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子供の頃に見たトカゲの話

幼少期に見たもので、「あれは勘違いだったんだろう」と思うことはありますか?

「私は50cm以上の大きさトカゲを見ました。」
このようなことを発したところで、オオカミ少年でもベタすぎる嘘だと思われるので、誰にも言わずに十数年生きてきました。


-小学2年生 夏-


毎年お盆が近づくと数日間、祖父母の家がある山梨へ遊びに行って、花火大会やカブトムシ捕り、庭でのBBQや川遊びなど…実写版ぼくのなつやすみのような夏を過ごしていました。祖父母の家の居間で、風鈴の音とブラウン管から聞こえてくる高校球児への声援、孫たちが来ているからと近所の商店で張り切って購入してきたソーダアイスを頬張る時間は、何にも代えがたく思い出の時間でした。

永遠のような時間にも限りがあり、夏の思い出の最終日。

父の車まで帰りの荷物や貰った自家栽培野菜を運んでいると、庭の石垣から尻尾の青いトカゲが顔を出しているのが見えました。すぐさま4歳離れている弟を呼び、トカゲを見ると1匹ではなく3匹いました。そのうちの1匹は今まで見たトカゲからは想像もできないほど大きく、コンクリートでできた車止めぐらいの体がじっとこちらを見ていました。

その当時の記憶は鮮明にありますが、恐怖心や触ってみたいといった感情はなく、子供ながらにトカゲが逃げない距離を保って観察したいと思っていました。
その後、すぐに挨拶をするからと両親から呼ばれて、石垣に戻るとトカゲの姿はありませんでした。

たった数分間の出来事だったので、幻かアリス症候群(モノの大きさや見え方が違って見える現象)だと思っていたので口に出すこともなく、気がつけば、24歳になっていました。


-24歳の夏-

久しぶりの弟も山梨へ帰省することになり、祖父母の家まで車で向かっている時に、車内で何気なくあの日に見たトカゲのことを問いかけてみました。「小2の時に山梨ですごく大きなトカゲ見たんだよね~」
すると、弟が「俺もでかいトカゲのこと覚えてる」と言っていた。

話を合わせているんじゃないかと思ったので、弟に見た場所や状況をこちらからは提示せずに話を聞いていると、全く同じ石垣で見たということを話していました。

「夢だけど夢じゃなかった!」

とメイとサツキが庭の芽が出た時の感情に似たものが込み上げてきました。
勿論、両親や親戚にこの話をしたところで信じてくれるはずもなく、身内の中で大きな話題にはなりませんでした。


今、その石垣にトカゲの姿はなく、あの頃と変わらずにひっそりと苔と雑草が生い茂っています。「いつかまた見られたら良いな」と思い、今年の夏も祖父母の家へ遊びに行きます。


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