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高知仁淀川町ひとり旅『中津渓谷へ向かうNNNタクシーで号泣』

2022年4月 高知仁淀川町紀行 Vol.03

  安居渓谷が野生剥き出しの土着神という印象だった一方、中津渓谷は神社庁管轄って感じ。

高知到着日の翌日、晴天に恵まれ、朝早くから安居渓谷散策などしていたが、次の日は雨の予報。割と100%に近い感じ。
よって次の日に行く予定だった中津渓谷散策を、本日中に決行すべしと判断した。
安居渓谷から中津渓谷までは約20キロの距離。車で30〜40分ほど。
歩くと4時間。
もう午後に差し掛かっていたので、贅沢だがここはタクシー利用が賢明であろう。

滝と虹。横尾忠則っぽい

宝来荘にて、池川交通ハイヤーという会社に電話をして配車をお願いする。聞けば、車3台で運営している小さなタクシー会社とのこと。

30分ほどでタクシー到着。

私は、ボラれてなるまいという思いから多少ピリピリしていた。googleなどで料金の平均値をチェックして、その金額で行ってもらえるか事前に確認した。

『それは難しいかもしれないですー』

あっけなく撃沈する。

ドライバーはOさんという男性。ゆっくりと柔らかい話しかたをされる。

『でもなるべく安く行けるように頑張りますんで』

中津渓谷入口にある笑美寿(えびす)茶屋。コーヒーをオーダーしたら『今たてます』と。
なんと風流!

道すがら、猫の話になった。私が肉を食べないという話をしたら、『もしかして猫飼われてますか?』と聞かれたのだ。

私はにわかペスカタリアンなのだが、始めたきっかけにうちのニャンコたちの存在が大きく関わっているので、図星であった。しかし何より、そんなふうに思考回路が繋がるOさんだって、絶対に猫好きなはず。
私も同じように問い返した。するとOさん

『うちも1匹飼ってますよー』

名前はラテちゃんという男の子。『2匹目なんやけどねぇ』という言葉を聞いて、もう目頭がぽっと熱くなるのを感じた。

つまり過去に1匹目がいたわけだ。

そして今はいない。

中津渓谷の魅力は山!断然山!

そこで先住猫の話を聞く。いや、うちの先住猫の話が先だったかな?

いずれにしても、私はもう泣いていた。

猫好きな人なら、NNNという言葉を聞いたことがあると思うけど、Oさんと私、ほぼ同じようなNNN体験をしていた。

Oさんの先住猫の名は『たまきち』くん。

Oさんのご近所で、ほぼ放置の状態で飼われていたたまきちくん、いろいろあって、ある時めでたくOさんのうちの子になった。

それから1年、Oさんの家で、元気で仲良く幸せに暮らしたとのこと。

1年。

めちゃくちゃ甘えん坊でOさんにベッタリだったというたまきちくん、1年後に体調を崩し、いろいろ手を尽くすも、回復の兆しなく入院。それで少しでも元気になればと願っていたが、悲しいかな、ほんの翌日、亡くなったと連絡があった。
病院に駆けつけたOさんは、虹の橋を渡ったたまきちくんを見て大泣きする。

『僕ももうその時45歳過ぎてたけど、もう涙が止まらなくて…』と。

あまりの悲しさに、もう2度と猫は飼わないと誓ったOさんだったが、その2週間後、地域猫の保護活動をされている知り合いに、子猫を飼わないかと打診される。

聞くと、お母さん猫が交通事故にあって、孤児になってしまった3匹の子猫のうちの1匹とのこと。もう息をしていないお母さん猫に寄り添って鳴いていたところを保護されたそうな。

生後まだたったの2週間。…2週間??

生まれた日を聞いたら、なんと、たまきちくんが虹の橋を渡ったその日だった。

『あんまり悲しまないでってたまきちが巡り合わせてくれたのかなって』とOさん。

この景色!山山山!かっこいい!

『NNN恐るべしですねーーー』
なんて軽口を叩こうとするが、もう言葉が出ない。とっくに涙腺崩壊して滝のように涙を流していた私は、運転席の後ろにセットしてあった『池川交通ハイヤー』と書かれた宣伝用ポケットティッシュを次から次へと開けて鼻をかみ、うーうー唸るのが精一杯だった。

実は今うちにいるクルにゃんというニャンコも、先住猫のグリにゃんが亡くなった日に生まれた野良ちゃんだったのだ。

こんな偶然の巡り合わせは、たまきちくんやグリにゃんの計らいに決まっている。

高知の空の下、仁淀川のほとりを走る小さなタクシーは完全にNNNにロックオンされ、車内は猫エーテルでもっふもふに満たされていた。

帰りは国道を6キロ歩く。距離はいい。しかし国道はもう歩きたくない。
田舎の国道は歩行者の介入が想定されていない。
池川交通ハイヤーを使うべし。

程なくして中津渓谷到着。

私はボラれてなるまいなんてピリピリしていたことを心底恥じた。

ありがとう、Oさん。ありがとう、たまきちくん、そしてグリにゃん。。

6キロ道中、店は2件。どちらも閉まっていた。
さらに無人野菜売り場は全て空っぽ。消費活動に飢えていたアタイ脱力。
頼む…何か買わせてくれ…きゅうりでもいいから。

うちのクルにゃんはもうすぐ2歳、Oさんちのラテちゃんは5歳になるって言ってたかな。

ラテちゃん、最初は真っ白だったのにだんだん茶色くなってきたとのこと。
そりゃカフェラテのラテちゃんだもんね。

笑美寿茶屋のおかみさんがたててくれたコーヒー、うまし!
お替りして2杯いただいきました。

優しいOさんちの子になれて良かったね、ラテちゃん。
たまきちくんに感謝だねっ。

うちのくるくるクルにゃんが、先代猫のグリにゃんに挨拶しているところ。


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