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鰆のエスカベッシュ


今回はイタリア料理フランス料理スペイン料理などの各種西洋料理店から、バル洋風居酒屋などでもすっかりお馴染みの『エスカベッシュ』という料理の作り方をご紹介したいと思います。

エスカペチェ』、『スカペーチェ』、『エスカベーシュ』などと呼ばれることもありますが、どれも読み方が微妙に違うだけで同じ料理のことです。

ちなみにイタリアでは地域によって呼び方が違い、この料理がもっとも代表的といえる南イタリアでは『スカペーチェ』、北イタリアでは『カルピオーネ』、魚介類豊富なヴェネチア周辺では『サオール』などと呼ばれたりしています。

比較的ポピュラーな料理ですので食べたことがなくても名前くらいは聞いたことがあるという方も多いかもしれません。分かりやすく例えるならば西洋料理風の『南蛮漬け』といったところです。醤油を使ったり、あんかけに仕立てたりはしませんけどね。

もっとも実際は、このエスカベッシュが西洋人(当時、外国からの船は東南アジア経由で南方からしか訪日できなかったため、日本人は全ての外国人南蛮人と呼んでいた)から伝わった後、それが南蛮漬けという名称で和風アレンジされて日本全土に広まったわけでして、日本人が『南蛮漬けに似ている料理』などと言うのは実はおこがましく、エスカベッシュこそが南蛮漬けの産みの親元祖なのです。

基本的には素揚げした魚などをビネガー(酢)・オイル・香辛料などのソースに香味野菜と一緒に漬け込んだマリネ料理の一種で、甘酸っぱくさっぱりとした味わいで二日酔いや夏バテなどで食欲がないようなときでも意外と箸が進みます。

調理もかんたん、冷蔵庫でも長く日もちしますので作りおきおかずには最適です。また、ビールや白ワインなどとの相性が抜群ですので、ちょっとしたおつまみ前菜としても大活躍してくれます。

今回は(サワラ)を使いましたが、さまざまな食材で応用が効くメニューですので、おすすめのバリエーション食材などについても最後の方で解説しておきたいと思います。

① 基本の材料

[マリネ液] ※4人前
白ワイン … 400ml
リンゴ酢 … 200ml
白ワインビネガー … 30ml
ローリエの葉 … 中2枚
上白糖 … 40g
はちみつ … 20g
サラダ油 … 50ml
・ ニンニク … 2片    
・ タマネギ … 中1個
・ ニンジン … 1/4個
・ パプリカ(赤) … 1/2個
・ パプリカ(黄) … 1/2個
・ 塩コショウ … 適量

[鰆のからあげ]
 ※4人前
鰆の切り身 or フィレ … 2匹分
・ 塩コショウ … 適宜
強力粉 … 適宜
サラダ油(揚げ油) … 適宜

[鰆のエスカベッシュ] ※4人前
・ 鰆のからあげ … 全量(※レシピ参照)
・ マリネ液 … 全量(※レシピ参照)
エキストラバージンオリーブオイル … 大さじ1
イタリアンパセリ … 適量(※飾り用)


② マリネ液の仕込み

1. 片手鍋を用意し、中に白ワインからサラダ油までの材料を計量して全て放り込む。

2. ニンニクは皮を剥いて縦半分に割り、芯を取り除いてから包丁の腹などで叩き潰しての中へ。

3. タマネギとパプリカは薄めにスライス。ニンジンはできる限り細切りにして全てをの中へ放り込み、野菜の上から適量の塩コショウを振る。

4. を強火にかけ、全体を良く混ぜ合わせる。液体が隅々まで完全に沸騰したら火を止めて、そのまま放置しておく。


③ 鰆のからあげ

1. は軽く水洗いし、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取る。切り身の場合はそのまま、フィレの場合は2cm幅くらいに削ぎ切りする。

2. 切り分けたの両面に満遍なく塩コショウを振る。

3. 切り身一枚づつの全面に丁寧に強力粉をまとわせる。

4. 余分なをはたき落としてから170度の油で2分ほど、こんがりと美味しそうな色が付くまで揚げ、油を切ったらバットガラス製の平たい容器などにできるだけ重ならないように並べる。


④ エスカベッシュの仕上げ

1. 放置してあったマリネ液の野菜をトング菜箸などを使って鰆のからあげの上に満遍なく載せていく。

2. 野菜をすべて載せ終えたら、残りの汁を鰆のから揚げが半分くらい浸るまで流し込む。完全に漬けてしまわないところが美味しくなるコツ!

