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【裏タケノコ王】第3話 呼吸するフェラーリ【後編】

〜裏タケノコ王シリーズ〜

第3弾 呼吸するフェラーリ【後編】

“もうフェラーリはいらねぇ。代わりにオレがブランドになる。”

「クワガタで大稼ぎしてフェラーリを買った」たけのこ農家風岡さん。実はその話には続きがあった…。フェラーリを含め1000万円を騙し取られた衝撃の過去。タケノコ王どん底の20代に迫る!

(取材日:2018年3月9日)

前編からつづく

◆フェラーリで1000万円騙し取られる

風岡:アニキは……ヤクザだったんだ。また、一流の詐欺師でもあった。まんまと騙されてから気づいたさ。オレはフェラーリを失い、さらに1000万円を騙し取られてしまったんだ。

オレには当時、生まれたばかりの息子がいてね。家族を養っていく必要があったさ。そんな中、信頼してた人に裏切られ、貯金はすっかり尽きてしまった。

「こんな目に合わせた人間を殺してやりたい……」

本気で思ったさ。でも、すんでの所でふみとどまった。

森山:なぜ、ふみとどまれたのですか?

風岡:人を殺すことで、自分を殺したくはなかったからさ。

「あんなやつに、オレの可能性をつぶされてたまるか!!」

そう心で叫んで、どん底から這い上がることを決めたんだ。

◆「もう1台買う」という決断

風岡:そこで、オレが起死回生のために取った方法は、

「フェラーリをもう一台買う」

という決断だった。

森山:ええ?正気ですか!?

▲2台目のフェラーリ

風岡:「仕事の失敗は仕事で取り返せ!フェラーリの失敗はフェラーリで取り返せ!」が、そのときのスローガンだったからね。

だからまずは必死に働いて、頭金400万円を稼いだんだ。

軽トラを爆走させて、フェラーリ専門店に買いに行ったさ。「軽トラで買いに来られた方は初めてです」と驚かれた。そこで900万円の7年ローンを組んださ。利息をつけると「1000万円」になった。だまし取られた金額と同じだった、奇遇だら?

そっからさらに稼ぎまくった。

空いた時間?そりゃバイトだよ。たけのこの山仕事で疲れた身体にムチ打って、深夜の本屋で働いた。早朝のクロネコヤマトの仕分けバイトもやったさや。トリプルワーキングしたわけさ。

物を大切にするようになったのも、あの頃からかな。

店番をしていたら、どこからかコンビニのレジ袋が飛んできた。「ラッキー!」とダッシュでキャッチして、しわを伸ばしてお店で使ったっけ。床屋に行くお金が惜しかったから、自分で髪を切り始めたさ。時間もお金も節約できた。これは、現在も続けている習慣さ。

▲山から戻った直売所。真剣な表情でたけのこに向きあう。

◆呼吸するフェラーリ

風岡:その結果「1000万円」が、わずか1年半で全額返済できたんだ。

1000万円のローン地獄から這い上がった自分に、いったい何が残ったのだろう?

たしかに、新しいフェラーリは手元に残った。だけどよくよく考えたら、本当に価値があるのは「クルマ」じゃなく「生き方」のほうなんじゃないかと思った。「逆境で輝く生き方」が自分の中に息づき、いまや力強く呼吸していることに気がついた!

そのときオレは、フェラーリではなく、自分自身に感動したんだ。

人間には、逆境でしか得られないエネルギーってものがある。

オレはそのエネルギーが常にほしいと思った。それ以来、何もない日常のなかにあえて「逆境をつくる」ことにした。自分を限界状況に追い込むことで、最高速度に加速する生き方をする。そう、それはまるで時速300kmでかっ飛ばす、フェラーリのような生き方だよ!

1台目のときは「オレが買っていいのかな」だったけど、2台目のときは「オレこそが乗るべきだ」と思った。次は、「フェラーリのように生きてやろう」と思うよ。

いまオレは、“呼吸するフェラーリ”になりたいんだ。

◆日本一のブランドに

風岡:だから今はもうフェラーリ、持ってないんだよね。40代になって物欲もなくなったオレが次に向かうところは……

風岡:「北斗の拳のケンシロウ」さ!

森山:ケンシロウ!?

風岡:ケンシロウみたいな鋼の肉体になりたい。そう思って、1年間筋トレしてきたさ。

なんのためかって?たけのこのためさ。たけのこの山では、機械化が通用しない。だから、自分を高めることでしか収穫力を上げられないさね。そして、より早く、より正確に収穫したい。お客さんが待っている店に、たけのこを並べて、また山に行きたいんだ。

▲「土が飛び散り、汗が飛び散る」躍動感あふれる収穫シーン

トライアスロンやってた頃と同じさ。タイムレースをやってるんだ。1秒を削り出すんだ。自分の持てる全エネルギーを、たけのこに注ぎたいんだ。

最近、そんな姿勢を評価してくれて「買わせていただきます」というお客さんが多くなってきてるさ。それが嬉しいんだよね、すごく。

たけのこの味を期待してお金を払ってくれるお客さん。期待に見合ったものを提供するために全力を注ぐ農家。おたがいに高め合える、一生つづく関係さ。そんな関係を、一つひとつ増やしたい。

だからもうフェラーリはいらねぇさ。

代わりにオレが、ブランドになる。お客さん一人ひとりにとっての「日本一のブランド」にね。

文:森山健太

※この記事は2018年に作成されたものです。

前編はこちら

裏タケノコ王シリーズ

第1弾 プロアスリート農家

第2弾 ファイトマネー

第3弾 呼吸するフェラーリ(前編)

第3弾 呼吸するフェラーリ(後編)


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