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日本企業のOKR導入事例をまとめました

こんにちは、株式会社タバネルの奥田です。

OKRの導入を検討している、もしくはすでに導入しているがもっと活用したいとお考えの方は、他社の導入事例を参考にしたいとお考えではないでしょうか?

たくさんのOKR導入事例がネット上にはあふれていますが、みなさんの参考になる記事をリンクとともに、まとめてみました。

どの記事からも多くの学びがありますが、時間のない方は以下を参考に興味のある記事をお読みください。(ちなみに、随時アップデートする予定です!)

※記事の内容は、記載当時のものですので現時点の状況、運用方法などとは異なる場合があります。

メルカリ:OKRの運用、活用方法を詳しく知りたい方

日本企業の中では、かなり早くOKRを導入したメルカリ。なかでも導入、活用の参考になる記事を2つ選びました。

OKRを実践して導き出されたOKRが機能するための条件について詳しく語られています。特に導入済みで活用に悩んでいるマネージャー、リーダーに参考になるでしょう。

(下図は記事より転載)

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OKRは「ストレッチな目標を掲げる」というのがひとつコンセプトとしてあります。なので、月並みな目標を設定しない、向上心や成長意欲といったものが必要です。
そのためには、失敗あるいは成功してから「なんでそうなったのか」と問いかけて、常に学びを得に行く姿勢が大事になってきます。

メンバー、チームがいかに学べる状態をOKRを活用して促進しなければならないか、そして、なぜそれが重要なのか、がよく分かります。

2本目は、現場でのOKR運用方法についての記事。スプレッドシートの画像も含めて、かなり詳しく書かれています。エンジニアチームでの運用方法ではありますが、メルカリでの運用の実態を知ることができます。

(下図は記事より転載)

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チーム OKR を開始して3期目になりますが徐々に進化しており、トラッキングを記録して期中の変化を追うような仕組みができたり、前期にどの程度の Objective を消化できたかを参考に PMやチーム外に働きかけてスケジュールを調整するといった試みも始まっており、運用改善のためという枠を超えて、チームでより一体となって仕事を進め安定性を高めるために役立つようになっています。

OKRは会社ごとに独自に進化していくことを、実経験から語っています。そして、OKRだけではなくバックログについても詳しく語られているので、関心のある方は要チェックです。

freee:OKR導入推進をする方、設定のポイントを知りたい方

クラウド会計ソフトを展開するfreeeも早くからOKRを導入している企業の一つです。

まずは、OKR導入、推進を担当する方に非常に参考になる記事OKRを紹介します。

私のコンサルティング現場でも実感するのですが、OKRの活用が上手く早く進むためには推進チームの本気度が重要です。

同社ではOKRの活用を促進するために社内横断の有志で集まった「OKR進め隊」があります。

集まるメンバーは「OKRが難しいのは確かだが、とても良いものだ」と心から信じていて、皆に「それを一緒に使えるようになっていこう」という想いを持っています。

各自のチームでの事例紹介、資料化して共有、1on1などのディスカッションなど様々な活動を通して、OKRの活用を促進しています。

そして、OKRを作るポイントについて、このように語っています。

OKRを作るときに「ユーザーの目線を取り入れること」は大事だなとつくづく思っています。よく「ワクワク感が必要」だとか、「定量化した方がいい」とかも言われていますが、それはそれで正しいとは思います。ただ、教科書通りに「何月何日までに何個の機能を作ればいい」としてしまうと、ワクワク感もないしタスクリストに近くなります。

「アウトプットではなくアウトカム」で設定とも言われますが、もっと引き寄せて「ユーザー目線」の入ったワクワク感が必要と考えると、現場での理解度も上がりそうですね。

記事で言及されているガイドラインの抜粋版が公開されています。抜粋版とはいえ、とても貴重な資料です。

また、タバネルのセミナーに同社ムーブメント研究所の西村尚久さまをお招きして、詳しくお話を伺いしました。

同社はありたい組織の姿を「ムーブメント型チーム」として、社会運動のような組織を目指しています。

「自律性」がありながらもバラバラではなく「一体感」があり、ミッションから「一貫性」がある組織を実現できれば、ムーブメントとなり、イノベーションが起こりやすい組織となるのではないか、という仮説を持って日々取り組んでいます。そして、こちらの考え方に対してももOKRはマッチしていると考えています。

またOKRと人事評価の関係についても詳しくお話しいただきました。

OKRは人事評価のためのツールではないものの、同社の人事評価「インパクトレビュー」ではOKRの情報を参照します。図の通り、評価対象の成果についてはOKRを加味しています。どのようなKRであるかも判断軸となっています。

