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売り買いされる「いのち」

マレーシアのクアラルンプール国際空港で6月20日、多数の子ガメを密輸しようとしたインド人の男性2人が逮捕された。

男性らは中国からインドに向かう途中で、ミシシッピアカガメを5255匹、スーツケースに隠して運ぼうとしたのを空港で発見された。子ガメはペットとして販売されるもので、1万2700ドル(約136万8千円)相当。スーツケースにはえさも専用の装置もなかったため、死んでいたカメもいたという。

Malaysia seizes thousands of smuggled turtles at airport, BBC, 26 June 2019.

輸入されたペットが自然に与える悪影響

保護されている動物を、食用や薬用として違法に運ぶ例は以前からあった。しかし、地元にいない珍しい動物を愛好する人たちと、それを供給する業者の存在で、生き物の売買は増加している。

ミシシッピアカガメは、わたしも子どものころに友だちの家で見たことがある。「ミドリガメ」とよばれていて、縁日で売られていたり、学校前に来るペット業者が扱っていたと思う。

もともとはアメリカの南部で養殖されたものが日本に持ち込まれたそうで、家庭では買いきれなくなって野外に放された結果、大量に繁殖し、環境庁は「緊急対策外来種」として位置づけている。日本の在来の生物を脅かし、蓮池で育てている蓮根の食害なども出ているからだ。

ペットブームと動物ビジネス、そして密輸の関係

ペット需要が増えるにつれ、動物の繁殖と売買、そして保護されている種の場合は違法な取引が増えている。

最近では日本人大学生が、カワウソを密輸しようとしてタイで逮捕されている。カワウソがブームになるなか、東南アジア原産のコツメカワウソを買ってくるよう依頼を受け、スーツケースに竹かごを入れ、10匹のカワウソを運ぼうとしたのをタイの空港で制止されたという。

NHKの「クローズアップ現代」の取材によると、カワウソの密輸ではこの2年で7件の逮捕者が出ているという。大学生(20代)、会社員(30代)、ディスクジョッキー(40代)、会社経営者(50代)で、いずれも動物取引を生業としている人びとではない。番組は、「運び屋」としてこの人たちを利用した背後に、反社会的組織がいるのではないかと推測している。

人間の所有欲が動物を苦しめている

現代では、希少な動物の保護や繁殖に貢献している動物園ですら、生き物を自然状態から切り離した環境で飼育している点で批判されている。動物がいることを売り物にした動物カフェでは、スタッフが飼育についての専門知識もないまま、本来の生態ではない環境を動物に強いているところもあり、保護団体からは動物虐待と繰り返し指摘されている。

これだけ交通が発達した時代、本当に動物が好きなら、生き物が自然に暮らす環境に、人間が移動して接する方が負荷が少ないのではないだろうか。
「かわいい」「飼ってみたい」という人間の欲望が、動物といういのちを売り買いさせている。動物好きにも、節度が求められていると思う。



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