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ヨーロッパ食文化の旅

六本木のドイツ料理レストラン「ツム・アインホルン」で長年オーナーシェフを務めた野田浩資シェフが2023年に引退した。
多くの在日ドイツ人や政財界の方々に惜しまれながら、現在彼は食文化研究家として第2の道を歩み始めている。
ドイツ・フランクフルトの5つ星ホテル「シュタイゲンベルガー・フランクフルターホーフ」での修行をはじめ、ベルギーやフランスなどヨーロッパ各地で研鑽を積んだ経験を持つ。日本に初上陸した「モーベンピック レストラン」の総料理長として帰国し、その後独立してレストランを経営してきた。ドイツ文化会館の「クライゼル」は在日ドイツ人の間で「美味しいドイツの郷土料理」が話題となり、メルセデス・ベンツ日本法人のドイツ人社長が「ベンツ・ジャパンの入るビルにお店をだして欲しい」ということでスタートしたのが「ツム・アインホルン」である。

「音楽家の食卓」のディナーイベント

私は30年以上前に知人の紹介でシェフと出会い「ドイツの森の料理人」という本を出版した。レシピを掲載したドイツ料理の本はめずらしかったこともあり、売れ行きは好調だった。2冊目の「ワイン街道美食の旅」を出版した頃、私が出版社から旅行会社へ転職した(この経緯は別の章で)。
ドイツのワイン産地13箇所を訪れてワインとその土地の郷土料理の食事を体験する旅を企画しようと1999年からはじまった「野田シェフと行く旅」は、ドイツ国内だけでなく、ヨーロッパの国々を巡る「食文化ツアー」として20回以上に亘り実施するツアー企画となった。
シェフはお店にピアニストとヴァイオリニストを招き、ヨーロッパの作曲家たちが食したレシピを再現してディナー音楽会を実施してきた。バッハやベートーヴェンが当時どのようなメニューの食事をしていたのか、など様々な音楽家をとりあげて歴史とともに解説する。その時々の演奏家が、曲の紹介をして演奏する夕食会は話題となり、毎回満席で開催していた。その集大成が「音楽家の食卓」(誠文堂新光社)という本として出版され重版を重ねている。

書籍「音楽家の食卓」 

野田シェフのお店は特に4月〜6月のSpargel(ホワイトアスパラガス)の時期は連日満席で予約がとれないお店であった。
在日ドイツ人の間で口コミになったのをきっかけとして例年楽しみにしているリピーターの方で賑わう。シェフは毎週ドイツから新鮮なアスパラガスを空輸し、手間のかかるアスパラガスを濾したスープや、特性のオランデーズソースでの料理は他店では味わえない美味しさだった。
24年からは野田シェフのホワイトアスパラガスの料理を「移動レストラン」として地方のホテルでの夕食会を企画しようと思っている。まずは熱海のHiramatsuさんで実施できるようにいま企画中である。

100%ホワイトアスパラガスのスープ







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