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Netflix『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』を解読する

一番怖いものは?

「自分の脳が止まること」

この映像の冒頭、そんな印象的なインタビューで始まります。

今回は、Netflixの『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』というドキュメンタリーを扱います。
全3回に渡るこのシリーズは、彼がマイクロソフト退任後、何を思い、行動してきたのかをドキュメンタリー形式で紐解いています。キーワードは「トイレ」「ポリオ」「テラパワー」です。

中心となるのは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団です。この世界最大の慈善基金団体は、主に世界中の病気・貧困を無くすことを目的としています。その活動をしている中で、ビルは財団の方向性を大きく変えることになるある1つの新聞記事に出会います。

ある1つの新聞記事

"For Third World, Water Is Still a Deadly Drink"
“第3世界では水で死に至る”

自分の「周囲の世界」では既に解決済みだと思っていた病気で子どもが亡くなっている事実にビルは衝撃を受けます。そして下痢で亡くなる子どもの数を知り、ある疑問を持ちます。世界は大量にあるリソースを使って、撲滅策を講じているのか、と。

そして行動に移します。


普通、自分たちの周りでは既に解決済みである問題は、解決されている状態が当たり前になってしまい、目を向けることは難しいです。ビル自身も自分のいる世界では、下痢で子供を失う親など1人たりともあったことがないとインタビューで述べています。

それでも、ビルが1つの新聞記事に注目し、問題を捉え行動に移せたのは、彼の類いまれなる情報収集能力・社会問題解決への意志の強さの賜物と言えます。

幼い頃から、その非凡さは発揮されていたようで、そんな彼のことを、家族や友人は、「彼を学ぶことを楽しみ過ぎる人」「マルチプロセッサー」と表しています。
今でも、幅広いジャンルの本を大量に読むことで知られていますが、1時間で150ページ読み、その内容をほぼ覚えているそうです。
そんな感度の高さで、この新聞記事と出会い、下痢で亡くなる子どもの数を知ります。これはビルにとって、衝撃的なことだったのです。下水道とトイレ両方の問題の解決を目指します。

ビルと妻・メリンダが生み出すコラボレーション

彼は、仲間を募り、解決策を考えます。そして、下水道を使わないトイレを世に送り出し、衛星システムを根本的に変えようとします。

そんな中、印象に残ったシーンは、ビルの妻で、財団の共同議長であるメリンダが語る2人のコラボレーションによる取り組みです。

ビルは、メリンダを
She's totally my partner.(真のパートナー)と評し、財団では対等な立場として全幅の信頼を寄せています。

公衆衛生問題について、チームで話し合う場面では、メリンダは非常に印象的な内容を語っていました。

“ビルには優秀な技術者がいて、トイレの新技術を話し合っている。それは途上国を変える。でも、子どもとトイレに行く母親のことも考えなければ。
男性が壁の上から覗けたら使わないし、子連れで入れるスペースを確保すべき。”


メリンダは、この財団での話し合いにおいて自分自身はユーザー体験にフォーカスした視点で議論に参加するように意識していると述べています。

元々、マイクロソフトの社員であった彼女は、入社後すぐに頭角を現し数百人の部下を持つようになります。部門は消費者部門で、人の体験やユーザー体験を中心に考えていました。
その経験を活かし、より良い施策にするために欠かすことのできない「実際にユーザーが使う」視点をチームにもたらしていました。


この各々が自らの強みを相互理解し合い尊重しながら、強みを発揮し、問題解決に取り組むというスタイルは僕たちパナソニックに自らのチームを率いてフェローとして参画してくださっている松岡さんと重なる部分だと思います。


第三世界の公衆衛生問題に挑む

公衆衛生問題解決を実現させるためのアイディアを募る宣言は大きな話題となり、多くのアイディアが集まります。ただ、そのどれもが実現には数年かかるものでした。普及させるには、一台五百ドルにする必要があり、そうしなければ、7年と2億ドルが無駄になってしまうかもしれませんでした。
普及させられるだけの量産ができる製造会社が必要です。彼は諦めずに取り組み続けます。

そして、ついに下水から飲料水を生み出すテクノロジーを生み出すことに成功します。
ダカールでは今、オムニプロセッサーが汚泥の3分の1を処理し、飲料水を提供しています。


毎日起きていることは見過ごされる

ジャーナリズムでは、センセーショナルな話題に注目が集まり、日々の苦しみは見逃されがちです。また、生活の日々の改善も見逃されると、ビルが注目したあの新聞記事を書いた記者は述べています。

なぜなら、毎日起こることはニュースではないからです。

すぐ忘れられると思いながらも、それでも思いを持って書いた記者、そしてそれを逃さずに注目し捉えたビルゲイツ。

彼らの「行動」があったからこそ、社会は確実により良くなっています。


2018年11月、リクシルが財団の考案したトイレの量産を発表します。

世界中の子供達を平等にしたい

ビルのこの思いは毎日少しずつ形となっています。


この映像の中で、自分の弱点は?と聞かれて、

革新ベースの事業だけが僕が貢献できるところ
なんでもリスクの限界を超えるにはリーダーが率先しなければいけない。

と述べています。彼はこれからも社会にどう貢献できるかを考え、率先し続けます。


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