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Fish in the tank

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私たちは他者との関係性の中で一生を過ごしている。 縦(自分)×横(他人)×高さ(お互いの関係性)の分だけの水槽の中を泳ぐ魚だ。
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2017年11月の記事一覧

Fish in the tank、その後(1)

Fish in the tank、その後(1)

ゼミの教授が死んだという訃報が流れたのは四人が流れ星を見た次の日の朝の事で、四人は何度かお互いに連絡を取り合った後、通夜の翌日に行われるという告別式に参列する事を決めた。

……本当に、何が起きるか分かったもんじゃないな。

 美雪はそう思いながら、鏡の前に立って、古い箪笥の匂いがすっかり染みついてしまった母親の喪服に袖を通してみた。

Fish in the tank、その後(2)

Fish in the tank、その後(2)

環状線沿いのとある駅で降り立つと、飛鳥は改札出口を抜けてすぐの電柱に「西田家式場」という案内看板がくくりつけられているのを見つけて、その案内に従いながらしばらくの間歩いているうちに、やがては目的地の建物が道路沿いに立っているのをすぐに見つける事ができた。

 葬儀場の建物は、傍目からみればそうだとは分からないくらいに近代的で広々とした造りになっていて、その入り口の付近で誰かと待ち合わせをしている喪

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Fish in the tank、その後(3)

Fish in the tank、その後(3)

「…でもさ、こういうのを運命っていうんだと思う」

式場のセレモニーホールに一人で座っている美雪を見つけると、居ても立ってもいられなくなった青柳は思わずそう声をかけた。

「…え?何の事?」

 いきなり話しかけられて驚いた美雪がそう聞き返してみると、青柳は自分の言いたい事をまとめるために一瞬目を伏せて、それから美雪とまっすぐ目を合わせると、葬儀場に来るまでに言おうと思っていた事を話し始めた。

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Fish in the tank、その後(終)

Fish in the tank、その後(終)

読経が終わった後に、葬儀社の司会で弔電が読まれ、最後に親族の焼香が終わると、僧侶が鈴を鳴らしながらゆっくりとした動きで祭壇を離れ、参列客の間をすり抜けるように移動すると、会場を去っていった。

――今はただ、在りし日の姿に思いを馳せながら、ご冥福をお祈りし、別れの時を迎えたいと存じます…。
 
そんなナレーションが終わると、教授の入った棺の中に真っ白な百合の花が所狭しと敷き詰められ、蓋が閉じられる

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