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詩集:どこにもいけない

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行き場もなく日々わだかまる言葉達は、詩の中以外はどこにも行けない
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#詩人

詩:黄色い朝

雨粒が爆ぜたら未分化な黄色い光が広がって黄ばんだ朝がやってくる

広がった光が止めても止めても押し寄せてきて
隠れても隠れても気づいたら後ろにいるから
もうどこにもいけなくなってしまって灰色の海に浮かんでいるような朝、朝

始まりを聴きながら緑色のまどろみの中に墜落するから
全部溶けてなくなるよ、ぜんぶ、ぜんぶ
だからそれまでに私に追いついて

すべてがなくなってこの冷えた土の上が一体どこだか分か

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詩:青い公園

美しくぬかるむ泥の上

吸い込まれる革の靴

青いピーコートひるがえり

半分だけの白い月

水に沈むニレ科のけやき

旋回するひくい鳥

その低空のさざめきを

ウォークマン、聴きながら見る

詩:その星は

光線のように降り注ぐ雨の中

内臓の溶ける音を聴けよ

埃が空気を切り裂く微かなヘルツ

反響し合う寄る辺ない夜に

見た事のない種類の鯨を見よ

深刻な場所としての木星の海では

計り知れない粘土の風がすべてを平らにしていて

大嫌いな瞬間の基軸の中で

ゼリーのような命が揺れている

全てが透明な植物性プランクトンのようになって

今、精巧なステンドグラスの怪獣が

こなごなになるようなその音

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