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適正を見抜く従業員採用面接


飲食店を開業する際、常にオーナーの自分一人だけで回せる小さな店舗を除き、多くの場合でお店を手伝ってもらうためのスタッフが必要となります。

飲食店において人件費の占める割合は極めて大きいため、可能であれば家族(配偶者や両親や兄弟、成人した子供や親戚)などの身内に特定の忙しい時間帯だけを手伝ってもらうことで運営していければ最も理想的なのですが、必ずしも誰もがそういった環境に恵まれているとは限りません。

そうすると、いわゆる従業員を雇用しなければならなくなります。

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自ら求人告知を出して採用面接を行い、応募者の中から最も有益だと思われる人材を選別し、業務内容に応じた給与を支払う契約を結び、雇用主となるわけです。

過去職で店長などの責任者ポストに就いていた方であれば採用面接を担当したことがあるかも知れませんが、多くの方は独立するまで面接なんて受ける側しか経験したことがないかと思います。

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個人経営の飲食店における面接時間は1人あたり15分~30分程度で完結させるのが一般的です。応募者が多い場合は複数人を同時に行う場合もありますが、個人的にはやむを得ない事情でもない限り、一人づつ丁寧に向き合って個別に面接されることをおすすめします。

中規模以上の有名チェーン店などでしたらともかく、個人経営の小さな店で雇用可能なスタッフ数はせいぜい数名程度に限られます。

ほんの数十分の面談で初対面である応募者の適性や能力や資質を的確に見抜き、自店舗にとって最良の人材を選択しなければならないのですから面接には最大限の集中力と眼力をもって挑まねばなりません。

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面接で意味もない世間話を長々としたり、志望動機などのありきたりな定形質問雇用条件の話だけをしていては、よほど個性的な人以外は誰もが返答も印象も似たりよったりとなり、採用の決め手となる肝心な部分は一切見えないまま終了。最終的には単なる個人的な好みや大雑把な印象だけで選ぶしか選考基準がなくなってしまいます。

ホールスタッフは店の顔となり、その接客サービスはお客様の店への印象や評価に直結します。また調理スタッフは、その能力や手際によって自身の仕事への負担が大きく軽減され、場合によってはオーナーシェフの代役を任せられるレベルにまで成長してくれる場合もあります。

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応募者の中に必ずしもダイヤモンドの原石のような理想的な人材が眠っているとは限りませんが、少なくとも自店にとって最も有益な人物を短時間のうちに見抜くことのできる濃い面接を行いたいところです。

そこで今回は『どんな面接をすれば良いのか分からない』という飲食店経営者の方に向けて、僕自身の実施している短時間で効率的に相手の適性を見抜く従業員採用面接について詳しく解説していきたいと思います。

これから飲食店の採用面接を受けようと考えている求職者側の人にとっても逆目線で見れば確実に有利になる内容かと思いますので、面接応募時の参考としてもご活用いただけましたら幸いです。


① 面接前にチェックすべきこと

《ファーストコンタクト》
過去に面接を受ける側だった時、『面接は受ける前からすでに始まっている』なんて言葉を聞いたことがあるかも知れませんが、あながち間違いではありません

採用面接をする側として最初に見逃さずチェックしておきたいのがファーストコンタクトについてです。

ファーストコンタクト
とは店頭に掲示してあるポスターや求人情報誌、SNSやネット上の求人媒体などでスタッフの募集告知を見た応募者が、あなたの店で働いてみたいと興味を持ち、接触してくる最初の瞬間のことです。

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電話やメールでの応募が一般的かと思いますが、ひとまずこの時点では以下の内容くらいを確認しておきましょう。

【ファーストコンタクト時の主な確認事項】
・ 氏名(フルネーム)
・ 年齢
・ 現状況(学生・フリーター・主婦・無職など)
・ 募集項目(アルバイト・パート・正社員など)
・ 希望勤務時間帯(ランチのみ・ディナーのみ・フリー)
・ 面接日時と場所の確認(写真付き履歴書の持参を指定)
・ 連絡先(応募者の携帯電話番号)

