります。

唯一営業として検証してあげるであれば、
「従業員を1人採用費かけて採用して、教育して、辞めるリスクも考えながら多額の給料をお支払うするよりも、月単位or年単位で解約も視野に入れながら、確実に課題解決出来るシステムに○○○万円投資する方が絶対にいいですよね。」というシナリオの方がシンプルかつ説得力があると思います。

④ 自社サービスの必然性

なぜ自社のサービス導入でなければいけないのか?必然性について再度担当者と確認し、ストーリーを作っていきましょう。

「◯◯の機能があるから」「他社だと△△出来ないから」
という理由は勿論大事です。日々進化を続けるBtoB SaaS だからこそ中長期の視点での必然性も一緒に考えていければいいですよね。

「御社が中長期で実現する●●な世界観が自社で成し遂げたい世界観にマッチしていた」みたいな回答が得られれば最高です。

C) 推進者チェック

大前提として推進者は絶対的な存在ではないです。推進者も時に不安になるし色々な反対や意見を受けながら、課題解決、目的達成の実現に向けて奮闘しています。

① リスクを取れる人を見つけて推進者にする
② 個人ニーズへの訴求
③ 不安を低減する (やりたくない度合いを下げる)
④ 複数推進者をつくる

1人だけ強いバイヤーがいても、他に推進者いないと折れちゃう
推進者にとって心強い、頼りになる人を「2nd 推進者」にする
できれば立場が異なる人だとよい(ex. 役員と現場)

① リスクを取れる人を見つけて推進者にする

商談時に多くの担当者が現れる際には必ずキーマンを見つけましょう。リスクを取りたがらない、あまりにも社内での発信力が無さそうな場合は、担当者の上司だったりに再度アポイント打診をしてみてもいいと思います。

理想はシステム導入を通じて社内での経験値を増やしていきたい、評価を上げていきたいという成長志向の強い方ですが、全員がそうではないと思います。なので②に行って、

② 個人ニーズへの訴求 

担当者が感じる課題にフォーカスする事で、リスクを取ってでも上申に挑戦したいと思ってもらえるよう進めていきましょう。この辺りは初回商談で「不適」の部分にある課題の必然性(中編に記載)を高めていくことで増えていくと思います。あくまでも会社のためで無く自分自身のためにシステム導入したいと感じるかどうかが重要です。

同時に営業側に対しての「不信」のケアも重要です。信頼に至るかどうか?この人と一緒に仕事をしたいと思ってもらえるかどうか?別に担当者と仲良くなってもらう必要はないですが、この営業マンの提案は他社の営業と比較しても信頼に値すると思ってもらうことは重要です。

③不安の軽減

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不安は時にやりたくない理由を無限に作ってしまいます。これでもかというぐらいに不安を軽減し、やりたくない理由を無くしていきましょう。

「そもそもサポート面って大丈夫かな?」
カスタマーサクセスの部門の方に同席を依頼しましょう。カスタマーサクセス側からしても、事前に顔合わせが出来る方が、お互いにリスク検証もできるので断る理由がないと思います。

「システム導入の進行イメージがわかなくて不安...」

時期やサポート体制図は提案資料に盛り込むとは思いますが、あらためてどんなスケジュールでどこまでやるのかは明確にすり合わせて納得してもらいましょう。また普段の業務と並行してどれくらいの時間の確保が必要なのかは予めすり合わせをしてもいいかもしれません。

「初めてのシステム導入うまく導入できなかったらどうしよう?」
システムに不慣れな会社も導入に成功している事例は絶対にあると思います。ここについてはある程度の営業の導入実績や全社での導入事例をある程度勉強しておく必要があると思います。

④複数推進者をつくる

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担当者1人では時に不安になったり、反対意見があった時に心が折れてしまう可能性があります。推進者は1人に絞らず立場の違う別の推進者を作ることが重要です。
「○○さん以外に今回のシステム導入に協力してくれそうな方はいらっしゃいますか?」
と事前に協力者を見つけることで色んな角度から上申時のリスクを確認したり時には推進者と異なる立場からの意見で信憑性が増すと考えられます。

D) 関係者攻略シナリオを固める (リスクを潰す)

ここから確認事項が少し複雑になってきます。誰の(who)の何(what)を解消すれば受注するのかを検討し、合意形成を進めていく作業を行います。リスクはwhoとwhatで洗い出し、どのように解消するのかのhowを決めていきましょう。

① 関係者洗い出し (who)
② プロファイリング(what)
③ 複数シナリオ検討 (how)
④ 説明者の選定:適切な説明者を見つける (how)

① 関係者洗い出し (who)

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こちらは初回商談である程度のバイヤー相関は抑えていくと思いますが、より詳細な観点から洗い出しを行いましょう。ここまでくれば細かい情報も開示してくれるはずなので、丁寧に確認しましょう。社内だけでなく社外にも目を向けましょう。

