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【イベントレポート】新卒社員の離職防止&パフォーマンスを上げる! 1on1ミーティング実践手法

こんにちは!株式会社タバネルの奥田です。

2020年3月に開催された『新卒社員の離職防止&パフォーマンスを上げる! 1on1ミーティング実践手法』セミナー(株式会社アックスコンサルティングさま主催)に登壇しました。

セミナーの模様を私の登壇部分を中心にレポートします。

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なぜ新卒社員は育たないのか?

「最近の新卒社員は3年で3割も離職する」
多くの企業の悩みの種である新卒の早期離職問題。最近の若者は・・・と嘆かれる方も多いのですが、実は3年3割は20年間ほとんど変化がありません。つまり、早期離職問題は最近の若者に限った話ではないのです。

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早期離職の原因と言われる「就活のミスマッチ問題」

アデコの2018年の調査によると、3年退職の理由1位は「自分の希望と業務内容のミスマッチ」となっています。2位以下についても、確かにミスマッチによるものが多いように見受けられます。

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この20年間で就活をめぐる環境は大きく変化しています。20年前にはほとんどなかったインターンは今や参加率が80%になっています。また、リクナビを中心とするWeb媒体も急成長し、リクナビだけで3万社が掲載されています。同時にSNSの普及も顕著です。

つまり、この20年間で会社を知る機会は大幅に増加しています。しかしながら、3年3割離職には変化がありません。

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就活ミスマッチの問題も当然あるでしょう。しかしながら、ミスマッチを減らす機会、情報が増えているにも関わらず、早期離職が変わらない状況には別の大きな問題が潜んでいると考えた方が妥当でしょう。

つまり、学生から社会人の間に構造的な深い溝があるのです。
就活ミスマッチ問題の解消も大事ですが、せっかく入社した人をこの深い溝で溺れさせないことが何より大切でしょう。

1on1ミーティングとは?

この深い溝に溺れさせない有効な解決策の一つが、今回のテーマ「1on1ミーティング」になります。

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1on1ミーティングとは、わざわざ時間を決めて高頻度&定期的に上司と部下が1対1で面談することです。業績評価を伝えるための面談とは違い、「部下の成長」を目的に行われます。

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仕事における成長の要因は、直接経験が70%と言われています。その他の要因は他者のアドバイスや本・研修によるものです。
仕事をされている方なら、経験から学び成長することの割合が大部分を占めることは、感覚的にも納得できるものではないでしょうか?

一方で学生時代、特に学業の成績を思い返してみてください。授業や参考書、問題集が成長の主要因ではなかったでしょうか?

この成長要因が学生と社会人で違うことが、深い溝の一つと言えるでしょう。

それでは、もう一つの溝についても解説しましょう。

「好きなことを仕事にしたい」
誰しも一度は考えることかと思います。

しかしながら、「科学的な適職」は「好きなことを仕事にする」ことの危険性に言及しています。

実は「好きなことを仕事にする」よりも「仕事は続けるうちに好きになる」と思っている人の方が、幸福度などで高い結果となるとの調査結果があるそうです。

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実際にはどんな仕事も好きになれない面があるので、好きなことを仕事にしてしまうと、本当に好きなのだろうか?と疑念が生まれるためだそうです。

もちろん好きな仕事について、ずっと好きなこともあるでしょう。また必ずしも好きでない仕事についても、続けるうちに好きになることもあります。一方で、仕事経験を通じて仕事の好きな部分を見出せず、好きになれずに退職していくことが、本人、会社ともに最も不幸でしょう。

つまり、学生から就職して、仕事経験を通じて「仕事が好きになる」までの間にある深い溝に溺れさせないことが大切なのです。

仕事経験を通じて「成長」と「好き」をいかに促進できるか?が、早期退職を防ぐ上で大きなポイントになります。

その一つのヒントが、デービッド・コルブの「経験学習モデル」にあります。

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仕事で経験したことをいかに学習し、成長につなげるか?を示すモデルになります。

まず、その人自身が具体的に経験をします。その経験を自分自身でを多様な観点から振り返り、内省します。その内省について、別の他の状況でも応用できる教訓、気づきとして、概念化します。そして、新しい状況下で実際に自ら進んで試して、実践します。

このサイクルを回すことで、仕事経験を成長につなげることができます。しかしながら、このサイクルを一人で回すことは難しいです。そこで内省から概念化に至るステップを上司とともに回すために、1on1ミーティングを行います。

このサイクルは仕事を好きになる上でも大切です。

みなさんは、どのようなタイミング、きっかけで仕事を好きになるでしょうか?