《氏名》
名前は必ずフルネームで尋ねておきましょう。佐藤さんや田中さんなど、たまたま同苗字の複数者から応募があった際の混同を避ける目的もあります。なお、お席のご予約などでも同じですが電話や口頭で名前を伝えられた場合はカタカナで聞きとったままにメモしておくようにしましょう。思い込みで勝手な漢字を当て嵌めたりすると後に実際の応募者と一致せず混乱する場合があります。

《年齢》
今の日本では年齢や性別によって雇用の可否を判定することは禁じられています。しかしながら高校生の場合は夜22時以降の勤務が法律で認められていなかったり、店舗スタッフ全員が20代半ばで構成されている現場に一人だけ60代の方を採用しても環境に馴染むことが出来ず、互いに気まずい思いをして長く続かないかもしれない…といった現実的な面にも目を向けておかねばなりません。本人への質疑内容にも影響する事項ですので年齢は面接の前に必ず把握しておきましょう。

《現状況》
勤務可能な時間や期間など採用した場合のある程度の勤務実態が想定できるため、現在の状況(学生、フリーター、家事など)は事前に確認しておくと良いと思います。学生は卒業時期に退職する可能性が高いですし、別職のある人掛け持ちを希望しているのか、転職を希望しているのかといったことも面接時に確認しなければなりません。

《募集項目》
相手の希望する募集項目について確認します。仮にアルバイトのみを募集しているところに正社員希望があった場合、そのまま電話口でお断りしなければなりません。最初から採用する予定もないのに履歴書を用意させたり、面接したり…はお互いにとって無益な時間でしかありません。

《希望勤務時間帯》
こちらも募集項目と同じく、今回の募集枠に合致しているかを予め確認しておきましょう。

《面接日時と場所の確認》
面接日時は連絡のあった時点から、なるべく近い日付に速やかに確定してしまうことが望ましいです。面接日がファーストコンタクトから離れれば離れるほど当日に来なかったり、他の職場に目移りしてしまって応募をキャンセルされてしまう率が高まります。もしかすると優秀な人材を取り逃してしまうかもしれませんので自店に強い興味を示してくれているうちに手早く面接まで誘導しましょう。

場所は募集している実店舗内で行うのが一般的ですが開業前の内装工事中などでまだ店舗が面接場所として使えないような場合には近隣のカフェやファーストフード店などを利用しても構わないでしょう。ただ、他店の客席で面接をする場合は店側にも失礼にならないよう、自分と面接相手のドリンクくらいは最低限注文した上で他のお客様の迷惑にもならないよう充分に配慮しながら行ってください。

《連絡先》
たとえ面接予定日が翌日であっても必ず携帯電話番号など相手の連絡先は確認しておく必要があります。自分側の急な都合で面接時間に間に合わなかったり、当日に悪天候などで電車が止まる、店が休業になるなどの問題が発生することもありえます。その際に応募者の連絡先が分かっていないと相手側からの連絡頼みになってしまいます。またこちらが連絡先を把握しておくことで、相手側も無断で面接に来ないなどの非常識な行為がしにくくなるといった抑止効果もあります。

さて、ここまでは業務的な情報のやりとりですがファーストコンタクトにおいて相手の適性や資質を見抜くための重要チェックポイントは以下の4つとなります。

【ファーストコンタクト時のチェックポイント】
1. 連絡をしてきた時間帯は?
2. 電話ならハキハキと聞き取りやすい話し方か?
3. メールなら文面や構成が適切か?
4. 会話や文面が丁寧な敬語口調か?

