移動しない移動法

初めましての方へ向けて簡単な自己紹介をさせて頂きます。


武術の身体技法やヨガの身体技法を研究しています、旅する身体と申します。神奈川を中心にクラスを開催しています。武術の技法は武術研究者の甲野善紀先生から、ヨガは沖ヨガの龍村修先生から学ばせて頂いています。この学びを礎に研究工夫を行っています。


武術の身体技法は昨今、スポーツや介護にも応用されています。古武術〇〇というワードを聞いたことがあるかもしれません。身体の使い方を研究しながら日常にも落とし込める稽古法や動きを提案したりしています。

ヨガについては、身体が不調だった当時、あるポーズや呼吸を紹介されて1か月殆ど毎日行っていたら身体が激変したのを機に始めて今に至っています。ポーズに注目されやすいヨガですが、呼吸や瞑想を生活に落とし込む事を大事にしています。

どちらも日常に活きていなければ意味がないとおもいますので、その辺りや日常録を書いていければと思います。

これからの記事で、身体の奥深さや面白さ、不思議さに興味をもち、実践していって下さる方がいれば私にとっての欣びです。


さて、今日は先日行った稽古の中での気付きの話です。

COVID-19の世界的流行によりこの記事を書いている4月半ば現在、神奈川では緊急事態宣言が出されている関係で外出自粛要請が出ています。その影響で会場施設は休館になり、ホームとなる場所でのクラスもほぼありません。というわけで、稽古も家での一人稽古の気付きです。一人稽古の時間というのが実はものすごく大事なのですが、こちらの話題は後々お話しできればと思います。


気付きの話に戻りますが、今回気付いたのは「移動」に関して。


移動にも長距離や単距離と様々にあるが、ここでは武術的な「間」といった距離感の事。相手との間を詰める動きの工夫の中で、まだまだ足で動いていたなと気付かされた。


えっ!?移動って足で歩いたり走ったりするもんじゃないの?

と思われるかもしれない。しかし、本当にそれだけなのか?


武術の技法の中にはこの固定観念をぶち破ってくれる面白さと知恵が詰まっている。移動の際には地面を蹴って、足を前に出して・・・といった具合が一般的だが、武術的には「落下」と「重心の移動」を使う。「落下」は膝を抜いたり立っている事をやめる。落ちるときに一瞬体重が浮く。ジェットコースターなどで一気に急降下する時にフワッとなるあれだ。あの感覚が落下によって生まれる。「重心の移動」(重心も頭や胸、肚、足など様々ある)は倒れるエネルギーを使う。前に倒れかかり膝のつっかえ棒を外してやれば自然と足は前へ運ばれる。この二つを組み合わせると結果としての移動となる。例えば前に行きたいとして、足で移動しようとすると、動かなきゃ!と移動欲が強すぎて地面を蹴ってしまいかえって居着いてしまって遅くなったり、「間」やタイミングが読まれやすい。


「落下」と「重心の移動」は

立っていることをやめて

前へ倒れる

結果として移動している。


移動しようという想いがあるとそれは自然と身体から発せられて相手にも伝わりやすいが、自分が移動する意図はなく、落下と倒れるが組み合わさり、結果として移動していた状態になっている。自分が意図していない動きは相手にも読まれにくい。この発想の転換は、普段どれだけ先入観や固定された視点で物事を見ているかを考えさせられる。


面白いのは、重心の移動の後に落下すると意図した移動になってしまう。この感覚も色々試してはみたが、やはり重心の移動を先にやろうとすると途端に移動欲が出てくる。前に倒れる動作でも多少移動欲が出るのかもしれない。落下はその場にただ落ちるので、そもそも移動欲がない。少しの違いに聞こえるかもしれないが、とても大きな違い。移動一つをとっても、奥が深いものだ。








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