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お客様や上司に認められる、周囲の仲間に恵まれる、などもあれば、成功体験や成長時間を通じて好きになることもあるでしょう。

成功体験や成長実感を得るには、成功や成長の基準、つまり明確な目標が必要です。そして、その目標に向かうためには、適切な内省やフィードバックを行うこと、つまり適切な1on1ミーティングが重要になります。

1on1ミーティングどう進めればよいのか?

1on1ミーティングを進める上で、改めて目的を確認しましょう。

先ほど「部下の成長のため」と述べました。これが独り歩きして、「上司による部下の成長のため」であると曲解されることが多いです。そして、1on1ミーティングがうまく機能しないときには、上司のコーチングスキル不足など上司の責任と考えられることが多いです。

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しかしながら、1on1ミーティングは上司、部下の2者で行われるので、両者で有効活用することが大切です。

つまり、上司にとっては「上司による部下の成長のための時間」、部下にとっては「部下による自分の成長のための時間」との認識がスタートラインになければいけません。

上司のコーチングスキルについて言及されることがよくあります。たしかにコーチングスキルはある方がよいでしょう。しかしながら、ただでさえ多くのスキルと多忙な業務を求められる上司にコーチングスキルがなければ機能しないような仕組みであれば、すべての上司部下に導入すること自体に無理があるでしょう。

部下の成長を考える際に大切なことは、経験学習モデルを回すことです。中でも部下が内省をしっかり行うことは重要です。

「そうは言うけど、内省をしない部下が多いんですよ・・・」
と言うのが、正直な感想ではないでしょうか?

いかに部下に内省をさせるよう意識を変えさせるか?と考えてはいけません。内省をできる、しなければならない仕組みを用意することが肝心です。

内省を仕組み化するためのポイントは、1on1ミーティングに向けて「部下によるアジェンダ」を準備することです。

1on1ミーティングに限らず、会議にはアジェンダがあった方が建設的な議論ができます。

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ただし、1on1ミーティングのアジェンダ作成に多くの時間をかけるわけにはいきません。

そこでオススメしているのがYWTTです。これは一般的に良く知られるYWT(やった、わかった、つぎにやる)にもう一つTを加えたものです。

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部下が話したい、相談したいと思ったテーマについて、これまでにやったこと、わかったこと、つぎにやりたいことに加え、たすけてほしい(T)を事前にアジェンダとして準備します。

YWTTを考えることで、部下自身で内省できるようになる上、「たすけてほしい」まで書くことで相談がしやすくなります。同時に自分の成長にとっての障害、ハードルを認識する機会になります。

上司にとってもYWTTによるアジェンダは、適切な部下の支援に大いに役立ちます。アジェンダもなく、1on1ミーティングの場でいきなり部下に相談をされると、上司は瞬発力で回答するため、回答の質が下がります。

また、アジェンダに1on1ミーティングで話した内容を追記するだけで、ミーティングメモとして記録できます。1on1ミーティングの記録を残すことで、部下は随時振り返りができます。また、上司は部下と話した内容を全て記憶することは不可能なため、必ずメモを残すことが重要です。

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1on1ミーティングはポジティブ➡ネガティブ➡ポジティブのサンドイッチで進めることも忘れないようにしましょう。

上司は部下にとって厳しい、耳の痛いことも伝えなければいけません。このようなネガティブな内容を伝えるだけで終わることのないように、特に終わりは期待や支援を伝え、前向きな気持ちで終わりましょう。

また、部下は忙しい上司が「自分の成長のため」に時間を割いてもらい、耳の痛いことも含めて話をしてくれたことに感謝の意を示すことが大切です。

そして、1on1ミーティングを導入するにあたっては、上司だけでなく部下にも教育を行いましょう。多くの会社で上司に教育を行い、部下に対する教育は上司任せになっています。残念ながら、上司もまだよく分かっていない1on1ミーティングを部下に教育させても、部下には十分には伝わりません。