1. 連絡をしてきた時間帯は?
業種によって多少のバラつきはありますが、飲食店において最も業務が忙しくなっている可能性の高い時間帯は一般的な食事ピークタイムである、お昼の12時~13時頃と夜の19時~21時頃です。

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過去に飲食店での勤務経験があったりして、ピーク時間帯の電話対応は大変で煩わしいということを理解している人やお店側への気遣いができる人であれば、飲食店が忙しいと予測されるピーク時間帯開店直前のバタバタしている時間帯などは迷惑がかかると察し、意図的に避けて連絡してくるはずです。

また偶然、スタッフや店主が店に居たとしても早朝や深夜の時間帯に連絡をしてくるのはやや非常識といえます。たとえ24時間受付可能なメールによる応募であっても深夜の2時や3時に送信してくるような人にはやや警戒が必要です。


2. 電話ではハキハキと聞き取りやすい話し方か?
電話で話した際に、やたらと声が小さくて聞こえづらかったり、元気はあるが早口で落ち着きが無かったり、モゴモゴと何を言っているのか分かりにくかったり、発音や話し方に変なクセがあって会話しづらい人は残念ながら飲食店での接客業務に向いている人材とは言えません。

お客様への電話応対も同じようになる可能性は極めて高いですし、電話でなく直接向かい合ったところで、人の話し方が急激に変化するなんてことはほとんど期待できないでしょう。

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ゆっくり落ち着きながらハキハキと明るめのトーンで相手に聞きとりやすく話せる人のほうが、飲食店のスタッフとしては頼れる戦力になってもらえる安全性が高いといえます。


3. メールなら文面や構成が適切か?

メールやSNSなどのメッセージ機能を使った応募も最近では一般的となりましたが身近なツールだからこそ、その人のがさらけ出されてしまう部分も多くあります。

中でも若い世代を中心に特に多いのが短い口語で要件だけを直球で投げかけてくるタイプのものです。

まだバイトの募集ってやってますか?

そちらでバイトしたいです!

この様な一行短文だけがいきなり送られてくるパターンです。

おそらく当人は知人にLINEなどを送るのと同じような感覚で連絡してきただけで悪気などは全くないのでしょう。

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ですが、これの何がダメなのか分からないという人は、やや常識を欠いていますので気を付けるべきです。

お客の立場として予約や問い合わせをする場合でしたら、このような文面でも特に問題はありません。お店は大切なお客様からの連絡ですので快く丁寧な返信をしてくれるはずです。

ただ、仕事の面接を希望する側からのファーストコンタクトとしてはいかがなものでしょうか。今後の上司や先輩になるかも知れない相手に対しての初連絡なのですから、せめて以下くらいの文面で連絡をとるのが社会人としては常識といえます。

○○○(店舗名) 求人担当者様

お忙しいところ恐れ入ります。
○○○にて、貴店の求人情報を拝見しました。
まだ募集しておられましたら面接を希望致します。
ご返信お待ちしております。

○○ ○○(フルネーム)

高校生アルバイトくらいでしたら、もう少し砕けた文章でも許容できますが、20歳を超えた大人や、まして社員希望者などの場合は最低限、この程度の文面で連絡してくる人の中から選考したほうが良いかと思えます。

ちなみにLINEでもメールでも『!マーク』や『?マーク』、絵文字顔文字スタンプなどを仕事や業務上に関する真面目な連絡のときに使うのは原則としてNGというのが一般的な社会においての常識です。

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すでに日常的に親しい関係性が築けている間柄同士であれば互いに気にせず使用している職場も多々あるかと思いますが、少なくとも最初のファーストコンタクト時から絵文字や記号や顔文字付きの文書を送ってくる応募者は避けた方が無難です。

なお、当然のことながらお店側も応募者への返信記号や絵文字を付けて送ったりすることのないよう、くれぐれも気を付けましょう。


4. 会話や文面が丁寧な敬語口調か?
連絡のやり取りや会話の中で面接前や面接中に口語やタメ口がポロポロと飛び出すような人はうちの店の場合、その時点で採用をお断りしています。

以下は過去の面接時に実際にあった応募者の方々の発言です。

『あなたがオーナーさん? 若くみえるけどいくつ?』
『俺は昔、自分でお店をしてたこともあるからねぇ』
『まぁ、そん時はまたこっちの方から連絡いれるんで…』
『ぶっちゃけ、そこまで忙しくはないでしょ?』
『じゃあ、私が入ったら最年長ってコトになんのかな?』

