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通関、国際物流関係者のための映画『TENET』のすすめ

 クリストファー・ノーラン監督の映画『TENET(テネット)』が好調なようです。「時間逆行」を利用して未来の第3次世界大戦を防ぐ、という謎のミッションを遂行する男の話です。いわゆるタイムスリップとは違い、巡行する時間と逆行する時間が同時に進行する不思議な映像が見られます。話の流れや映像の不思議さから、「わからないけど面白い」という魅力があり、2回以上劇場へ足を運ぶ人が多いようです。
 参考:「わからない映画」がなぜヒット? 『TENET テネット』が示す映画興行の面白さ(Yahoo!ニュース)

 私も先日、映画館で鑑賞してとても楽しんだのですが、通関業者に勤務する身として、時間逆行と同じくらい興味深い要素が2つもありました。断っておきますが、この後はネタバレを含みますので、まだ観ていない方はご注意ください!ただ、ネタを知ってから観ても十分楽しめます。

1.高価な美術品が蔵置されている保税倉庫が登場!
2.ボーイング747をその保税倉庫へぶつけて倉庫やぶりをする!

 2つも萌えるポイントがあったので、率直に言って興奮しました。

高価な美術品が蔵置されている保税倉庫が登場!

 物語の主要場面の1つが、ノルウェーのオスロ空港にあるという設定の、Freeportという保税倉庫です。そこには、美術品専用区画があり、多数の高級な美術品が蔵置されています。倉庫内は部屋ごとに高度なセキュリティで管理されています。また万一火災が発生した場合、スプリンクラーで消火すると作品を痛めてしまうので、特殊なガスで消火します。倉庫にいる従業員は10秒以内に逃げないとガスのために死亡する恐れがありますが、従業員の命よりも高価な美術品の安全を優先しているという設定です。

 実際にオスロ空港内にこのような保税倉庫があるかは不明ですが、世界各国に美術品専門の保税倉庫は存在するようです。そのような保税倉庫を利用する目的は、高価な美術品を税金(消費税)を支払わずに、安全に長期蔵置することです。外国で購入した美術品を一旦国内へ引き取ると税金(消費税)を課せられてしまいます。そのため、常に身近に飾っておきたい作品以外は、保税倉庫で保管するのです。もし作品を国外にいる人へ売ることになったら、保税のまま輸出(積み戻し)することができます。
 参考:寺田倉庫の美術品倉庫(TERRADA ART STORAGE)

 どうやらスイスのジュネーブの空港と市内に伝統のある美術品用の保税倉庫があるようです。スイスの銀行は徹底した秘密主義でマネーロンダリングに使われているという話がありますが、保税倉庫もそのような疑いが持たれているという興味深い記事がありました。さもありなんですね。
 参考:SwissInfo

 もし国際空港内に美術品用の保税倉庫があれば、空港内で作品を見せて商談ができるという大きなメリットがあります。また、外国へ輸出することになったときも、すぐに航空機へ載せられるので輸送中の盗難や破損等のリスクも減らせそうです。

 美術品用の保税倉庫という通関業者としては実に興味深いところが舞台になっていたので、そこだけでもとても楽しめました。

 

ボーイング747を保税倉庫へぶつけて倉庫やぶりをする!

 その美術品用の保税倉庫に、物語の主要登場人物である武器商人セイタ―が所有する絵画があるのですが、それが贋作であると主人公たちは考えます。それを盗み出して贋作であることを証明するために、ド派手な作戦を実行します。

 それは、空港に駐機中で輸出貨物を積み込み中のボーイング747を強奪して、保税倉庫へ衝突させて倉庫やぶりをするという作戦です。航空機への侵入、デッキ内の様子は航空貨物を扱っている人にとっては見どころです。コクピットに侵入してパイロットから操縦桿を奪った後は、パイロットを脱出用スライド(滑り台)で脱出させます。むやみに人は殺しません。倉庫へ向けてタキシングさせた後、主人公は何とも豪快な方法で脱出するのですが、それは見てからのお楽しみです。

 B747は恐らく時速40km程度の早さで保税倉庫へ突っ込みます。正確にはエプロンから倉庫の搬入口へ突っ込ませます。自動車や見慣れたULDたちが巻き込まれていく様子はスリル満点です。倉庫の搬入口へ突っ込んだところで、荷捌き場の庇にぶつかって航空機は止まります。その際の衝撃や火災で火災報知器が作動します。その隙に主人公たちが倉庫へ侵入して目的の美術品を盗もうとするのですが・・・・・・これ以上は控えておきます。

 なんと撮影には中古の実際のボーイング747が使われたそうです。突入するシーンや爆破されるシーンは非常に衝撃的でした。予告編でもちらっと映っているので、ぜひご覧ください。

まとめ

 あまり話の流れや重要な点には触れずに、個人的に気になったところだけ書きました。物語の全体は難解な箇所も多く、一度では理解しきれませんでした。保税倉庫や航空機のディテールの再確認も兼ねて、もう一度観ようと思います。
 他にも、見る方によって色んな見どころがある映画です。気になる方はぜひ映画館で楽しみましょう。



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