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占い師に恋人ができると言われ半年が経った

昨年の11月くらいに、人生ではじめて占いに行った。

ホームページの案内通りに到着した場所は、大通りから何本か入った静かな通りの普通のマンションだった。
ドキドキしながら電話をかけたら、しばらくして、スピードワゴンの小沢さんにそっくりな40代くらいの金髪の男がマンションから出てきた。

清潔なマンションの一室が占い部屋のようになっていて、僕は男に案内されるまま席に座った。コーヒーメーカーや分厚い本、パソコンなんかが置いてあり、なんとなく大学の教授の部屋のような雰囲気だったのを覚えている。

占いに行ったのは、単純に「人生で一回くらい占われとくか〜」といった雑なモチベーションだったけど、タロットカードにはちょっと興味があって、小沢さんがカードを配るのを見ながら少しワクワクしている自分がいた。

「よろしくお願いします」
いざ占いがはじまると、仕事の事とかすごく現実に則したコーチングっぽい話が多くて(実際にそういうコースもあるみたいだった)、流派的にスピリチュアルに寄りすぎていない感じが好感が持てた。

失礼がないように、どこかで「なんで分かったんですか!?」と言おうとしたけど、なんか逆に嘘っぽくなるような気がして言えなかった。

占いにおいて、「なんで分かったんですか!?」というのは花火に「たまや〜」と言ったり、名探偵に「お前一体何者だ!?」と言ったり、医者に感謝したりと、職業冥利の一番ど真ん中の言葉ではないだろうか。

だけど言うタイミングを完全に逃してしまった・・・!
まあそんなことは置いておいて、15分ほど経った頃、占い師が一枚のカードをめくって「あれ!?」と小さく声をあげた。

一瞬骸骨が大鎌を持ったような不吉なカードでも出たのかと思った。
でもすぐに、「○○くん、やっぱり恋人できるよ。もうすぐ!!」と、思いもよらず嬉しいことを言われ、ほっとした。

「そうですか・・・」
僕は、人生ではじめて占いを信じてみる気が起こるのを感じた。
これまでの人生、占いもスピリチュアルも信じたことはなかったが、ゲッターズ飯田の金言に嫌悪感を覚えるのもこれで最後かもしれない、なんとことを考えていた。

しかしそれから半年間、恋人ができることはなかった。

でも、よくよく考えると彼女がいないなんて僕は一言も言わなかったから、そこだけ当てられていたのがとても悔しかった。
だいぶラフな格好をしていたので、もっと南青山でトイプードルの散歩するみたいな服装で行けばよかったと、しばらく反省した。

あと、小沢さんはすごく話術に長けていたけど、脱サラしてはじめた占い稼業は本当に甘くないと言っていて、副業の株でちょっと借金があることや、コロナ関係の支援金の申請で落ちた愚痴なんかも長いこと聞かされた。
(結局30分コースだったのに3時間くらい話すことになった)

彼のコロナ禍への葛藤や政府への愚痴が、強烈な占いへのアンチテーゼになっていて、結局僕らは毎日を地道に積み重ねることでしか現実を変えることはできないのだと逆に実感させられた。

ゲッターズ飯田の金言に救われている主婦がいることも知っているけど、僕は次に恋人ができるときまで、やっぱり占いは信じない側の人間でいようと思う。

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