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多民族社会は民族衣装もいろいろ

世界のあちこちで暮らす、もの書きがつなぐリレーエッセイ「日本にいないエッセイストクラブ」。8周めのお題は「服」です。
記事の最後で、前後のエッセイストを紹介していますので、よろしくおつきあいください。

「マレーシアの民族衣装って何?」
日本の友だちに、そうきかれることがあります。

答えは「いろいろあるよ」

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マレーシア・テキスタイル博物館の展示


そう、多民族社会マレーシアには「民族グループごとの」衣装があります。
それぞれに男女の衣装が違ったり、地域差があったりするので、国の催しなどで各民族の代表が集まると、民族衣装の博覧会のようです。

民族衣装ですから、地元のひとは、自分の出自の衣装を着るのが普通。
しかし、わたしのような外国人が地元の衣装を身につけるのも、好意的に受け止められるようです。幸いなことに、<文化の転用(Culture Appropriation)>というような批判はこれまでのところ経験していません。

プラナカン女性の衣装「サロン・クバヤ」

ちょっとした集まりのときに、わたしが着ていくのは、レースのブラウス「クバヤ」と、「サロン」という、ろうけつ染めのバティックを使った筒型のスカートです。

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マレーシア・テキスタイル博物館の展示


わたしはバティックが好きなので、サロンに仕立てたものも複数もっているのと、クバヤなら礼にかなっているので、女性の服装に対して少々保守的な人がいても、配慮を欠いているとは思われにくいだろう、と思うからです。

もともとは、大航海時代より後に、主に中国からマレー半島にやってきて定着した移民男性と、地元のマレー系の女性の間に生まれた「プラナカン」の女性の衣装です。

一年の運を呼び込む、華やかなチャイナドレス

華人(中国系)の衣装としては、なんといっても中華民国時代に成立したというチャイナドレスが知られています。ほっそりした上背のある女性が着ると、本当に素敵なのですが、わたしの場合はどちらでもないので、なかなか着る勇気が出ません。

今ひとつの理由は、華人女性がチャイナドレスを着るのは主に中国正月(旧暦の新年)なので、縁起のよい赤や金をふんだんに使い、干支にちなんだ文字や動物柄が入っていたりもするため、華やかすぎて手が伸びないから。
そういえば、男性のチャイナ服はほとんど見かけません。

ふだん着の民族衣装「バジュ・クルン」

さて、マレーシアの街なかを歩いていて、一番よく見かける民族衣装は、マレー系女性のツーピース「バジュ・クルン」でしょう。晴れ着や正装ではなく(そういう用途のものもあり)、ごく日常に着られている服です。

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断食明け大祭前の晴れ着売り場


イスラムを奉じるマレー系の女性は、戒律に従って胸元や手足を多い、体の線も露わにしません。丈の長い長袖のブラウス「バジュ」と、くるぶしまで届く長いスカート「クルン」はそうした条件を満たす組み合わせで、女性たちは「トゥドゥン」というスカーフとのコーディネートでおしゃれを楽しんでいます。

「ハリ・ラヤ」(断食明け大祭)の時期には、晴れ着用の特設コーナーがショッピングセンターなどにでき、男性用の「バジュ・ムラユ」も並びます。

着付けがものをいう「サリー」

いろいろな衣装があるうちでも形が独特なのは、インド系女性のサリーでしょう。地域によって違うそうですが、5メートルを超す布を腰から巻きつけて肩に垂らす民族衣装です。

サリーと同じ色の短いブラウスを着るほかは、長い長い一枚の布だけなので、歩きやすく、型が崩れないようにするには、着付けにこつがあります。

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ディーパヴァリ(ヒンドゥー正月)を控えたインド人街の風景

そういうわけで、着脱が簡単で、より活動的な「パンジャビ・スーツ」もよく見かけます。腰より長い丈の上衣に、ゆったりしたズボンを組み合わせるツーピースで、襟元や袖口などに刺繍のアクセントがあります。

肌の色も違えば、顔立ちもいろいろの人がいるマレーシア。街なかを歩いていても、民族衣装や着こなしの工夫もさまざまで、布問屋や衣料品店を眺めていて飽きません。

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衣装に使われる伝統柄(マレーシア・テキスタイル博物館)

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「日本にいないエッセイストクラブ」のリレー、前回のエッセイストは、毎回味わい深いアルゼンチン観察をみせてくれる、奥川駿平さんでした。

アルゼンチン男の『半ケツ』問題について」では、ウエストからチラリとおしりが見えてしまうアルゼンチン男性の着こなし(?)をウォッチングされています。奥川さん、アルゼンチン女性はどうなんでしょう?

「日本に一時帰国した時、靴下やパンツを大量に買う」のは、とてもよくわかります。わたしもそう。どちらかというと、日本スバラシイ的な論調には距離を感じる方ですが、日本の衣類の縫製と、不良品をはじく検品システムは本当に素晴らしいと思っています。


さて、次回のエッセイストは「がぅちゃん」さん。前回のテーマ「夜」では、テルアビブにお住まいだったころの(あ、こちらもおしりが話題に)。

「なにか期待があって外の世界を求めてる」夜のふらふら歩き。期待通りのもの・人に出会っても、出会わなくても、なにか解き放たれたような自由で高揚した気分が今は懐かしいです。記事中の、”エルサレム=京都説”には驚きました。そうだったの???

がぅちゃんさん、次はどんなところに案内してくださるのか、楽しみにエッセイをお待ちしています。

「日本にいないエッセイストクラブ」には、メンバー以外の方もご参加いただけます。ハッシュタグは #日本にいないエッセイストクラブ で。これまでのエッセイをまとめたマガジンもぜひご覧ください。

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しばらくリレーを休んでいた、わたし森野バクは「日本にいないエッセイストクラブ」に下記の記事を書いています。

1 お題「はじめての」
はじめてのロックダウン(都市封鎖)ーマレーシア
2 お題「忘れられない人」
旅先で日本人だと言ったら、2時間質問攻めにされた話
3 「思い出の一品」
インドネシアの布好きからの贈り物
4 お題「お腹が空く話」
マレーシアで多文化ごはん、はしご旅
5 お題「思い出の写真」
再び訪れることができない、あの場所ーミャンマー西部ラカイン州の思い出

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