グラフを見る時:感染者数

良く知られていることですが、グラフを見る時にはいくつかポイントを押さえることが必要です。

今回は、軸の確認の重要性。グラフは、その示し方でいろいろな表現が可能です。グラフを提示する人の意思が入り得る訳ですね。早速例を見ていきましょう。

このグラフは、台湾での日毎の感染者数(以下、「感染者数」という時は100万人あたり、日々のばらつきを抑えるため移動平均をとったものとします)。ピーク時でおよそ25人でした。ものすごく増えたけど抑え込むことに成功した。こう理解できます。

画像1

しかし、軸に注目しながら他の国と比較すると全く違って見えます。

次は同じグラフにニュージーランド、オーストラリア、韓国を追加したものです。

画像2

他国と比較することで、台湾が抑え込んだことの素晴らしさを理解できるでしょう。そしてオーストラリア危ない。韓国もずっとくすぶっている。それも事実でしょう。では日本は?さらに日本を加えたのが次のグラフです。

画像3

全く印象が違いますね。
・オーストラリアとニュージーランドは感染が増えていると言われるが、オーストラリアで日本の半分、ニュージーランドは1/10 以下。
・今年はほぼ全期間、日本が韓国を上回っている。
・今年韓国では、日本のような大きな波がない(多分波を抑え込んでいる)
とにかく日本の第5波はすごかったんだ、と認識できます。(「医療崩壊」とは中々報道されませんが、救急搬送ができなくなった時点で医療崩壊と言わずしてなんと言えば良いのでしょうか。)そしてワクチンが行きわたれば大丈夫!と思っている人には次。今度は日本さえ少なく見えてしまいました。これはイスラエルを追加したグラフです。

画像4

イスラエルは、ワクチン接種の優等生でした。6月上旬には感染者を(100万人あたり)1人というレベルまで抑え込みました。しかしその後は急激な増加に転じ、前のピークを越えてしまいました。9月上旬には1000人を超え、一時は世界の国で一番単位人口あたりの感染者が多いという状況にまでなりました。今は多少減少しているようですが、相変わらず日本の8倍程度の感染者数になっています。(たった8倍の差まで日本も増えた!)今後3回目のワクチン接種で、また感染者は減るかも知れません。(感染者数という結果と同時に、ワクチンの有効性、抗体減少などの傾向についてウォッチが必要でしょう)


長々と書きましたが、日本のニュースには傾向があると感じています。
・日本の感染者数は、欧米と比較されることが多く、アジア諸国とはあまり比較されない
・韓国、台湾は、感染が増えた時の報道が(だけ)多い
・イスラエル、欧米で、ワクチン接種後に陽性者数が減ったことが繰り返しニュースになった。(その後、陽性者数が増え始めたことはあまり報道されず、増えてしまってからは少し報道が増えた)

以上の傾向を総合すると、いくつかの意図を感じます。報道機関は、何かの意図に沿った情報や、古い情報を繰り返すこともできます。嘘はついていません。つまり嘘を言わずにできることがある、という訳ですね。情報やデータを受け取る時は、こんな可能性があるということを意識し、全体を俯瞰できるようにしたいものですね。