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心に残るnote作品集

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エッセイや日記、写真、漫画など、出会えてよかった、素敵なnoteを集めてみました。さまざまなジャンルのクリエイターの皆さんに感謝をこめて。マガジンをつくる前に読んだ素敵な作品もた…
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#君のことばに救われた

大切な人との永別を実感させてくれたのは距離だった

今年の夏、おばあちゃんが亡くなった。 血の繋がらない父方の祖母。昨年のちょうど今頃書いた「ハイカラおばあちゃんと紅茶」というエッセイに出てくる。 本当にハイカラさんだった。損得考えず思ったことをズバズバ言う性格には時々困らされたけど。 夫と娘に先立たれ、少しずつ弱っていったおばあちゃんは、父母が同居する自宅と病院と介護老人保健施設を行ったり来たりしていた。一人で歩けなくなってからは施設で過ごすことも多かった。 * 「お知らせしときます。おばあちゃん、いま病院です。今

先生、あのね。絶対にだれにも言わないで……

20年近く前になるが、わたしはあるまちの学童保育でアルバイトをしていた。バイトの同僚たちは、子育てを終えた4、50代の主婦か、大学生のどちらかで、当時20代後半だったわたしは珍しい、中途半端な年齢だった。しかも子育て経験はない。さらに、運動が大嫌い。鬼ごっこなんて絶対にやりたくない。当然サッカーも無理。 インドアな要員に徹しようとしても、将棋も囲碁もわからない。トランプとUNOとオセロは、なんとかなった。ただ、困ったことに、わたしは負けるのが嫌いだった。対戦相手がたとえ小学一

装幀界の巨匠・川上成夫さんから教わったこと――「魂を込めて作った本は必ず伝わるんだよ」

川上成夫先生が亡くなった。 いまでもまだ、信じられない。   秋に突然入院されたと聞いたから、慌てて見舞いに行ったら、事務所からMacを持ち込んで、「ここで仕事をするんだ」と笑っていた。   あれ? パソコンは使えない人じゃなかったか……と思ったら、会社のスタッフを通わせて、直接指示を出すんだ、という。   事務所からは、そこそこ距離もある。ここまで来る女性スタッフのほうが大変そうだな、と思ったが、実際には当の彼女たちがそのことを何より喜んでいるようにも見えた。   川上成