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熱帯が一年中同じだなんて、うそだ

日本を飛び出して長い旅をしていたころ、熱帯にも季節の移り変わりがあるのを知った。一年中暑いのはその通りだけれど、同じ気候なわけではない。

季節風の影響を受ける東南アジアでは、風が熱を運び、雨をもたらす。照りつけるような強烈な日差しの下を歩くのは、かなり体力を使うことなので、旅行者も地元の人にならって早朝と夕方が活動時間になる。昼間は、冷房の効いた涼しい屋内にいるのが正解だ。

誰と会っても「寒い」と言うバンコクの12月

12月初めのバンコクは(タイにしては)涼しく、ゲストハウスの水シャワーは本当に冷たかった。給湯器のついたシャワーがある部屋はランクが上で値段も高かったので、肌に粟が立つのをこらえながら水シャワーを浴びた。

この時期、「寒い」のを喜ぶバンコクっ子たちが、一年に何度も着ないようなジャケットや、毛糸の帽子をうれしそうにかぶる理由が少しだけわかった。もちろんそれは、日本の秋や冬の寒さとはまるで違うのだけれど。

気温のほかに季節を感じるのは、果物だ。外国人が行くようなスーパーマーケットには輸入品が多いので、土地の季節はわからない。けれども、地元の人が日々の食材を求める市場では、品が豊富なのがそのときの旬の果物だ。4~5月の1か月間マンゴーを書い続けた結果、出回り初めと旬の終わりでは、キロあたりの値段がずいぶん変わることを知った。

花もそう。日本の人は、盛りが短い桜のはかない美しさを愛でるけれども、南国にもそういう花はある。友人の家の庭にあるドラゴンツリーという花は、2月ごろに咲き、あたりを赤いじゅうたんのようにして、あっという間に散る。

つまりは、日本から休暇のたびに通っていたころには、この微細な違いがわからなかっただけなのだ。「南国は hot(暑い)、hotter(もっと暑い)、hottest (一番暑い)」などという古めかしいジョークを鵜呑みにしてはいけない。

長旅を始めて半年ほど経ったその日、わたしは自分が南国の感覚に少し近づいたことを感じた。


*気温のグラフは、MSN Weather から。
https://www.msn.com/en-ca/weather/records/Bangkok,Bangkok,Thailand/we-city?iso=TH&el=4CDQ6xYyP6%2F1G0xiUPiqAQ%3D%3D


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