知識や思考だけでなく行動までを変えてくれた「良い本」を紹介する
実は子供の頃から数えても読んだ小説は10冊にも満たない。
一方、ビジネス書はかなり多く読んできた方だと思う。月に少なくとも10冊以上と乱読気味に読んでいた時期もあるが、今は月に数冊程度となり、読み方も精読を心掛けるようになっている。
思い返すと乱読気味の時期は、私の「良い本」の定義は、いかに知らない情報や思考を得ることができる本、もしくは既知の情報、思考をさらに好きにさせてくれる本か、であった。
しかしながら、「良い本」と思えるものは変わった。
一言で言えば、自分の「行動」を変えてくれた、「行動」を後押ししてくれた本。つまり思考や知識だけでなく「行動」まで変えてくれた本が、今の「良い本」だ。もちろん今でも情報収集のために本は読むが、その中でも行動につながる何か?を見つけようと心掛けている(インプット目的で読むことももちろんあります)。
そこで、この私流の定義に沿って、職種、経験などに関わらず多くの人に役に立つであろう「良い本」を3冊を紹介します。
「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ
鈴木 博毅 (著)ダイヤモンド社 (2012/4/6)
本書のベースとなっている『失敗の本質』は大東亜戦争の敗因は、日本という組織が持つ構造的・精神的な特性であることを明らかにしており、ビジネスにおいてもヒントとなる点が多い本として知られています。一方、非常に丁寧な分析が積み上げられていることから、難解であることは否めません。そこで、本書は「超」入門として、エッセンスをビジネスに活かせるように分かりやすく再編してくれている。
私はこの当時、倒産を経験し、転職先でマーケティング戦略を立てる責任者として「戦略」について改めて見つめなおしていた。戦略コンサルタント、経営者を経たにも関わらず、「戦略」に思い悩んでいたのです。
そんな時期に、知識を再インプットする一環として読みやすそうな本も読もうと思って本書を手に取りました。確かに読みやすい本ではあったのですが、多くのポイントが私を悩みから解放してくれ、戦略の立案方法、組織への落とし込み方法が明らかに変わりました。また、倒産に至った自分の過ちを構造的に理解できたことも、行動変化に繋がりました。
私の行動変化に繋がった多くのポイントのうち何点かをご紹介しましょう。
・戦略の失敗は戦術では補えない
・戦略とは追いかける指標である
・体験的学習では勝った理由はわからない
・成功体験が勝利を妨げる
・現場を活性化する仕組みの必要性
・見たくない問題を解決する覚悟の強さ
実際に自分が戦略を立案し、組織を動かし実行するために、本質的に何を考えなければいけないか、何がなければ勝てないのか、を平易ながらも力強く説明してくれています。
特にこのフレーズは拙著『本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR』で引用しています。
勝利につながる「指標」をいかに選ぶかが戦略である。性能面や価格で一時的に勝利しても、より有利な指標が現れれば最終的な勝利にはつながらない。
そして、これらのポイントは、現在の仕事であるOKR(Objectives and Key Results)をコンサルテイングする上でも大いに役立っています。
アイデアの作り方
ジェームス W.ヤング (著)竹内 均 (解説)今井 茂雄 (翻訳) CCCメディアハウス (1988/4/8)
いつ初めて読んだかが思い出せないくらい前に読んだが、今でも何度も繰り返し読み返しています。
単行本サイズで100ページ強の非常に薄い本であり、1988年出版でありながら未だに売れ続けている誰もが認める名著です。この本の内容はタイトルどおり「アイデアのつくり方」であり、その内容が有効であることは長年売れ続けていることが何よりの証拠でしょう。
本書のポイントは大きく2つあります。
一つ目はアイデアの定義です。
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない。
二つ目はアイデアを作る才能の高め方です。
新しい組み合わせを作り出す才能は事物の関連性をみつけだす才能によって高められる
この二つを元にはアイデアを作るステップの定義があり、これが秀逸だと感じています。要約すると以下の5つのステップとなります。
①データ収集
②データの咀嚼
③データの組み合わせ
④発見した!の瞬間
⑤アイデアのチェック
どんな仕事でも新しいアイデアが必要であったが、意識せずにしていたことがこの本によって概念としてのアイデアづくりを理解できたことで、その後の行動は非常に楽にできるようになった。
世にたくさんの発想法、思考法が増えようとも、このステップを補強、換言するものでしかない、とすら私は感じています。
ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略
フランセス・フレイ (著), アン・モリス (著), 池村千秋 (翻訳) 日経BP (2013/10/3)
この本は頭では分かっていたが行動になかなか移せなかったことを明確に示してくれました。簡潔に言えば「何をしないか?」を明確に決めることができる後押しをしてくれたのです。
私は消費者と直接接点でサービスを行う多店舗展開企業での経験が長いが、おもてなし精神の高い優れたスタッフが当然のよう最高のサービスを提供することを前提にサービスモデルを設計してしまっていました。「何をするか?」と同時に「何をしないか?」を決めることが重要であることは頭では分かっていても、お客様の求める「最高のサービス」を提供することが大切で「何をしないか?」を決めることができていませんでした。そんなときに出会ったのが本書です。
一部の優秀なスタッフだけでなく、ごく普通のスタッフが、日常的に良質なサービスを提供し続けられるようなサービスモデル
このようなサービスモデルを設計するために本書では、実例もまじえて4つの原則を掲げています。
原則1:「すべてが最高」には無理がある
原則2:誰かがコストを負担しなくてはならない
原則3:それはスタッフの責任ではない!
原則4:顧客をマネジメントせよ
前の二冊に比べると、この本の一般的な認知度は高くないと思われますが、特に顧客接点でのサービスが重要な企業の人(自分が直接サービスに携わっていなくとも)には一読することをおすすめしたい。
共通点は平易ながらも本質を力強く表現
最初にも書いたように多くのビジネス本を読んできたが、いざおすすめの本を選ぶとなると、かなり迷いがありました。自分流の「良い本」を定義し、その中からできるだけ多くのビジネスパーソンに役に立つという観点でこの3冊を選びました。
あらためてこの3冊について考えると、どの本も比較的に平易な表現で書かれた読みやすい本です。しかしながら、強烈で行動を変えてくれる強いメッセージ性があったと私は感じました。
ご興味ある方はぜひお読みいただきたいです。