3. 常温で1~2時間ほど放置し、冷めたらフタのできるタッパーなどに移し替えて冷蔵庫内で保存。

4. そのまま半日から一晩ほど寝かせば完成(※冷蔵庫に入れておけば約1週間ほどは日持ちします)。

5. 食べるときは鰆と野菜を彩りよく皿(白いスクエア皿がおすすめ!)に盛り、適量のエキストラバージンオリーブオイルを回しかけ、仕上げにイタリアンパセリチャービルの葉を添えると美しく映えます。


⑤ ポイント&ヒント

野菜を炒めてから調味料を加えてマリネ液を作っていく人も多いですが僕はわりとシャキシャキした野菜の食感が残っているくらいが美味しいと考えていますので、あえて炒めません。材料を全て鍋にまとめて沸かすだけのほうが楽ちんですしね。

火を止めた直後はまだ野菜にほとんど火が通っていないように見えるかもしれませんが全ての野菜が薄くスライスできていれば、一度沸騰させた後の予熱だけで最終的には丁度良く仕上がりますので心配無用です。

ニンニクやローリエの葉香り付けのために入れているものですので食べる際には取り除くことをおすすめします。もちろん、食べても害はありませんが。

・好みでマリネ液に鷹の爪を加えてもピリ辛になって美味しいです。

・イタリアではレーズンを加えたりもします。噛んだときの甘酸っぱさがアクセントになってなかなか癖になる美味しさです。苦手でなければお試しください。

・魚を揚げる前に下味として振りかける塩コショウマジックソルトクレイジーソルトのようなハーブソルトに替えると、また少し違った深み旨味を出すことができます。

・マリネ液をかける際、ところどころ液に浸かっていない部分を作ることでサクッとした乾いた食感とマリネ液を含んだしっとりした食感のコントラストを楽しめます。

のほかにエスカベッシュにおすすめできる食材としては鮭やタラカレイやキスなどの淡白な白身魚系の切り身ワカサギや小アジカタクチイワシ、キビナゴなどの小魚類が一般的ですが、ホタテやエビやカキブリやイワシにサンマ、さらにはウナギやアナゴやシシャモまで実は結構なんでもいけちゃいます。もちろん、日本ではキチン南蛮ド定番であるように鶏肉との相性も間違いありません

・あえてメインとなる食材を野菜にしてカボチャカリフラワーブロッコリーなどのエスカベッシュを作る料理人もいます。要は揚げた食材に甘酢野菜をかけるだけのシンプルな料理ですので様々な食材と幅広く相性が良くて当然なのです。ぜひ色々な食材を試してオリジナルエスカベッシュも楽しんでみてください。もし、あっと驚くような斬新な組み合わせを発見されたときは僕にも教えてくださいね!


⑥ 要点まとめ

・ エスカベッシュは『南蛮漬け』の産みの親。
・ マリネ液は材料を全て鍋に入れて沸かすだけ。
・ 完全に沸いたら火を止めて放置しておく。
・ 鰆は塩コショウして粉をまぶしてからあげに。
・ 揚げた鰆を平たく並べ、全体に野菜をのせる。
・ マリネ液を半分浸かるくらいまで注いで放置。
・ 温度が下がったらタッパーに移して冷蔵庫へ。
・ 半日から一晩ほどねかせば完成。
・ 食べる前にEXVオリーブオイルを少々かけて。
・ 自由な食材でオリジナルエスカベを楽しもう。

※内容にご意見ご質問等ございましたらお気軽にコメントくださいませ。

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