誰がどういう責任を担っているかは確認しましょう!具体例として...
財務面判断バイヤー
使い勝手面判断バイヤー
技術面判断バイヤー
影響者 (各バイヤーの相談相手、顔色を伺う人、元上司、同族etc...) 
外部パートナー(士業やコンサル・監査・社外取締役、開発ベンダーetc...)
その他バイヤー(社長、役員、課長、担当レベル等)

② プロファイリング(what)

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各バイヤーがどんな性格をしているのか?確認しましょう。それぞれのバイヤーのプロファイリングができているか(課題意識、好き嫌い、重視ポイント、地雷ワード等)プロファイルを踏まえてどんなリスクがあるかを推進者と一緒に考えていきましょう。

ここでも出てくるのが「社長は費用対効果を常に重視します!」って発言。
何度も言うようですが「システム導入は投資です!費用対効果で考えるようでは承認取れません!」と伝えることが大事です。もし伝えるとしたら人1人採用する金銭コストと時間を考えたらシステム導入すること自体がそもそもそこまで大きな費用なのか?はしっかり議論した上で推進者の上申能力を高めていきたいところです。

それでも本当に役員決裁が降りない場合の最後の手段として、時期を約束した上での値引の最終カードも持っておきましょう。値引は基本しないスタイルですが、特殊な例として10万他社の方が安くて失注しそうなら値引が出来る可能性がある事は伝えてもいいかもしれません。

③ 複数シナリオ検討 (how)
システム検討者が全員、全社の中長期の経営課題に対しての解決策としてシステム導入をするみたいな崇高な目的を持っている方ではありません。
「DX推進されているいけてる会社にしたい」
「働きやすい環境にして離職者を減らしていきたい」
みたいなシナリオの方が上申メッセージとして刺さるかもしれないですし、バイヤーによって論理面、感情面と複数のシナリオを用意できると完璧です。

④ 説明者の選定:適切な説明者を見つける (how)
推進者より適切な説明者は社内にいないか?相関上、より強いバイヤーを説明者にできないかは念のため確認しておきましょう。相関を駆使して攻略できないか(社長に説得させる、同期の仲いい人から説得させる)yesを取る相手ごとに適切な説明者を変えられないか(取締役にはシステム部長から、社長には経理部長から、等)

E) 発注プロセスを抑える

ここまで抑えればあと少しです!

① 発注プロセス
② 発注日の必然性
③ 予算執行
④ 投資対効果を考慮した競合排除

① 発注プロセス

最大プロセスを細かく作成してみましたので、推進者とどのようなステップが存在しているかを必ず確認をお願いします。

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<STEP1>現場会議
<STEP2>現場検証
<STEP3>部門会議
<STEP4>関係者の根回し
<STEP5>経営会議(頭出し)
<STEP6>経営会議で出た宿題の確認
<STEP7>経営会議(本番)
<STEP8>購買稟議書作成
<STEP9>発注稟議書作成
<STEP10>発注決定

<STEP1>現場会議
現時点での課題や問題点に対して候補の会社をリストアップ、担当者の中では甲乙がある程度ついている状態で、現場の上司や他メンバーも合わせて伝達する場となります。

<STEP2>現場検証
自社の問題点をシステムをお試しすることで検証していくフェーズ。一般従業員を巻き込む場合はシステムの使用感やお試し検証も進めていく事が多いです。

ただこちらのフェーズ、個人的には出来ないこと探しになるだけなので一番必要の無いステップだと考えています。検証したいポイントは、推進者や現場に予め集めた上で、メールなどで回答し、こちら側からの追加提案を用意しましょう。

<STEP3>部門会議
現場が部門を兼任している可能性も多いですが、例えば労務の現場が給与計算システムのリプレイスを考えている場合、従業員に支払われる給与の振込や仕訳を担当する経理の現場も含めて部門全体の決裁を取りにいくようなイメージです。

今回はSMB規模を前提に話をしていますが、大企業になればなるほど役割が細分化されていくため、一度部門会議を挟むケースがあります。現場から部門全体へシステム導入についての仮承認を取るのと、現状体制との違いや導入したいシステムと他社システムの違いを納得いく形で伝えてもらいます。ここで複数の推進者が探せると今後の経営会議が楽になるので、営業側から推進者に必ず伝えましょう。

<STEP4>関係者への根回し
経営会議前に、部門や役職を問わず関係者の中で力になってくれそうな人物を見つけ協力を仰ぎます。出来れば管理部門系の役員や営業部門の役員に根回し出来れば、現場とバックオフィス双方の意見にもなりうるため説得度が増します。