これらの発言をされた方々はもれなく不採用とさせていただきました。

面接希望者の中には『自らのスキルに自信があるので新しい職場の人から見下されたくない』、『少しでも早く打ち解けて仲良くなりたい』、『自分の方が面接担当者よりも年上(もしくは同い年)だから敬語は必要ない』、『誰とでもすぐに親しくなれるのが自分の長所である』などと考えてか、肩の力を抜き過ぎたラフなテンションで面接に挑んでくる人もいますが、そういった方は後々、お客様や既存スタッフと人間関係のいざこざを起こす危険性が極めて高いので採用はおすすめしません。

会話はガチガチのビジネス敬語でなくても構いませんが、年齢性別スキル等一切関係なく初対面の人を不快にさせないよう控えめに丁寧な敬語で話せる人の方が人間的に信頼できることは確実です。

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これらファーストコンタクト時のチェックポイントは全ての面接完了後、全応募者を最終比較検討する際に忘れてしまわないよう面接ノートなどにメモして保管しておきましょう。


② 面接当日の冒頭5分にすべきこと

いよいよ面接当日です。

最初に面と向かって簡単な挨拶を交わしたら応募者の履歴書を預かり、まず初めに予め用意しておいた簡単な設問シートを記入してもらうのがおすすめです。

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志望動機や過去職の経験、勤務希望日数など面接者全員に必ず確認するような基本事項は全てこの設問シートにまとめておき、面接に入る前に記入しておいてもらうと別途メモをとる必要もなく余計な手間が省けます

設問は以下のような内容を基本とし、細かい部分は好きなように変更すればよいと思いますが、ここでのポイントは《はい・いいえ》といった選択方式の設問ではなく、応募者が自ら考えて短文で答えるようなものにしておくことが重要です。

《おすすめの設問例》
・当店で働きたいと思った主な理由を教えてください(志望動機)。
・飲食店に勤務する上であなたが最も重要だと思うことはなんですか。
・あなたの自覚している長所と短所を教えてください。
・趣味や活動で長く続けていることや得意なことがあれば教えてください。
・過去に半年以上継続した仕事があれば職種や実務内容を教えてください。
・週の勤務希望日数、勤務希望曜日(勤務不可日)、勤務時間帯など。
・当店で勤務を続けられる予定期間を教えてください。
・月収の平均的な希望金額と最低ラインについて教えてください。
・合否の連絡先を教えてください(※携帯番号とメールアドレス)。

応募者を急かす必要性はありませんので特に制限時間などは設けず、『よく分からない設問は飛ばしてもらっても結構です。ゆっくり落ち着いて記入し、書き終わったら声をかけてください』とだけ伝えておきましょう。

応募者はいきなり本面接に入るよりも、この設問シートの前置きがあることで少しですが空間に慣れる時間ができ、良い意味で適度にリラックスできます。

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また面接を行う側も設問シートを記入してもらっている間にゆっくりと履歴書に目を通せるため、本人に確認しておくべき事項などを頭の中で整理しておく時間ができます。

この冒頭5分程度の設問シートを記入してもらっている間に相手の適性や資質を見抜くため密かにチェックしておくべきポイントは以下です。

【冒頭5分の資質チェックポイント】
1. 服装や身だしなみ
2. 返事や挨拶
3. 設問の回答に向き合う姿勢
4. 文字の丁寧さと文章力
5. 回答終了までに要した時間

1. 服装や身だしなみ
どんな格好で面接の場に来たのかを良く観察しておきましょう。飲食店の面接にスーツを着込んでくるような人は極めて少ないかと思われますが、あくまで飲食店ですので小奇麗な服装や清潔な身だしなみであることは大前提となります。

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靴のかかとを踏んでいたり、わざと服を着崩しているような人はそういったスタイル自体を好むタイプなので、お店の制服も正しく着用せずに着崩そうとする傾向が強いです。

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また髪の長さやカラー、ピアスや指輪などの装飾品マニキュアや化粧の濃さ、ヒゲタトゥーなど自店のスタッフとして好ましくないものについては面接の時点で改善できるか本人に確認しておくべきです。もちろん、それらが経営者自身の許容範囲なのであれば特に咎める必要はありません


