長島大陸食べる通信 【緋扇貝生産者 水永一朗】
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2016年の9月号の食べる通信で特集した獅子島。
その獅子島に行くには諸浦島の葛輪(くずわ)からフェリーに乗る。
フェリーは一日に何本も往来していて獅子島の人の生活の足となっている。
そんなフェリー乗り場のすぐそばに、ぽつんと浮かぶ筏小屋。
それこそが今回の特集、緋扇貝を作る錦盛丸水産の作業場だ。
「フェリーが来たら、よー揺れるのよねー」
と笑って話してくれるのは錦盛丸水産の水永一朗(みずながかずあき)さん。 見た目はいかにも海の男!という顔立ちだが、 とても優しく、笑うと眉尻が少し下がるのが印象的だ。
一朗さんは、三人兄弟の長男で、小さい頃からお父さんの仕事を手伝っていた。
中学生の頃から、将来は漁師になると決めていたそうだ。
「あの頃はよー魚が捕れとったし、きついってこともわかってたけど、この仕事が面白そうで将来は漁師だなって思っとったなぁ」
高校を卒業し、家業であった真珠の母貝となるアコヤ貝の養殖に本格的に取り組みだした。
しかし、90年代後半、全国規模で起きたアコヤ貝の原因不明の伝染病により、 養殖業者は壊滅的な被害を受けた。
次々とアコヤ貝養殖をやめる業者が続出する中、 一朗さんのところも決して例外ではなく、次の収入源を考えなければならなかった。
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一朗さんが選んだのが 緋扇貝だった。
アコヤ貝の育成の方法と似ている点があったことや、飼育する資材などが引き続きつかえたことなど、選んだ理由はいくつかあった。
その中でも一番 大きな理由は、一朗さんにとっては緋扇貝が、
”自分が美味いと思って出せるもの”
という点 だった。
「元々自分たちが食べる分だけを育てておったとよ。それが旨くてなぁ。好きでよー食べとったね。だから、これなら売れるんじゃないかって思ったんよ。」
緋扇貝が美味しいことは小さい頃からわかっていたし、美味しい緋扇貝を作れる自信もあった。あとは消費者の方に食べてもらうだけ。
そうして一朗さんの緋扇貝養殖は始まった。
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「育てること」と「売ること」の難しさ
皆さんは養殖というとどんなイメージ を持つだろうか。
”大量生産” や”機械的”
そんなことを思う人も多いかもしれない。
しかし、一朗さんの手仕事をみるとその印象は大きく変わる。
「貝たちは一律に成長はせんからねぇ。ちゃんとそれぞれ個体差があるのよ」。
一朗さんはそう言って、一つひとつ手で網をすくい揚げ、貝たちの成長具合を確認する。 緋扇貝は出荷まで1年から3年。1年以内の稚貝は、貝の色も鮮やかで威勢が良い。バケツの中で元気よく泳ぐ様子はとても可愛く、普段、わたしたちが食べている貝は、天然でも養殖でも生き物であり、尊い命であることを思い知らされる。しだいに大きくなってくると、窮屈にならないよう成長に合わせて同じサイズの緋扇貝を、約10個ずつ手作業で網に移し分けていく。こうして手をかけることが、その後の成長に大きく影響しているそうだ。その為、毎日丹念なチェックを欠かさない。
緋扇貝の特徴の一つはなんと言っても、 色鮮やかな貝殻。他の二枚貝にはない赤・黄・紫 といったカラフルな色が特徴で見る者を魅了す る。ペイントしたかのような鮮やかな貝殻はアートやアクセサリーに使われることもある。見た目がきれいなこともあり、贈答品などの注文も少なくない。
そんな中、一朗さんはこう言う。
「緋扇貝はやっぱり最初は”色”で入って来る人 が多いなぁ。だけど、こいからは色だけで勝負するのは飽きられるだろうから、どうせなら大きくてうまい緋扇貝を食べてほしいと思ってる。」
箱を開けたときの色とりどりの見た目だけを重視するのではなく、
大きくそして、おいしく育てることを一朗さんは何より大切にしているのだ。
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これは本物の色? 鮮やかな色が裏目に出ることも。
生産過程での試行錯誤を繰り返す中で、美味しい緋扇貝を作る方法はわかってきた。しかし、養殖を始めて10年程はなかなか売れない時期が続いたという。 毎日朝早くから海の上で作業を行う。そんな忙しい中でも時間をつくり週末には、軽トラに緋扇貝と焼き台を乗せ、片道3時間近くかかる鹿児島市内に営業に向かうこともあった。友人のお店の前に焼き台とクーラーボックスを置き、蒸し焼きにした緋扇貝を売っていたのだが、緋扇貝の特徴である鮮やかな貝殻の色を見て、道行くお客さんたちは
「どうやって色をつけてるの?」
「これ は自然の色じゃないでしょ?」
と言い、進んで食べてはくれなかった。 それでも必死に、貝殻の色のこと、身は帆立よりも甘くてしっかりしているということを説明し、実際に食べてもらった。 さっきまで、怪訝な顔をしてクーラーボックスを覗いていたお客さんたちは
「美味しい!」
「私は 帆立よりも好きかも!」
と褒めてくれ買っていってくれたという。
しかし、緋扇貝特有の奇抜な色や、そもそも鹿児島県には緋扇貝を食べる習慣があまり根付いていないこともあり、苦悩の時期が長く続いた。地道な営業を繰り返し、贈答用のチラシを手作りして配って回り、地元のお祭りに出店しては、とにかくみんなに食べてもらう。
“人の手で塗ら れたのでは?”と疑われるほどの鮮やかな色に関しては、自然のものであると感じてもらうため、貝の表面を磨く際、あえて少しだけフジツボを残すという工夫も行った。
今まで生産現場一筋で生きてきた一朗さんは、 どんな方法をとれば緋扇貝をお客さんに知ってもらい、買ってもらえるかよくわからなかったそうだ。
「何が正解かわからなかったから、思いつくこと は全部やったつもり。知ってもらって食べてもらえば買ってもらえる。味だけには自信があった から」。
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味への自信は、決して過剰なものではない。 毎日の徹底した管理と貝へのこだわり、現状に 満足せずに他の養殖場にも自ら足を運び勉強する姿勢などに裏打ちされたものである。
今年で緋扇貝の養殖を始めて17年目の冬になる。今では、ふるさと納税の返礼品にも選ばれ、贈答品としても使われるようになってき た。これまでやってきたことが少しずつ報われてきている。
「今までやってきたことが、正解かどうかもわからんしなぁ、もっといいやり方があったかもしれん。それでも今日まで続けて来てよかったち思うな。今の従業員では生産できる数が限られとるけど、いつかは新しい人を迎え入れる。そんで、うちの緋扇貝を全国のお客さんに届けたいち思っとるよ。」
と一朗さんは笑顔で語ってくれた。
【水永一朗さんの緋扇貝が気になった方はこちらから!】
(12個〜14個)3,300円
(20個〜23個)4,300円
(30個〜33個)5,500円
※送料別•税込みの値段になります。
TEL:0996-86-1502 FAX:0996-86-1902
からの申込みができます。
配送開始は
●平成30年12月1日から●
なかなか普段見ることのない緋扇貝ですが、ただ蒸し焼きにするだけでも最高に最高に最高にうまいので、ぜひみなさん年末に友達と食べてみてはいかがですか!!!
【長島大陸食べる通信が気になった方へ!】
このような生産者のストーリーと、その食べ物(この時は緋扇貝)をセットにして、3ヶ月に1度皆様のところへお送りするサービス
長島大陸食べる通信
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