歌と、防災リュック

あれから10年、節目の年です、と、今年はこれまで以上に東日本大震災や被災地を取り上げる報道などを見聞きすることが多かった。10年前。あの時の光景はよく覚えているし、「あの瞬間自分はどこそこにいてね」「あなたはどこでどう過ごしてた?」というやりとりを、3月11日以降に会う人みんなと悉く交わしたものだった。そう思うと、このコロナ禍とも少し重なる部分がある。元気してた?最近何してる?って。

先月の夜に大きめの地震がきて、慌てて窓を開けたり家族と連絡を取ったり、Twitterを眺めたりして、なんだか心が落ち着かなくて寝付けなくて。一人暮らしをして随分経つのに、ずっと防災リュックを用意せずに過ごしてきたことをようやく反省して、家の中で役に立ちそうな物を見繕ってリュックに詰め込んで、スニーカーを枕元に置いて、その夜はどうにか深夜に眠りについた。

翌日には早速ネットで拾った一覧表を片手に、防災アイテムを改めて買い出しに行って、リュックの容量と重量とにらめっこ。自慢じゃないが私は荷造りが大の苦手だ。リュックでもスーツケースでも大きければ大きいほどあれもこれも詰め込んでしまうので、なぜかいつも両肩が重たいし、旅行の帰りはだいたいお土産がはみ出してる。そんな特技を自覚してからは、普段使いのリュックを買い換える時には敢えて今までより小さい物を選んだりもした。

話が逸れたけど、そんなこんなでやっとひと通りの防災アイテムをリュックに納めて。よく言う「自分に必要なもの」は、私にとって、これがあれば頑張れるって物のことだった。大事なものって案外単純だ。お顔の塗料がハゲかけてるアンパンマン、初めて行ったライブのグッズ、初めて見たお芝居のチケット、柑橘系のハンドクリーム、そして音楽。行き場を失っていた拾い物のiPod shuffleに、大好きな歌声を2GBぎりぎりまでここぞとばかりに詰め込んだ。選曲のテーマは「夜、不安を和らげてくれる歌」。アップテンポな曲よりも、スローで声色が穏やかでやさしい、そして何年もずっと聞いてきた、とにかく心が安らぐ歌を選んだ。

色々としんどかった中学時代、音楽に心を救われた。意地になって学校には休まず通ってたけど、ズタボロになって家に帰って、ラジオを聞く夜だけが毎日の楽しみだった。どこかのラジオ局でしゃべっている人の、その声しか知らないのに、なぜかその声を耳にするとすごく心が落ち着いた。日本のどこかにいる同世代のリスナーの悩み事や、音楽を、ラジオを通して一緒に聞いたりするのも、なんか楽しくて。私はたぶん、音楽とラジオがあれば、きっとこの先も大丈夫だと思う。元気にやっていける気がする。

3月11日に、目を閉じながらラジオドラマを聞いた。音という情報だけを届けてくれる、ラジオというメディアが私はすきです。目に見えないものに想いを巡らすことができる、考えるための余白をくれる、そんなラジオがすきです。だから早く手回しラジオも買わないと。有線のイヤホンも忘れずに。

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