菅直人元総理のこと

菅直人氏と直接話をしたことがある。最初は原発問題で表敬訪問に行った、とある外国の活動家に付いて行ったのだ。2014年だったと思う。すで民主党政権は終わり、自民党政権に戻っていた。「東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと」という著書も出版済みだった。

その後も何度かお会する機会があったので、一度、思い切って尋ねてみた。2011年3月11日当時、チェルノブイリ原発事故のことをどの程度知っていたのか?と。
答えは、「報告書を読んでましたよ」だった。上っ面だけでなく、かなり詳細を読み込んでいたようだった。地震の時にすでにチェルノブイリ事故がもたらした影響(被害)を十分知っていた、元々理系で物理専門なので物理現象・化学現象などを理解する素地があった、全電源喪失で電源が失われた状態が続くと何が起きるのか理解していた、ということだ。

つまり「全電源喪失が起きた」という報告だけで、危機感を持つことができたのだ。
情報が入ってこないと怒って福島に飛んだ。
それだけ情報の重要さを知っていたのだ。
そしてやれることは何でもやった。
菅直人氏が総理大臣だったことは、本当に幸運だった。



逆に今我々は、トップが危機感を持たないとどうなるかを目撃している。

1月1日の地震の後の対応はあまりにも遅い。何が起きているのか、情報がない。電気がない。水も来ない。電話がつながらない。インターネットは勿論ダメ。道路もズタズタで現地に車で入ることさえできない。徒歩でさえ難しい場所もある。崩壊したたまま手付かずの建物もある。だから死者数、不明者数、そして孤立している人数さえわからない。
まるで数が不明ならゼロだ、人が入れない地域や電話がつながらない場所には人はいないと思い込んでいるようだ。だから自衛隊員を1000人→2000人→4600人と小出ししか増やさない。予備費も40億円。

だが一方で、やっているとのアリバイだけは残したいらしい。311の時と同じように、記者会見で首相は作業服だ。報道でも、72時間の壁を強調して頑張った感を醸し出す。食べ物は加熱、水は安全なもの、衛生的に暖かく過ごすように、など盛んに言っている。

情報は集まって来ない、情報は存在しない。
だから政府は何もしなくていい。勝手に自己解決しろ。
こう言っているようなものだ。


もう1点。志賀原発の情報がオブラートに包まれたように出てきていることにも注目したい。先日も書いたが、3mの水位上昇は津波だ。変電気が焦げたら小規模でもほぼ火災だ。予備電源に切り替えられていることが、すでに非常事態だ。そして使用済み核燃料プールの水が何百リットルも外に飛び出した。
まるで原発が爆発して放射能が漏れなければ、安全なのだと言いたいらしい。

確かに福島第一原発事故の時、情報が出てこないことも多々あった。しかし、原発事故に対する菅直人氏の危機感は半端なかった。
あの時例えば安倍が首相だったら、もっとひどい隠蔽があっただろうとつくづく思う。


菅直人氏を悪く言う人は多い。
実際2011年、もう少し情報が開示されるべきだと思っていた。(但し今考えると、直前の鳩山首相を偽文書で騙した実績がある官僚なので、情報が出なかったのはトップの責任ではないと思っている)
確かにがっかりさせられる判断もあった。
しかし人間、誰でもパーフェクトはあり得ない。
自分と考えが100%一致する人など、まずいない。

評価すべきは評価することこそ大事なのではないだろうか。

2011年3月、菅直人氏が総理大臣だったことで、日本と日本の国土が何とか守られ存続したと、今でも信じている。


情報を集めよう。データを集めることこそ、対策への第1歩なのだから。