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#84 自分の知らない世界に触れることで自分を知る
社会人1年目の日記 206日目
お久しぶりです。だつをです。
1行でもいいから日記を書こうと思っていたけれど、100日も経たずに途切れてしまった。
けどまた書こうと思ったのは、自分の中でこれは何かに残しておかなければならないという経験をしたからだ。
だらだらと今日したことを書いていくので、お暇な人はお付き合いください。
社会人になってもう200日が過ぎた。オンライン研修が終わり、出社が始まり、だんだん社会人としての生活を実感できるようになってきた。
そんな中で今日は金曜日なのだが、有給を取って1日フリーだった。朝は役所でやらないといけない事があってその用事を済ませた。
午後は最近気になっていた「Brooklyn parlor」という本の置いてあるお店が新宿にあったのでそこで本を読んで過ごした。晩は同じく新宿にある「龍の巣」というお店を見つけ、大阪名物のかすうどんが美味しそうだったのでそこで食事をとった。
充実した一日。
ここで終われば、一日有給使って満喫したなぁという思いをしただけで、日記をまた書こうとなんて思わなかっただろう。
かすうどんを食べて向かった先。
それは新宿のゴールデン街。
一歩そこへ踏み入れるとそれまでのキラキラとした若者の雰囲気とは打って変わって、細い路地に十数人のキャパの小さなバーやスナックが所狭しとひしめき合っていた。
こういう隠れ家的な雰囲気は好きなのだが、入る勇気が出ないので2.30分くらいうろうろしていた(店見知りって言葉を何かの本で見たことがあるが、まさにそれだ)。
誰かと話せたりするのかなぁと思いながら、意を決して店内が明るめのバーに足を踏み入れた。
いざ席についてみたらみたで、自分から話しかけることも出来ず、ただ携帯を触りながら時間を潰していた。
店に入って10分くらい経った時、
「俺たちは昭和のゴミ溜めだぁ、底辺なんだよ」とひたすら自分のことを嘆いているガタイのいい50歳くらいの髭面のおじさんが入ってきた。その横には同じような風貌をしたおじさんと20代くらいのスラっとしたお兄さん。
その時、あまりに年齢も性格も風貌も違った3人だったのでどういう繋がりだろうかと不思議に思った。
最初に入ってきたおじさんは店内に響き渡る声量で店主に話しかけていて、いやでも話が耳に入ってきた。店主と仲が良さそうだったのでよく来ているのだろう。
声が大きいからといってうるさいとかは特に思わず、世の中にはこんな人がいるもんなんだなぁと聞き流していたら、店主が「初めてきたお客さんなのにこんなに煩くてごめんなさいねぇ」と話しかけてくれた。
「なんだ、小僧。今日が初めてなんか。」
そうおじさんに声をかけられると、それをきっかけにそのおじさんたちと話すようになった。「芸術の価値はお金なんかじゃない。ただ愛することが大切なんだ。」ということを教えてくれた。
芸術について何も知らない自分にとってはあまり理解できなかったけど、そのおじさんにとっては大切なことなのだろう。そして自分もいつかそう思える日が来るのかもしれない。
ここまでも少し非日常な休日。
この後、自分は途中上手く笑えなくなるくらい怖い思いをした。
そんなこんなで出会えた縁ということで、おじさんに飲み代を奢ってもらい、そのまま違う店に行くことになった。
同じゴールデン街の中にあるお店に行くのかなぁと思っていたら、ゴールデン街を抜けてまた雰囲気の違う街へ。
4人で歩いているとそのうちのおじさんとお兄さんが、2人でコソコソと話している。その話が終わると、お兄さんともう1人のおじさんがコソコソ話を始めて、何やら段取りがどうとか言っているのが聞こえた。
え、もしかして、やばい所に連れて行かれる??
この人たちはヤクザとかそういう系だったのか?