<STEP5>経営会議(頭出し)
そもそもの経営課題に沿ったシステム導入なのか?経営陣が論理的にも感情的にも納得できる選択なのか?を頭出しします。「そもそもこれ必要なの?」「検討の根拠は?」など具体的な質問が最も飛んでくるのはこのフェーズです。

<STEP6>経営会議で出た宿題の確認

担当営業に懸念点を確認したり、自社で独自の調査をしたりします。営業としては必ず頭出しの結果を報告してもらえるよう経営会議(頭出し)の日にちを確実に確認しましょう。

<STEP7>経営会議(本番)

頭出し時に経営陣からもらった宿題への回答を提示した上で、経営陣が論理的にも感情的にも納得できる選択なのか?を最終決定する。ここでダメなら⑥にまた戻ります。

<STEP8>購買稟議書作成

事前に契約書を締結する必要があるか?もしくは契約書の雛型を送付する必要があるのか?この辺りは予めこちらから用意して確認しましょう。契約書の文言によっては法務チェックが必要な場面もあるので、この辺りの事前スケジュールは確認しましょう。また親会社の承認が別で必要な場合は親会社への稟議プロセスはどうなるのかを最終確認しましょう。

<STEP9>発注稟議書作成
購買稟議=発注稟議の場合がほとんどだが企業によっては、
・買いますという意思決定が購買稟議
・押印するのが発注稟議
の様に定義が異なるケースもあるので予め稟議の種類に抜け漏れがないか推進者と確認しましょう。

以上、長くなりましたが発注ステップの紹介でした。次の中項目に行きます。

②発注日の必然性(合意の深さ)

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自社サービスの利用を開始する日付の合意は得ているか?「なぜその日なのか?」のwhyをどれだけ深く合意しているかを改めて確認しましょう。

こちらがどんなに急いで案内をしても、経営陣や上司は決裁期日の重要性を認識していない可能性も高いです。 なぜこの日が見積の期日なのか?PJ開始日はなぜこの日に設定しないといけないのか?可能であれば、日単位での必然性が欲しいです。

なぜ見積期日がここなのか?なぜ導入プロジェクトの開始がこの日なのか?営業担当自身も腹落ちする日程設定をしましょう。

「大体この時期までには始めていきましょうか」ぐらいの温度感では絶対にダメです。導入決定しない理由を作るのは簡単です。
「他の業務で立て込んでて...」
「上司との予定が取れなくて...」
決断しない理由を作るのは非常に簡単なんです。

また営業として目標数字を追いかけている以上、3/31付の納品と4/1付の納品では数字の見え方も変わってくるはずです。
「タイミング的にもキリがいいので4/1から申し込もうと思います」
4/1であることの必然性が無いので、出来る限り前倒しで進められるよう事前にすり合わせをしましょう。

③予算執行

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大前提として自社サービスへの予算は取れているのか確認をしましょう。
企業によって執行ルールは決まっており、ここの認識を双方で有耶無耶にして進めてしまうと発注は決まったものの、営業としての数字計上は翌月以降になるみたいなミスが発生します。

今回のSaaSとは関係ないのですが、私は新卒で入った会社でこれをやってしまい、月末に上司から2時間ほど激詰めされた経験があります...発注と計上と支払の3つのタイミングを必ずすり合わせして下さい。

例) 3月決算で4月以降の予算が取れている場合
発注:発注日自体が4月以降じゃないとだめ
計上:発注は3月にしていいが、費用計上が4月以降じゃないとだめ
支払:発注も計上も3月でよいが、キャッシュアウトは4月じゃないとだめ

特に上場企業、介護や教育など国が絡む業態、上場企業子会社は予算執行のタイミングが複雑だったりするので気を付けましょう。

④ 投資対効果を考慮した競合排除

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受注率五分五分で来てしまっているコンペの場合(その様にさせないのが大前提ですが...)競合はなりふり構わず値下げをした見積を提示してきます。リスクは事前に察知して、私は事前に以下の様な質問を投げかけます。

「もし競合会社がうちのシステムより費用が安い場合、どのような理由で役員に説明をしますか?」


これに対して双方が納得するまで一緒に考えましょう。理由は何でもいいですが、必ず双方が納得する説明が出来るまで考え抜きましょう!

「6月リリースの新機能も含めて判断した時に10%下げられても結果的には御社のシステムの方が安い」

「サポートが充実しているので、導入失敗する確率が極端に低い」

「既存の別システムとのAPI連携が可能になるため、周辺システムと比較しても業務効率化が出来る」 etc...


F) その他のリスクを考える

ここからは営業自身のマインドや実際の受注単価や目標として課されている案件の件数によっては無駄な時間となってしまい、ここまでやるか?という意見もあると沢山あると思いますが、ここまで様々なリスクを考えた上での失注だったら悔いは無いと自分でも諦めが付くので、自分は潜在的なリスクを含めてここまでやります。

もしリスクがあるとしたらの観点で考えてもいいかも知れません。この部分は上司や別部署の人間と同席をすることで第三者目線で判断してもいいかも知れません。

①社内での前例で確認
以前、○○なケースで稟議が下りなかった事例の報告があったが、今回のケースは当てはまるだろうか?その時の反対者は何と言って反対したのか?