達成度重視のKRについては達成度をもとに評価しますし、新規事業など挑戦重視のKRについては達成度はあまり関係なく絶対値をもとに振り返ります。

このようにfreeeでは会社のありたい姿、マネジメントなどに合わせてOKRを自社流に進化させて活用しています。

Sansan:運用後の状況、MBOとの違いを知りたい方

クラウド名刺管理サービスを運用するSansanも早くからOKRを導入しています。導入から1年後の2017年と5年後の2021年の2つの記事をご紹介します。

日本では一般的な目標管理手法のMBOの限界を感じて、OKR導入に踏み切っっています。

MBOでは、営業現場は良くても、なかなかエンジニアの理解を得ることが難しかったんです。
「何を求められているのかわからない」「プロダクトの方向性は?」「これをやっている意味は何なのか」と言った声が上がってくるようになり、コミュニケーションの難しさをすごく感じていました。
その点、OKRを使うことで、「会社の方針はこれ、それを受けた部署の方針はこれ。その中で評価していくから、この範囲の中で各自がオリジナリティを出そう」といった形で明確にできるんですね。
そうすると、やっぱりみんな仕事に対して「やる意義」を感じられるようになると思います。

そして導入、運用を進める中で進化している状況については、私も登壇しているこちらの記事をご紹介しています。

導入後は個人単位までOKRを設定していたこともあるそうですが、現在ではグループ単位のOKRまで設定し、個人単位では設定していないそうです。

事業をドライブさせるというOKR導入の目的に立ち返り、評価とは切り分けて整理をして、OKRの設定はグループ単位までとしました。

ちなみに個人評価は、チームへの貢献度を自己申告したうえで360度評価に基づき決めています。

そのうえで、マネージャーの力が不充分だと、OKRが機能不全に陥るという質問に対して、このように回答しています。

OKRを進めるにあたっては、皆で議論するという場面が必ずあります。なのでそういう場を作れない、勝手に決めて進めてしまうマネージャーは厳しいと思います。

GMOペパボ:人事部門の方、OKR導入プロセスを知りたい方

個人向けインターネットサービスを提供するGMOペパボ。人事部門で自分たちでテスト導入をしたうえで、全社導入まで推進した全容が、詳細に書かれた記事をご紹介します。(※当社は導入のご支援に関わっております。)

同社では人事制度を刷新し、個人の目標設定が任意に変更になりました。そのような状況下でOKRの検討、人事部門でのテスト導入が始まりました。実際にどのようなOKRを競ってしたのか、そして四半期ごとにOKRの内容、運用含め、チームでどのような振り返りをしたのか、が赤裸々に書かれています。
(下図は記事より転載)

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そして、全社導入の準備としてのチームOKRを設定するワークショップを実施しています。なお、運用方法については人事部門がすべてを決めるのではなく、各部門判断に任せています。例えば、個人単位でのOKRの設定は各部門判断にする、運用ツールはスプレッドシートやNotionなど使いやすいものを選ぶなどです。

運用においてOKRはあくまで目標設定・管理のための手法であることから、その達成度は評価へ反映させないことにしました。また、個人単位でのOKR設定は、組織の規模や動き方によって必要性が変わってくるため、各部門で必要だと判断した場合に設定することにしました。

また各部門からの要望に基づき、各チームのOKR事例を共有する勉強会「OKR Talk」を開催しています。

OKR導入後の状況について、各部門長へのヒアリングを行っており、更なる活用を目指していることについても詳しく語られているので、参考になるかと思います。
(下図は記事より転載)

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なお、両記事に登場する船橋さん、太田さんには今回の導入支援で大変お世話になりました。当社ホームページでのインタビュー、およびHRカンファレンスで登壇いただいていますので、こちらもお読みいただければ嬉しいです。