2. 返事や挨拶
最初に会って挨拶を交わした際の言葉声の大きさやトーンも要チェックです。

挨拶一つにしても何も言わずに首の会釈だけ小さな声で何を言ったのか良く聴こえない挨拶、『チワっす!』のように雑な挨拶、『面接に来ました○○です。本日はよろしくお願いします。』とハキハキ丁寧に話す人…まさに十人十色です。

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また入退室や着席をする際に一言『失礼します』といった言葉を添える人もいますし、設問シートの説明をしているときなどに黙って頷くだけの人もいれば『はい、分かりました。』と毎回きっちり返事をする人もいます。

どういう人を雇ったほうが自店にとって有益かという最終判断はあなた次第ですが、そういった応募者の小さな仕草や言動にもさりげなく目を配っておき、気になった点や率直な印象は忘れないようにメモしておきましょう。


3. 設問の回答に向き合う姿勢
設問シートの回答に真剣に取り組もうとしているか、あちこち空白だらけではないか、当たり障りのない回答をしているだけなのか、積極的に自分をアピールしようとしていることが伝わってくるかなどについても注目します。

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4. 文字の丁寧さと文章力
文字は読みやすくキレイであるに越したことはありません
飲食店のホール担当者はオーダー伝票や領収書、POPや張り紙や黒板など業務上で文字を書くシーンは多々あります。仮に文字自体が上手でなくても、精一杯丁寧に書こうとしているのか、なぐり書きのように適当で雑なのかでも、その人物の生真面目さや真剣さを推し量ることができます。

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また文章は分かりやすく簡潔か、誤字脱字はないか、漢字の送り仮名や『てにをは』の使い方が正しいかなども要チェックです。

学力テストではないのでミスがあったから減点だとかいうわけではありませんが、本質的にしっかりしている人はこういった些細な部分にも抜かりなく集中して取り組みます

一箇所くらいならともかく、いくつも誤字脱字や文面ミスがあるような人は必ず業務上でも多くの凡ミスをやらかします。


5. 回答終了までに要した時間
いくら制限時間なしと伝えていても数項目の設問に10~20分もの長時間をかけて取り組んでいるようでは要注意です。本人に悪気はなくとも仕事覚えや要領が悪い、もしくはマイペース過ぎるタイプ手早く仕事を片付けるのが苦手な性格である可能性があります。

また逆に1分などの速すぎるスピードで終えるような人は1つ1つの設問に対して真剣に取り組むことを放棄している可能性が高く、やっつけ仕事をしてしまう性格の持ち主である疑いが強まります。

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③ 本面接

回答してもらった設問シートを受け取ったら、こちら側も名刺を渡すなどしてきちんと自己紹介し、改めて丁寧な挨拶を交わしてから対面席に付きます。

まずは履歴書や設問シートに書かれている内容について順番に確認していき、それぞれの項目についてより詳しい話を尋ねたり、相手側の労働条件の希望なども確認していきましょう。

例えば設問シートの内容で長所と短所に挙げたことについての具体例を尋ねたり、長く続けている趣味や活動の内容や実績過去職の実務内容の詳細、日曜日は休みたいと希望にありますが祝日は問題なく働けますか?などの具体的な条件確認もしていきます。

履歴書の内容では自宅から職場までの通勤手段や所要時間の確認、交通費の必要性、職歴の継続期間辞めたときの理由や事情についても差し支えない範囲で構いませんと前置きしつつ尋ねておくと応募者の仕事に対するスタンスやポリシーが垣間見えることもあり、参考になるでしょう。

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また面接時の質問の一つとして『これまでに当店をご利用されたことはありますか?』という問いかけはおすすめです。

なぜなら、どんな店なのか全く知らないまま面接に応募してきたのか…それとも応募前に一度でも実際に足を運んで確認し、その上で応募してきたのかによって、あなたの店で働くことに対してどれほどの興味や意欲を持っているのかが分かるからです。


