お化けに聞きたい
「ギャーー!・・・・・目が覚めると私は、自宅のベットで寝ていました。私はその場で気を失っていたのです。私の脚には、あの時につかまれた手形がくっきりと残っていたので、決して夢ではありません。それ以来、私の周りで不思議な現象は起きていません…」
怪談・ホラー、とりわけ近年の「本当にあった怖い話」系のテレビドラマで見飽きるほど使い倒されたオチだ。
よくよく考えると、どこか違和感がないだろうか?
幽霊ないしは正体不明の怪物は、なんらかの理由で主人公に標的を定め、危害を加えようとして追いかけてきたわけである。
ついに主人公を追い詰め、いよいよ…というところで、その幽霊は主人公が気絶したのを見て満足して帰ったのだろうか。
要するに脅かすだけ?
これでは「成仏できないほどの強烈な恨みを残して死んだのでこの世に霊がとどまっている」的なお決まりの設定と大きく矛盾しかねない。
本物のお化けが、お化け屋敷のアトラクション並みにビビらせて満足するとは、なかなか皮肉な事態である。
あまりに見慣れたオチなので今まで気づきにくかっただけなのかもしれないが、よくよく考えれば拍子抜けだ。
たしかに、幽霊に追いかけられるような場面に遭遇すれば誰だってビビるだろう。しかし「コイツ、どうせ脅かすだけだろw」とわかっていれば、たいして怖くないはずだ。
これは、幽霊を初見の、しかも幽霊側の意図を把握していない人間にしか通用しない脅かしメソッドである。
幽霊に追いかけられるだけで特に何も起きなかった、という評判が広まれば「あそこの幽霊に追いかけられたけど、結局気絶するだけで全然なにも起こらなかったわ。まじ楽勝。次あったらワンチャンかます自信あるわw」と、調子に乗った人間側からの逆襲を招きかねない。
リスクのわりにメリットが少なすぎる。
人間の適応能力は甘くみてはいけない。幽霊がいる、追いかけられる、ということが分かれば、それに適応して対策を講じるのが人間である。
幽霊がいると分かったその場所を避ける人間もいれば、算段を踏んで逆に一発かましてやろうと発奮するのもまた人間だ。
幽霊側にメリットがない脅かしメソッド。いったい何のために?
今度ぜひ一度、お話をお伺いしたい。
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