フィードフォース:人事部門の方、OKRと人事評価にお悩みの方

マーケティング支援サービスを開発・提供しているフィードフォース。OKRは2016年から導入し、改善を続けているからこその知見の詰まった記事をご紹介します。

長年OKRを導入している中で、試行錯誤の中での失敗談が言及されているので、参考になるでしょう。

・個人のKR・KAを厳密に設定しすぎていた
・評価基準と直接連動させていた

そしてOKR導入で最も大切なこととして、継続的な改善を上げています。

OKR を導入する上で最も大切なことは、OKR を自社でどのように運用すればいいのかを考え、継続的に改善することです。

さて、OKR導入時に多くの人事担当者が頭を悩ます人事評価。先述の通り、同社も当初の失敗談として、OKRと評価基準と直接連動させていたことをあげています。

同社では定期評価を実施しないノーレーティングを導入しています。

評価制度の目的は、会社と社員の成長、ベクトル合わせであると定義し、その目的に関係ないランク付け、順位づけなどは不要でシンプルな制度になっています。

「昇級すれば給料が上がる」「昇級するには等級審査を受ける」というシンプルで分かりやすい制度設計

それでは、OKRについてはどのように考えているのでしょうか。

OKRはチームで高いパフォーマンスを上げるためのフレームワークであり、公平な評価を行うためのものではないので、評価制度と無理に連動させないほうがうまくいきます(フィードフォースの場合は昇級基準の参考にはしますが直接連動はさせてません)。

日本ユニスト:中小、ベンチャー企業の方

ホテル開発・各種不動産開発を展開している日本ユニスト。ここまで大手企業の導入事例が多かったのですが、中小、ベンチャー企業の方にお読みいただきたい記事をご紹介します。(※当社は導入のご支援に関わっております。)

OKR導入の背景に、組織マネジメントで試行錯誤がうかがえます。

様々な組織マネジメントの仕組み等を導入してみました。ただ、それぞれ概念としては使えるもののフレームワークとして定着するには至りませんでした。
(中略)従業員レベルまで課題を落とし込むことが難しく、定着、活用するまでには至りませんでした。

OKR導入時のワークショップの進め方含め、導入当初の工夫が語られています。さらに、ウィンセッションについて導入当初から効果を発揮していることが分かります。

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Winセッションは自分をすごく意識するようになりました。
自分の承認欲求みたいな部分がくすぐられるんですよね。
(中略)だから「週末すごくいい形で終われている」とみんなからもコメントをもらっています。

そして、導入の背景にある組織マネジメントの課題について、OKRの効果をこのように語っています。

OKRを導入したことで、マネジメント力が上がったという手ごたえを非常に感じています。OKRによって組織と個人の目標が明確になり、それを全員で共有したことで、組織と個人がきちんとマネジメントを行わなければいけないという意識になったのは、この3か月位で大きく変化した点だと思います。

花王:大手非IT企業の方、人材・組織活性化を目指したい方

花王グループでは中期経営計画「K25」の柱の1つ「社員活力の活性化」を掲げ、その代表的な取り組みとして、OKRを全面導入しました。

K25の方針は「①持続的社会に欠かせない企業になる」、「②投資して強くなる事業への変革」、「③社員活力の最大化」で構成されています。

「③社員活力の最大化」は、活動生産性2倍を目指し、その代表がOKR全面導入です。

OKR導入の背景として、統合レポート2021では従来のKPIについての弊害が言及されています。

https://www.kao.com/jp/corporate/investor-relations/library/reports/

従来のKPI( Key Performance Indicator )は、立てた目標の100%達成をめざすことを前提としていたため、社員は到達し得る範囲内の現実的な最終目標を定めがちで、組織として革新的な成果を挙げることが難しいしくみとなっていました。

そこで、社員の挑戦を引き出し、生産性を最大化することを目指しOKRを導入しました。

これまでKPIベースで100%達成を求めてきた人事評価については、今後はOKRと緩やかに連携させます。

今後の人事評価では、OKRで書かれている目標についてどのようなチャレンジをしたのかといったプロセスや、OKRに取り組む中で具体的に出来上がった成果がどれだけ事業に貢献したのか、といった形で、全体的に見ていきます。また当然、OKRには書き切れない業務活動もたくさんありますから、それらも含めて総合的に評価する形になります

統合レポートによると、各社員が「ESG」「Business 」「One team and my dream」の3つの視点でOKRを考えるとのことですが、同記事内ではこのように述べています。

あまり細かく説明しすぎないように心がけています。(各要素を説明しすぎて)何か特定の枠にはめるようなことになってしまうと、OKRを導入した本来の狙いが伝わりにくくなるためです。
例えば事業貢献については、「経営を支えているのは社員の皆さん一人ひとりです、改めてご自身を振り返りながら、どのように事業に貢献をしていきたいのか、といった観点から書いてください」といった具合で説明しています。

また、花王の沢田会長の対談では、OKR導入が各個人のやりたいこと、挑戦に重きを置いていることが分かります。

人事評価では21年から、社員自らが目標を設定し、そのプロセスを評価するシステム『OKR』を取り入れました。各個人が何をやりたいか目標を考え、それに向かい挑戦していく。花王は少しチャレンジが少なくなっている。こういう時は一歩ひいてみる。今見えている部分だけで挑戦しようとすると世界が狭くなります