ちなみに本面接時において相手の適性や資質を見抜くためにチェックしておくべき重要ポイントは以下の3つです。

1. 会話中の目線や仕草
2. 質問に対する返答の仕方
3. その人の持つ雰囲気や印象

1. 会話中の目線や仕草
会話の内容も重要なのですが面接する側としてしっかりチェックしておきたいのが会話中の応募者の目線や仕草です。

こちらがずっと相手に目線を合わせていると無言の圧で相手を悪い方に緊張や萎縮させてしまうこともありますので長時間する必要はありませんが、相手が話しているときなどに時折、目をじっと見つめてみて、その反応を確かめておきます。

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すぐに目線をそらす人、そもそも全くこちらの目を見ていない人、目線がキョロキョロと泳いでいる人、ジッと目を見返してくる人、様々な方がいますが、ここで理解しておくべきは、その人はお客様と会話をするときにも同じ行動をとるということです。

ずっと視線を合わせない人は、お客様であっても基本的に相手の目を見ずに話す人です。お客様から要望や注文を受けるときだけでなく、こちらから謝罪やお願いをする際に他の場所を見ながら話すような人より、不快感を与えない程度に真剣な目線を合わせてくる人の方が印象が良いのは言うまでもありません。

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また不自然に目線が泳いでいる人は質問の返答内容について嘘を付いている可能性もあります。過去職での経験や趣味の実績などを、どうせ調べようがないと思って大げさに話を盛ってくる応募者も一定数いらっしゃるのは事実です。

面接においては話の内容が事実かどうかはそれほど重視せず、むしろ堂々とまっすぐに目線を合わせながら話のできる人物をおすすめします。

他には目線だけでなく、手指や足の動きなどもさり気なくチェックしておきましょう。落ち着き無く、貧乏ゆすりをしている人や足先をフラフラ動かしている人、会話の最中に手で髪やボールペンをいじったり、指遊びをしているような人は集中力がなかったり、短気でイライラしやすい、または落ち着きのないタイプである傾向があります。もちろん、面接中にあくびをする人などもってのほかです。

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2. 質問に対する返答の仕方
こちらが質問した内容
に対して、どのような返答の仕方をするかをチェックしておきます。

理想的なのは最初に結論をはっきり答え、後からその理由を簡潔に述べるタイプの人です。こういった返答の仕方ができる人は頭の回転が早く忙しい中でも素早く的確な判断をし、テキパキ動ける場合が多いです。

うまく返答できない質問には『すみません、分かりません。』などと素直にしっかり答えていれば何も問題ありません。むしろ、首を捻ったまま黙り込んでしまう人返答を誤魔化そうとしてくる人のほうが要注意です。

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他には答えになっていない的の外れた返答をする人や、そもそも会話が噛み合いにくい人、質問の意味を正しく理解できない人、やたらと前フリや言いわけが長く結論が一番後回しになる人質問を質問で返してくる人、いちいち他人とは違う個性的な返答をしたがる人など様々なタイプの人がいます。

中でも自信なさげにモゴモゴと口の中だけで答える人声が小さ過ぎて聞き取れないような人は残念ながら飲食店の接客スタッフに向いているとはいえませんので余程人材に困っている場合以外は採用を見送ったほうが無難でしょう。

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3. その人の持つ雰囲気や印象
小規模飲食店の面接において失敗しない人材の見極めポイントを色々と述べてきましたが僕が最も重要だと考えているのがこの項目です。

要は自分自身がオーナーとして、その人に自店舗スタッフになってほしいと思えるような雰囲気や魅力があるのかといった、いわばかなり主観的な部分になります。

第一印象、外見、服装、声、話し方、笑顔、清潔感、キャラクターなどを含め、その人の醸し出す人間的な魅力にフォーカスを当ててみるということです。

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これは人によって感覚が異なりますので、一概にこれが正解だという判断基準などは存在しませんAさんにとって魅力的に映る人物がBさんにとっても魅力的であるとは限らないという理屈と同じです。

・ 清潔感のある爽やかなイケメン!
・ 雰囲気が大人っぽく落ち着いている
・ 明るくて自然な笑顔が最高
・ 寡黙だが真面目そうで好感が持てる
・ 直感で必ず戦力になる人物だと感じた
・ ふわっとした癒やし系の魅力がある
・ 元気と威勢があって居てくれると心強い
・ 昔の自分に似ているので育ててみたい
・ お店のムードメーカーになってくれそう
・ 飲食の仕事に情熱を持っているのが伝わる
・ 温厚そうで人柄の良さがにじみ出ている
・ 努力して伸びるタイプだと確信した etc...

