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本のキロク 『傲慢と善良』辻村深月


「ピンとこないの正体は、あなたが相手に付けている値段です」

とんでもない本に出会ってしまった。

辻村深月の『傲慢と善良』は30代半ばの真実と40歳目前の架の2人の物語である。

こんなに心抉られる本はないんじゃないかと思うほど繊細で緻密な描写。
結婚がテーマだが、主人公たちを取り巻く家族や主人公自身の生き様を読んでいると仕事の考え方から老後の過ごし方まで人生全般、このままでいいんだろうか。と振り返るきっかけになる1冊だ。

あらすじ


婚活で出会った真美と架は2年の交際を経て結婚間近で幸せの絶頂にいた。
そんな中ネックだったのが真美のストーカー問題。日に日に過激になるストーカーから守るためにも結婚を決意した架だが、真美はある日行方をくらましてしまう。
架は毒親気味の真美の両親や東京で暮らす姉、真美が通った結婚相談所、かつてのお見合い相手、群馬県庁の同僚や英会話教室の同僚など手当たり次第に探すが手がかりは見当たらない。
ストーカーの正体は誰なのか、真美はどうして消えてしまったのか。
全てわかった時2人はどうなるのか‥…

感想

・どこまでが子育て、親心でどこからが「自分の物語」を押しつけてしまうことになるのだろうか、と子育ての本質にも少し触れた気がした。

・別れるわけがない、今のまま家族のように過ごしたいというのは多くの結婚前のカップルにある話だが、それこそが傲慢なのである
・嘘をついてはいけない、優しくしなさい、など善良であることはたくさん教えられるがうまく生きる術は自分で学ぶしかない

・あなたがそうしたい、と強く思わないのだったら、人生はあなたの好きなことだけでいいの。興味が持てないことは恥ではないから。

・その人が無意識に自分はいくら、何点とつけた点数に見合う相手が来なければ、人は"ピンとこない"と言います。私の価値はこんなに低くない、もっと高い相手でなければ私の値段とは釣り合わない

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