花王のOKRは、これだけの大企業でありながら導入目的、目指す姿が明確になっており、花王流OKRとして練られている印象です。

グロービス・デジタル・プラットフォーム:対話、リモートワーク活性化の目指したい方

社会人MBA、法人向け事業など幅広く事業を展開しているグロービス。
グロービス・デジタル・プラットフォーム(以下、GDP)は、テクノロジーを活用した教育サービスを開発・提供しています。

ボトムアップとトップダウンを組み合わせた目標管理を模索する中、OKRと出会い、まずは10人ほどのチームでテスト導入し、最終的に組織全体への導入を図っています。

OKRの運用では対話を重視し、ガイドラインを設け、高頻度のコミュニケーションが設計されています。、

ガイドラインで、チェックイン、ウィンセッションを推奨していますので、多くのチームが高頻度で実施していると思います。また進捗共有会をチーム内、外のメンバーを呼んで、実施しているところもあります。

個人的には、OKRの根本には対話の重要性があると思っています。OKRの思想は、リーダー同士、ボトムとトップ、チーム内の対話にこそあると思います。

こうして導入、運用されているOKRは、リモートワークでも効果を発揮しています。実際にリモートワークでOKRをチームで設定、運用しているGDPのメンバーの視点で書かれたnote記事からOKRの効果についてご紹介します。

OKR設定では各チームの目標・役割を明確にしていくので、個人の役割だけではなく、チームとして「何を求められているのか」を考えるきっかけができます。個人の役割を超えた議論がなされることで、仕事の視座があがり、また個人の目標を超えたゴールを意識し仕事をするようになってきたと感じています。

リモートワークにおいては、他者とのコミュニケーションが希薄になるため、個人のタスクや目標に意識が向くことや他人のことが分からないため協力が生まれないなどの課題も多いですが、OKRが解決策の一つになっているようです。

さらに、リモートワーク下では周りが見えないため個人の仕事に集中しがちですが、このOKRのおかげで、チームとして求められている役割を常に意識し、業務の優先順位を考え判断する習慣がつきました。

大日本印刷:大手非IT企業の方、独自の人事制度との関係性を築きたい方

大日本印刷(以下、DNP)では人事制度改革の一環として、2021年4月より「DNP価値目標制度(DVO:DNP Value Objectives)」をスタートしました。

DNPでは、2019年より個人MBO制度を全従業員を対象に導入していましたた。制度の目的を評価と切り離し、マネジメントと人材育成であることの浸透を図りました。

米国で目標管理評価制度が生まれたときはマネジメントツールだったのですが、日本では評価の面ばかりがクローズアップされ、成果主義の手法のように扱われるようになってしまいました。

しかしながら、コロナ禍で「成果、プロセスが見えづらい」「チームの連携がとりにくい」といった課題が浮上。また、網羅的な目標設定になり取り組みが中途半端になるといった問題を解消するために制度を見直しました。

DVOは、個人MBO制度に「OKR(Objectives & Key Results)」的な要素を組み入れて改訂し、マネジメントと人材育成を目的とする仕組みとして運用することにしました。
DVO導入のねらいは「成果・プロセスの見える化」「チーム意識の醸成」「自律的キャリア支援」の3つです。

従来のMBO制度からの変更点は大きく3つです。
①ボトムアップでのチーム目標設定
②運用サイクルを半年から四半期へ
③重点目標を一つに絞り込む

また、運用面では新しいマネジメントスタイルを目指している。
①毎週のチームミーティングでの成果・プロセスの見える化
②1on1ミーティングでの部下育成、信頼構築、キャリア支援。

大企業でのOKR導入では、なかなか運用が定着しないことが多いが、チームミーティングと1on1ミーティングを義務とはしていないらしいがガイドしているようです。

DVOと人事考課の関係は、連動するが直結しないようにしています。

最後に

各社の導入事例をお読みいただき、いかがだったでしょうか。

OKR導入事例記事の共通点は、各社試行錯誤の中、その会社流OKRを作り上げていることではないでしょうか。OKRは万能で普遍でもありません。各社の目指す姿、課題に合わせて、導入、ブラッシュアップが大切になります。

自社でのOKR導入や活用にお悩みの方は、ぜひご相談ください。

(OKR解説動画)

OKRの基本を15分でわかる動画にまとめました。
・これまでの目標管理
・OKRの基本を理解する
・成功するOKR導入ステップ
に分けて、解説しています。

(ダウンロード資料)

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