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結局テストステロン高いみたいな人が全てを手に入れるこの世界に抗いながら

『一部の目立った特徴に引きづられて、全体としての評価が歪められる現象』をハロー効果というらしい。

大学を中退してから臨んだ最初の就職面接で、「緊張していたかもしれないけど、少し元気が足りなかった」というフィードバックをもらった。
エントリーした企業からフィードバックがもらえたのは就職エージェントを利用していたからだ。

まあ、実際に前日から晩ご飯が喉を通らないほど緊張していたし、当日履歴書とは別に書かされたプロフィール用紙は変な汗でびちょびちょにしてしまうほどだったから、そう言われるのも仕方がなかった。

けれど、けれどだ…聞かれた事には客観的に見てもかなり的確に、芯の通った回答していたし、僕は内容をすっ飛ばして面接態度の印象のみが語られたそのフィードバックには結構傷ついた。
「結局そういうところで評価するのかよ」という反骨心がメキメキ音を立てて現れて心臓の代わりに血を送った。

というのも、僕は基本的に"元気がなさそうな"人で、感情を表に出さず、間違っても元野球部ではなさそうで、人に心を開くのが苦手で、だからいつも静かだと思われているようなタイプの人間だったから(実際はそうとも限らないけど)、何かもっと大きいものを否定されたような気がして「社会もやっぱりそうなのか」という、のっけからの予感が残念だった。

だからハローワークからのエントリーも含めたその後の4つの面接では、「元気で」「熱心で」「優秀そうで」「気持ちのいいコミュニケーションが取れる」就活生を演じたのだけど(一過的に演じるのは割と得意だったりする)、その結果全ての企業から内定をいただき、支社長から直々に入社を熱望されるほどだった。もちろん大学中退の身分で受けた現実的な志望先なので自慢にもならないが、最初の企業のように僕を評価していたエージェントの担当はかなり驚いていた。(こちらはそこまで過小評価されていたことに驚いていた…)

現在そのうちの1社に入社して3年目の冬を迎えるけど、社会の中で息ができる生物になるにつれて「結局テストステロン高いみたいな人が全てを手に入れてんな、この世界」という実感が日増しに強くなり、同時に僕みたいな人間はそんな世界でしのぎを削ることを諦めるか、そういう世界に抗う呪いを自分にかけなければならない、ということを強く感じる。

TwitterやYoutubeで見かけるビジネス戦闘力100万みたいな人は、早起きと仕事と筋トレがライフワークで、根拠のない自身に溢れていて、表情が明るくて、先輩に可愛がられて、女にモテて、(嫉妬はあるけど)ディスではなくて、仕事だったり恋愛だったりスポーツだったり人生だったりと、そういうタイプの人が強い市場がこの世界にはあまりに多い。(詰まるところ、おっぱいの大きい美女はそういうタイプに取られるってことだ…)

人間は社会的な生き物だから強烈なオスやメスというだけでは強い立場でいらないけど、社会性と理性の鎧をまとい黄金の志を持った強烈なオスやメスがやっぱり猿山のてっぺんにいたりするのだ!!

社会に出て分かったのは、体育会系というか、テストステロン高いみたいな人はほんとうにイクイノックスみたいにモノが違う。
仕事の能力というよりかは、人生の主人公感というか、等身大感というか、無鉄砲さというか、上手に生きれる、何かが。

「上手だな〜」と日々思う。

でもそんな世界に指を咥えて負けを認めたくないから、そういう世界や人に「いつか」を延長しながらも食い下がっていきたい。
だって自分のことを過大評価しているテストステロン高いみたいな人がそうではない人間に講釈垂れているのを見るのには辟易したから(これは偏見ですね)。

思慮深かったり、ニュアンスの拾い方が上手だったり、右脳思考が際立っていたり、感受性が強かったり、いろんなビジネスの現場では(売上に直結しないから)フィジカル的でも左脳的でもないそいう能力は過小評価されがちだけど、僕たち全員には強いカードも、弱いカードも含めて少なくとも手札は配られている。『You play with the cards you’re dealt. Whatever that means(配られたカードで勝負するのさ。それがどういう意味であれ)』というスヌーピーの名言は好きな言葉のひとつだ。

僕自身の身辺はというと、最近は財布はなくすし、水道は止められかけるし、仕事で稟議書が全然通らなくて納得できないことも多いけど、30歳くらいでいろんな"いつか"がやってくればいいなと思って割と世界に抗っている。下手くそでも行動量は負けないとか、教養を少しづつつけるとか、毎日ランニングするとか、平日でも勉強するとか、大したことではないけれど。

まだもうちょっと、新自由主義の鑑みたいに今日を浪費していこうと思う。

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