上記のように必ずしも現時点で実務能力に優れているかどうかだけでなく、経営者として、その人に自店舗で働いてもらいたい!と思える強い魅力的要素があるのかといった極めてシンプルなチェックポイントです。

ある意味、このような人間的魅力や特性を感じられる人材が応募してきた場合は、あなたにとって他の誰よりも自店舗スタッフとして取り込むべき価値があるといえるでしょう。

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④ 面接の締めと採用通知

面接の最後には『仕事内容や雇用条件などで確認しておきたいことやご質問はありませんか?もしあれば、今のうちに何でもお気軽にお尋ねください』と必ず相手側の疑問や意見にも柔らかい物腰で耳を傾けるようにましょう

確かにこちらの採用面接であることに違いありませんが、同時に応募者にとっても話を聞いてから本当に自分に合っている職場かどうかを見極める最終段階でもあるのです。

相手側の質問を受け付けずに面接を終えてしまうと、仮に店側が採用を決めても『あの気になっていたことが面接ではっきり確認できなかったから、やっぱり今回は辞めておこう…』と不安を感じられ、採用を辞退されてしまうケースも珍しくありません。

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特に応募者が聞きづらいと感じやすい賃金関連の話(基本給や給料日、昇給や賞与や退職金の有無に関すること)、シフトや休暇に関する話社会保険の話などはお店の方から明確に伝えておいてあげるほうが親切でしょう。


さて、いざ面接を終えた後の採用通知の仕方にも実はいくつかのポイントがあります。

1. 採用したいと感じた人物は、その場で即決する
2. 複数名で迷った場合でも一晩で決断する
3.
不採用者には3日後にメールで通知する

1. 採用したいと感じた人物は、その場で即決する
多くの経営者が失敗するパターンの一つでもあるのですが、面接で是非とも採用したい!と感じた人材であるにも関わらず、事務的に合否連絡を後日に先延ばしして伝えるといった慣例があげられます。

合否を先送りすることにより『他の応募者とも慎重に比較検討した』、『面接内容について社内でじっくり協議した』。その上で『あなたが選ばれたのです!』という厳正な審査過程を暗に本人へ伝えたいというのが目的なのかもしれませんが、これは単に有能な人材を獲り逃してしまうリスクが高まるだけの愚策でしかありません。

実際にそういった過程が必要になる大会社などとは違い、特に小規模個人店においては『採用したい!』と感じた時は、その場で即決し、仮に面接の途中であっても『あなたさえ良ければ採用させて頂きたいです!』と本人に採用意思を伝え、すぐに次の段階へスピーディーに話を進めてしまったほうが得策なのです。

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2. 複数名で迷った場合でも一晩で決断する
今やありとあらゆる職場がリアルタイムに優秀な人材を探し求めています。そして求職者側もまた、少しでも高条件かつ働きやすい職場を求めています。

そんな中にあって自店舗での求人中に良い人材に巡り合った時は、兎にも角にもスピード確保が他店との勝敗を分けるカギとなります。

今日あなたの店に面接に来た応募者は、翌日には別の職場の面接も予定しているかもしれませんし、密かに他の職場の合否結果待ち状態であるかもしれないのです。

それでも、あなたの店の面接時に採用が即確定し、次の段階へと話が進んでしまえば、もはやその応募者にとって他の職場で予定していた明日以降の採用面接や合否待ちだった会社の結果などは無意味と化してしまい、あなたの店が獲得できる可能性はぐんと高まることになります。

