たべトイフェスREPORT:口腔ケア&栄養バランスのとれた食事&トイレの備えはセットで考える
10月に開催された、災害時の「食べる」と「トイレ」について、体系的に学んでいくイベント「たべトイフェス」に参加してきました。その様子をレポートします。
栄養を充分に摂るために必要なモノ(コト)は?
トップバッターは、災害関連死を防ぐために、口腔ケアで被災地に寄り添い、被災者の健康を守ることに尽力されている歯科保健のエキスパート・中久木康一(なかくき・こういち)先生。参加者に向けた「栄養を充分に摂るために必要なモノ(コト)は?」という本質的な問いから、レクチャーが始まりました。
参加者との対話も交えながら、説明いただいた5つのモノ・コトがコチラになります。
被災地における医療需要の経時的変化について、東日本大震災で甚大な被害を受けた石巻市での状況を事例に、ご説明いただきました。発災から1カ月の間は特に、呼吸器感染症、なかでも「誤嚥性肺炎」の患者が多く、その原因は、口の中の細菌が唾液とともに肺に流れ込んでしまうことだそう。
地震の影響で断水している地域では、口の中を清潔に保つことがおろそかになりやすく、「誤嚥性肺炎」のリスクが高まります。
水が不足している制約環境下でもでき得る口腔ケアについて、一人ひとりが考え、実践していくことが重要になりそうです。
避けては通れないトイレ問題
続いては、食べたら「出てくるもの」が「出せる場所」について、NPO法人日本トイレ研究所・代表の加藤篤氏から、目をそむけたくなる切実なお話がありました。「食と栄養」と同様、災害時に後回しにされてしまうトイレ問題=排泄について、あらためて考える機会となりました。
人の命や尊厳にも関わるトイレの改善に力を尽くしてこられた加藤さん。排泄は災害時も「待ったなし」であり、食事を丸1日我慢できたとしても、排泄を我慢することはできません。多くの人が集まる避難所では、事前に備えがないとトイレはあっという間に不衛生な状態に陥り、感染症が拡がりやすくなります。さらに被災者がトイレの回数を減らそうと水分摂取を控えることで脱水症状から震災関連死が増える・・・心理的負担もどんどん大きくなります。
被災現場で繰り返される負のループを、今こそ断ち切り、備えていくには?
まずは各家庭の家族構成にあった数のトイレを備え、「もしも」のときにも落ち着いて使えるよう、「いつも」から使い慣れておくことから始めたいと思います。
「災害時の食」-避難所に行けば、どうにかなる?と思っていませんか?
災害栄養研究の第一人者であられる坪山(笠岡)宜代先生からは、災害時の食と栄養問題について、解説いただきました。
最初に投げかけられたのは、「自分は大丈夫!(たぶん)」「避難所に行けば、食事はどうにかなる」と思っていませんか?という問い。
実際は、、どうにかならないのが現状であることとともに、多様なエビデンスを交えて、日常を取り戻す上で食の質が左右することを力説いただきました。日本災害食認証制度による「災害食」認定を受けた食材をはじめ、常温・長期保存が効き、普段からもおいしく食べ続けることができるものを日頃から多く用意しておくことの大切さをお話いただきました。
#たべぷろ での活動においても、災害時の食と栄養の問題を、口腔ケアとトイレの備えをセットにして体系的な啓発を充実させたいと思います。