部下が自分の成長のために1on1ミーティングを行うこと、そのためには内省が重要なことを理解することこそが、部下が仕事経験を通じて成長し好きになるためには不可欠です。

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最後にここまでの重要ポイントを振り返って、第一部は終了となりました。

こんな時どうする?ケーススタディ

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続いて、第二部では、ケーススタディと参加者からの質疑応答について、株式会社アックスコンサルティングの佃さんとの対談形式で進めました。

アックスコンサルティングでは、「チャレンジ面談」と称して1on1ミーティングを以前から取り入れていました。佃さんは、仕事経験を通じた「成長」と「好き」を促進する目的にしている名前だと、改めて実感されたそうです。
また、1on1ミーティングのログを残すことの重要性については、私も佃さんも強調したポイントになります。

多くの質問をいただきましたが、そのうちいくつかを抜粋して紹介します。

Q.1on1ミーティングを一部の部門から導入して良いでしょうか?

はい、特に本格導入を推進される人事部門が先行導入することはオススメです。
なぜなら、導入を進める際に、実際に導入して良かった点、苦労した点を実体験した上で他の部門に伝えることができるからです。

Q.1on1ミーティング導入に反発する年長者にはどのように対応したら良いでしょうか?

まず、年長者自身にもその上司が1on1ミーティングをすることです。1on1ミーティングを導入する際に、ミドルマネージャーと部下は実施するが、幹部層では実施しない会社もあります。しかし、それではやはりダメです。

年長者も1on1ミーティングを受ける側として経験することで、その価値、効果を実感してもらいましょう。

また、1on1ミーティングに限らず全員が納得して新しい施策を実施することは難しいです。導入前に教育をし導入後も改善することを前提に、決まりとして毅然と実施してもらうようにしましょう。経験する前の不安は、経験する中で解消できることも多いので、多少の強引さも重要です。

Q.1on1ミーティングでは、どんなテーマの話をすれば良いでしょうか?現場で迷いが生じそうです。

部下が成長のために必要なこと、不安に感じていることであればどんなテーマでも良いでしょう。

業務の進捗管理は1on1ミーティングのテーマにすべきでない、との意見もありますが、私はテーマにして良いと思います。身近な進捗管理に不安があるのに、遠くのキャリアのことをテーマにしましょう、と言っても部下の成長にはつながらないでしょう。別の機会で進捗管理を十分にフォローする場があればテーマにする必要はないのでしょうが、多くの会社ではそんなことはないと思います。

ただし、常に身近なテーマしか持ってこない部下には、時には長期的なテーマを上司が投げかけるなどの工夫をされると良いでしょう。

また、1on1ミーティング導入直後は、人事部など推進部門でいくつかテーマを例示することも有効です。テーマ選びで悩んで進まないよりも、まずは1on1ミーティングに慣れてもらうことを優先しましょう。慣れていくうちに、それぞれの状況にあったテーマ選びができるようになっていきます。

Q.1on1ミーティングのメモはどのように記録すれば良いでしょうか?

記録に残り、あとで検索できるのであればどのような形でも大丈夫です。私のクライアントでは、Googleドキュメントやチャットツールを使っている例もあります。

とは言え、従業員数が多くなると記録の残せるシステムを導入されると良いかと思います。その際には、エンゲージメントサーベイや目標管理などの仕組みと紐づいて運用できるシステムが良いでしょう。なぜなら、1on1ミーティングが、サーベイ結果や目標管理に基づく内容の時に運用しやすいからです。また、1on1ミーティング、サーベイ、目標管理・・・とそれぞれの役割で別のシステムを使うと、現場に負担がかかりますので、一つのシステムで運用できると良いでしょう。

最後に

昨今の状況を踏まえて、換気、消毒などの対策はもちろん、参加者同士のディスカッションなしの形式でセミナーを実施いたしました。

質疑応答はSlidoを使って行いましたが、参加者の皆さんから数多くの質問をいただき、真剣さがひしひしと伝わってきました。

参加者の皆さま、株式会社アックスコンサルティングの皆さま、ありがとうございました。

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