これは複数名の候補から誰を採用するべきか迷っている場合であっても同じことです。

とある研究では人間は何らかの選択において決断を迷っている際、1分間考えても1週間考えても最終的な結論は変わらないともいわれています。

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自分自身が見落としている要素がないか履歴書や設問シートを見直したり、他の関係者の意見も聞きたい…などの時間的猶予が欲しくても、決断までには一晩あれば充分であり、それ以上は貴重な人材を失うリスクしか無いと捉えるべきです。

複数名で迷っている場合でも、面接が終わった時点で『明日中には合否連絡します!』と必ず最短期間で決断することを心がけておきましょう。

どうしても甲乙つけがたい場合は採用枠に多少無理をしてでも一括採用してしまうというのも有効な戦略の一つです。実際の仕事ぶりを見ることで印象が変わったり、迷った挙げ句に採用決定した人が数日で辞職してしまうようなこともままあるからです。


3. 不採用者には3日後にメールで通知する
逆に面接を終えた時点で不採用と確定した応募者に対しては『合否結果は本日より3日以内にメールにて通知します』と伝えておくのが良いかと思います。

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自身の中では不採用を決めているにも関わらず、合否発表までの期間を長く引き伸ばすことは応募者側にも余計な期待を待たせ、次の就職活動すら制限させてしまう迷惑な行為であるともいえます。

かと言って、面接当日や翌日にすぐさま不採用通知を送りつけると、真剣に検討してもらえなかったんじゃないか…という不信感を抱かせ、失礼な店だとも捉えられかねません。

ここで忘れてはならないのは飲食店にとって求人に応募してきた人採用すれば自店舗の従業員ですが、不採用にした瞬間から、その応募者は大切な見込み客の一人に変わるという認識です。

小さな飲食店の求人では店舗周辺を生活圏としている近隣住人が応募してくる場合も多く、彼らや彼らの関係者に対して横柄な態度をとったり、冷たい応対をすると今後の営業にも悪影響を及ぼします。

面接中のやりとりでもその点には十分配慮し、たとえ応募者が若い学生であっても上から目線で偉そうに話したりせず、お客様同様に丁寧な言葉遣いで接するように心がけましょう。

なお、電話で本人に直接不採用を伝えるのは店側も気を遣いますし、不採用を伝えられる側も気まずくなるだけですので、不採用通知に関しては以下のような少しの思いやりを添えたような定型メールを作っておき、面接から3日後に淡々と送信すれば良いかと思います。

《不採用通知メールの定型文例》

[件名]:選考結果のご連絡

[本文]:
○○ ○○ 様(※応募者フルネーム)

先日は当店の面接へお越しいただき、ありがとうございました。

採用基準に基づき厳正に選考致しました結果、誠に残念ではございますが今回の採用はお見送りさせていただくこととなりました。

今回の求人につきましては少数枠に対し、大変多くの方からご応募をいただき、選考には大変な苦慮を致しました上での結果でございます。

今後も当店の大切なお客様としてお気軽にご利用頂けましたら幸いです。

末筆ながら、貴殿のご健康ならびに今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。

○○○○○(※店舗名)
代表 ○○ ○○(※自身のフルネーム)


あなたのお店が素敵なスタッフに恵まれますように…!

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⑤ 要点まとめ

・ ファーストコンタクト時から応募者の資質をチェック
・ 面接当日はまず最初に設問シートを記入してもらおう
・ 身だしなみや言葉づかい、文字や挨拶などにも注目
・ 本面接では履歴書や設問の内容について詳細を確認
・ 過去に自店を利用したことがあるかどうかは要確認
・ 会話中の目線や仕草、話し方や人間的な魅力を確認
・ 面接の最後には必ず応募者側の質問時間を確保する
・ 採用したい応募者はその場で即決して話をすすめる
・ 複数名で迷っても一日程度の短期間で早期決断する
・ 
不採用者には3日後を目安に丁寧なメールにて通知

※内容にご意見ご質問等ございましたらお気軽にコメントくださいませ。

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