よくない想像がどんどん膨らんでいく。
コソコソ話が終わり、不安がっている私に気づいたお兄さんが「安心してほしい、絶対に犯罪とかそんなものではないから。社会勉強だと思ってついてきて、帰りたい時に帰ればいいよ。」と声を掛けてくれる。
そんなこと言われても、何かあってからやと遅いやん。と思いながらも付いて行った。目的地に着くまで話をしていたけど、おそらく顔は恐怖で引きつっていただろう。
そうして辿り着いたのは、新宿二丁目。
そう、この人たちはゲイだったのだ。
一軒目のバーで話している時から、お兄さんがゲイ、というか女の人として生活している話は聞いていた。
だから、もし今から連れて行かれるとしたらそういう街なのだろうなぁとは薄々勘づいていたが、2人のおじさんもそうだとは一軒目時点では思っていなかった。
コソコソ話の内容がうっすら聴こえてきてようやくその時に、あ、この人たちはみんなゲイなのだと気づく。
店に着くと、やはりおじさんたちはそこの常連のようで、マスターや中にいた人達と挨拶を交わしていた。
店の中に入るのかと思えば、店のすぐ外で飲もうということになった。自分がきちんと帰れるように配慮してくれたのだろう。さっきのコソコソ話の内容もこのことだったのだろう。
そこでお酒を待っている間、声の大きなおじさんは一言。
「俺はゲイなんだよ。」
知っていた。けど知らなかった。
頭の中ではそういう人たちがいることを理解していたし、特に偏見もなくそういう人たちと接することができると思っていた。
ただ、新宿二丁目に向かうまでの道中に感じた恐怖はまさに偏見から生まれたものだと思う。
ゲイの人に自分は襲われるんじゃないか、無理やり何かされるのではないかという想像をしてしまったのだ。
おじさんは続けてこう話してくれた。
「俺は本当にどうしようもない人間だけどよ、それでもお前にはこういう世界があることを知っていて欲しい。こういうマイノリティの人間がいることを知っていてほしい。
俺たちはこの世界でたくさんの人と出会って、酒飲んで、たくさん話しててすげぇ楽しいんだ。
だからゲイであることを一度も恥じたことはない。」
自分の生き方に自信を持っているおじさんをただただかっこいいと思ったし、実際にゲイの人と会ってもいないのに偏見なく接することが出来ると思い込んでいた自分が恥ずかしくなった。
まだ自分はゲイの人と普通に接することはできなかったのだ。そのまま店の奥で飲むかと誘われたが帰ったこと、そしてまだゲイの街というのを異色だと感じたことからそれが分かった。
またまた一杯ご馳走になって、別れ際、
「今日俺たちと会ったことは全部忘れてもらっていい。ただ、少しでも頭の片隅に置いておいてくれたら、どこかで必ず役に立つ時が来る。それだけは約束する。」
最後にここまで連れてきてくれた3人全員とハグを交わし、家に帰った。
今日初めて実際に面と向かってゲイの人の話を聞いて、同性愛者の世界を知ることが出来た。それと同時に自分の見ている世界と自分の器がいかに小さいのかということも知れた。
百聞は一見に如かず。まさにその通りだった。
たまたま今日という日に有給を取ったから、たまたま二、三十分、自分が店見知りを発揮したから、たまたまあのバーに入ったからこんな経験をすることが出来た。
初めてのゴールデン街でとても濃い時間を過ごせた。また来たいと思えた。
けど本当に自分は運が良かったと思う。
知らない街で知らない人について行き、全く知らない世界に触れる。
もし出会った人が出会った人なら、ぼったくりやら詐欺にあっていたかも知れない。
自分の身は自分で守る。それを肝に銘じながらも、これからもゴールデン街で飲んでみようかなと思う。そしていつか、もう一度おじさんたちと会って、何の偏見もなく飲める日が来ることを願う。
それでは、またいつか。
少しでも心に引っかかったらサポートしていただけるとありがたいです。それだけでずっと書き続けることができます。自信になります。