モロッコ_034

さらばモロッコ

モロッコに船で入国後、タンジェからは首都ラバトへ。ラバトでモーリタニアのビザを取り、メクネスへと向かう。世界遺産に指定されているメディナ(旧市街)はたいしたことないが、ムーレイイスマイルの廟は美しかった。モロッコのイスラム遺跡はイランやシリアのそれと比べると栄華にかけるが、モロッコならではの黄色やピンクの色使いがポップでいい味を出している。

メクネスからはモロッコ最古の都市、フェズへ。なるほど、世界最大のラビリンスと謳われる、フェズのスーク(バザール)はでかいでかい。こんなにも商店があって果たして売れるのだろうか、というほど、似たような店が永遠と続く。メディナは丘の上にあって、狭い路地がくねくねと坂を上がっては下がり永遠と続くのだ。 


僕は毎日この迷路に挑戦しては迷い、身も知らぬ路地をうろついた。やっと地形を理解したのは3日目になってからだった。
ここのスークはトルコのイスタンブールのグランバザールや中東最大と言われるシリアのアレッポのそれよりも大きいかもしれない。まあ神秘性という意味ではアレッポの方が上だが・・・でもそれほどまでにフェズのスークは巨大で楽しかった。

フェズからトドラ渓谷、そしてマラケシュへ。

「マラケシュ」
その言葉の持つパワーに惹かれて5年前にやってきた町(もっとも、どうしても砂漠に行きたくなって1日しかいなかったのだが)。ここにはのんびりと6泊もした。
マラケシュはやはり楽しい町だった。芸人が永遠と騒ぎ続ける疲れを知らないフナ広場(死者の広場)城壁に囲まれた巨大なメディナ。何の目的も無しに町を歩いているだけで、向こうから何かがやってくる街。
ただ、「マラケシュ」という言葉は、もはや何の神秘性も持っていなかった。スークのメイン通りはみやげ物屋でしめられていた。フナ広場の屋台には外国人ばかりで、現地の人がいるのはスープやソーセージを売る安い店だけだった。現地衣装をまとった水売りは観光客を見つけてはお金を払って俺の写真を取れと迫った。


今夜、バスでモーリタニアの国境の町へと向かう。
モロッコは未だ貧しい国である。道端に右手を差し出しながら座り込む老婆たち、夜の9時になっても20円のビスケットを持ってバス停をうろつく子供の物売、ちぎれた腕をむきだしてバスに乗り込んでは何かを訴えている少年。
旅は楽しい。でも同時に悲しい。
自分のしたいことをしている、自分の生きたいように生きていきたい。でもそれはあまりにも贅沢なことで・・一歩外に出ると世の中は矛盾と不平等で満ちていて。
40歳にもなろうか、立派な親父が1本10円もしないタバコを売り歩いていた。バスの隣席に座るのはくたびれきった老人。
暗闇のなかをバスは南へと走っていく。
明日はどんな日なのだろうか。
インシャッラー
(神のなすがままに)

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