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レビー小体型認知症とパーキンソン病に伴う認知症の見分け方、社会保障制度の違い

前回に引き続き、今回はパーキンソン病とレビー小体型認知症についてみていきたいと思います。

前の記事では、レビー小体型認知症とパーキンソン病は、同じ原因物質が沈着する病気であることを説明しました。

では、どうやって見分けるのでしょうか?


1年ルールがある

これは、いろいろな議論があったようなのですが、1年ルールというものが定められています。
それは、認知症の出現した時期で決めるということです。
パーキンソン病は、基本的には認知症の状態ではない時期に発症する病気と定義されています。具体的にはパーキンソン病の症状である、震え、体の固さ、体の動きの悪さ、転びやすさが認知機能低下より1年以上前からあるということが診断の基準となります。逆に、認知症を発症してからパーキンソン症状が出現してきた場合、パーキンソン病の症状が出てから1年以内に認知症を発症した場合は、レビー小体型認知症と診断されます。


社会保障制度の利用が異なる

臨床現場で、戸惑うことがあるのが診断後の支援制度です。
同じ病気の原因であるにもかかわらず、パーキンソン病とレビー小体型認知症では、使える社会資源が異なる部分があります。
まず私たちが、本人の生活を支援する中で制度上気を付けているのが、訪問看護の利用方法です。

パーキンソン病やレビー小体型認知症では、自律神経症状が出現し、血圧が不安定であったり、便秘が続くなど、体調の変動が大きいことが知られています。その症状に対して、早めに体調悪化に気づいたり、便秘がひどくなった時に、浣腸や摘便をお願いするために、訪問看護を利用します。

介護保険を利用していない場合は、両疾患とも医療保険の訪問看護を利用します。
症状が進行して、生活機能に影響が及ぶようになると、介護保険を申請すると思います。そうなると、制度がちょっと変わってきます。




進行期のパーキンソン病は医療保険で訪問看護を利用する

パーキンソン病は、転びやすさなどが進行した状態(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって、生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る)では、特定疾患と認定され、医療保険の訪問看護を利用します。
介護保険を利用しないため、訪問介護や通所サービスの利用がしやすくなります。一方で、医療保険の訪問看護は、週3回までと制限があります。

レビー小体型認知症では介護保険で訪問看護を利用する

レビー小体型認知症では、介護保険を利用して訪問看護を利用します。介護保険の訪問看護は週に何度でも入ることができますが、要介護認定によって利用できる単位数の上限が決まっています。訪問看護を利用すればするほど、訪問介護や通所サービスで利用できる単位数が少なくなります



パーキンソン病は指定難病

パーキンソン病は指定難病です。認定を受けることにより医療費の助成を受けることが出来ます。 具体的にはその人の収入に応じて月の支払い限度額が設定されます。 上限が月に1万円なら、それを超えた分が還付されます。 ただし、あくまで対象はパーキンソン病に関連した医療費のみになります。訪問看護も医療保険の利用ですので、含まれます。



レビー小体型認知症は自立支援医療制度の適応

一方で、レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症などほかの認知症とともに自立支援医療制度(精神通院医療)の認定を受けることができます。また、診断から半年以上たつと、精神障害者保健福祉手帳の申請が可能です。訪問看護は、介護保険の利用ですので、自立支援医療制度には含まれません。



両者とも身体障害者手帳の申請ができる場合も

両者の疾患とも、体のバランスが悪くなりますので、身体障害者手帳(肢体不自由)を取得できる可能性もあります。そのほか、限度額適用認定証を取得できる場合もあります。ご自身がどの制度が利用可能であるかどうか、どれがメリットがあるかどうかは、収入なども関係しますので、行政や医療機関の相談窓口にご相談ください。


まとめ

このように、同じ病気の原因であっても、疾患名が異なると、使えるサービスが違うという状況があります。これは、パーキンソン病とレビー小体型認知症が同じ病気によって起こっているということが周知されるようになったのが、それぞれの病気が見つかってからしばらくたってからのことであったからともいえます。
利用できる社会保障制度は、発症後の療養において、経済的にもサービス利用においても大変重要なものですので、地区町村にお問い合わせいただくとよいかと思います。

(内容の正確性については、できる限り調べておりますが、書き下ろしでの情報共有ですので、実際の制度利用の際は、専門家にご相談ください。)



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