②顧客先での前例で確認
以前のシステム導入はどんな理由で反対があったのか?その時現場は、上司は、情シスは、代表は何と言って反対したのか?情シスなどであればそもそものセキュリティ要件でNGがあったなども考えられるし、現場であればシステムを使いこなせるリテラシーが無いと言われてNGになったなど、考え始めればキリが無いですが、顧客から発生するリスクは無限に存在します。

③認識しているつもりにはなっていないか?
「代表が御社の導入の方向性で動いている」は本当にそう言っているのか?どの値段やシステム内容の詳細を理解した上で言っているのか?HPの最低料金だけ見て、勝手に安いと判断していないだろうか?

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以上、とってもとっても長くなってしまいましたが、上申ストーリーの攻略に必要な6つのポイントをご説明させて頂きました。

A) 推進者の育成/選定
B) 必然性の育成 (≒ 上申ストーリー)
C) 推進者チェック
D) 関係者攻略シナリオを固める (リスクを潰す)
E) 発注プロセスを抑える
F) その他のリスクを考える



おわりに ~BtoB SaaSのセールスとは~

最後の最後にこんな事は言いたくないですが、私は営業が昔から大嫌いです。出来る事ならしたくない。一生終わる事の無いノルマに向き合い、対峙する顧客の意見を正面から受け、時には厳しく叱られることもあります。社内に戻れば戻るで、様々な部署のフロントとして時にはディレクション能力を求められることもある。一言で「めんどくさい」仕事です。今回のnoteで営業について合計2万字近く細かく買いていますが、そもそも私は1人でいるのが好きで(30歳を超えてからリモートワーク環境になってから特に思います) 人と関わるのが、あんまり好きじゃないですし出来ればAIチャットボットで顧客を誘導し勝手に自社の製品が売れていく仕組みを作っていけばどんなに楽だろうなと思う時があります。
 ある人にとってお金稼ぎの面で営業が良いよねという人もいますが、他先進国と比較して、外資でも無い限り日本企業でセールスをやること自体は給与ベースがそんなに高いわけではなく、The 営業会社でよくある「インセンティブ」も諸刃の剣であって、売上が上がっているときは嬉しいですが、常に前年比や前任者と比較をされ、マーケットの売上ボリュームを少しでも下回った時には大きく評価を落とし、正社員でありながらも収入も安定しない場合もあります。
 そんな私が「嫌い」だと思いながらこれまで「営業」という職種に従事しているのはひとえに「使命感」からだと思います。人生の貴重な時間を使い対峙する顧客の課題を解決し、この世の無駄の削減や不可能を少しでも可能にするチャレンジを顧客との商談を通じて進めていきたいと考えていたからです。バックオフィスの効率化に対する営業、会社のミッションに共感し約2年間奮闘しましたが、きれいごとでは片づけられないほど大変な時期もあったし、苦労する事も多かったです。ただ受注を1件積み上げることで「自身の提案で他社を改革し、社会を動かしていく」という新卒の時から就活をやっていた頃から考えていた自分の「目的」を果たすことも出来ました。何年営業をやっても営業は大嫌いなままだが、営業で得られる成果はビジネスの醍醐味でもあります。

“差別化されていないプロダクトでも、営業と販売が優れていれば独占を築くことはできる。逆のケースはない。”
上記は私の尊敬するPayPal創業者ピーター・ティールの言葉です。

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BtoB SaaSは今戦国時代です。毎日のように各社でアップデートが起きて、自社での機能的な独占を築く事は正直難しい。また自社プロダクトで出来ない事も多く、各社で「対策委員会」なるプロジェクトを立ち上げ自社サービスとコンペに出てきたときにはこう伝えるべきといった手法論が展開されつつあり、一筋縄ではいかないです。
 BtoB SaaSのセールスを極める私たちは安易な機能比較やポジショントークで攻めるのではなく、王者の営業を目指してほしいです。
差別化されていないプロダクトでも営業と販売が優れていれば独占を築く事はできる。その上で再三になりますが私から伝えたい事は冒頭と同じです。システム導入を目的とするのではなく、お客様の課題の先にシステム導入という選択肢があるという事である。是非このnoteを用いて、顧客の課題に向き合い続ける営業であって欲しいと切に願い、締めの言葉とさせていただきます。本当に【前編】【中編】も含め全ての内容を読んでくれた皆様本当にありがとうございました。

         元:BtoB SaaSセールス 現:世界一周旅行者 ゆーた

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