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ダークトライアドって何?――悪のパーソナリティ、サイコパシー、マキャヴェリズム、ナルシシズム――

皆さんは「ダークトライアド (Dark Triad)」という言葉を聞いたことはあるだろうか?
ダークトライアドとはサイコパシー (Psychopathy)、マキャヴェリズム (Machiavellianism)、ナルシシズム (Narcissism) といった性格特性の総称であり、これらは社会的に望ましくないものとされている。

では、それらの性格特性とはいったいどのようなものなのだろうか?
この記事ではダークトライアドを構成するサイコパシー、マキャヴェリズム、ナルシシズムについて紹介する。

○ダークトライアドの歴史について

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ダークトライアドを表す三角形。これらの概念は少なからず重なる部分があるが、どれも同じではない。

ダークトライアドの構成要素に関して語る前に、その歴史について簡単に話そう。
もしあなたがこれに興味がなければ、この見出しを飛ばして読んでも構わない。

「ダークトライアド」という言葉が初めて使われたのは2002年のことであるが (Paulhus & Williams, 2002)、その構成要素やそれら関連性に関する研究はそれ以前からあった。その結果、ダークトライアドには共通して自己顕示情緒的冷淡さ二枚舌攻撃性といった特徴があることがわかっている。

Paulhus & Williams は2002年の研究で、ダークトライアドの各構成要素が確かに異なる概念なのかを調査した。

彼らは245名の心理学部生 (女性65%) に、ダークトライアドとビッグファイブ (最も主流な5つの性格分類)、知能の自己評価質問紙を記入してもらい、のちに認知能力自己強化バイアス (self-enhancing bias; 自分のネガティブな面を無視し、ポジティブな面を重視する傾向。いわゆる「うぬぼれ」) を客観的に測定し、ダークトライアドの各構成要素がどのような点で共通し、異なるのかを分析した。

その結果、ダークトライアドで共通する特徴は協調性の低さ (Agreeableness; 他者に合わせる傾向だけでなく、思いやりや信用のしやすさも含まれる) のみだった。
ではダークトライアドはどのような点で異なるのか?
それはそれぞれを説明しながら明かしていこう。

○サイコパシー

〈羊たちの沈黙〉より、ハンニバル・レクター。彼は一般的にサイコパスと呼ばれている。

親しみやすいように見出しにはサイコパシーと書いたが、正確には潜在性サイコパシー (subclinical psychopathy) である。潜在性というのは「病気とは見なされない」という意味である。もしこの特性をもつ者が病気と見なされるならば、DSM-5 (アメリカ精神医学会が出版した精神疾患の診断・統計マニュアル) に準拠して「反社会性パーソナリティ障害 (anti-social personality disorder)」と診断されるだろう。

性格特徴としては、反社会的衝動的共感性が低い思いやりが低い他者やその感情を考慮しない不安が低いスリルを求めるといったものが挙げられる。

Paulhus, & Williams の研究では、外向性開放性 (好奇心など) が高く協調性誠実性神経症傾向 (情緒不安定性とも呼ばれる) が低いことがわかった。
知能に関しては、言語性IQより非言語性IQ (動作性IQとも呼ばれ、知覚処理や視覚運動能力を示す) のほうがわずかに高く、わずかに自己強化バイアスがはたらいていることがわかった。

なお、ソシオパシー (sociopathy) という似た言葉があるが、これはサイコパシーと同じ性質を示すが、後天的にそれが備わるものという点で異なる。
ソシオパシーは暴力的な環境で育つと発生するとされている。

サイコパスは共感力が低いため、他者の考えていることや感じていることを理解できず、社会的絆を結ぶことが困難である。

しかし、不安や罪悪感にほとんど悩まされないという性質は大胆な行動力にポジティブな影響を与える。さらに、共感性の低さと相まって、恐怖心なくして合理的な判断や指示を行うのに長けている。

○マキャヴェリズム

イタリアの外交官だったニコロ・マキャヴェリ。の語源となった人物。『君主論』を著した人物として有名であり、マキャヴェリズムの概念もこの著作から由来している。

マキャヴェリズムという言葉はイタリアの外交官であるニコロ・マキャヴェリから由来しており、概念は彼の著作『君主論』からきている。

潜在性という言葉は使われていないが、マキャヴェリズムも病気ではない。しかしこれも度が過ぎれば「反社会性パーソナリティ障害」と見なされるだろう。

マキャヴェリズムの基本的な特徴は操作性冷笑性不道徳性である。具体的な行動的特徴としては、権威への反発欺瞞自己中心的行動良心や感情の欠如強い自信と警戒心が挙げられる。
なお、マキャヴェリズムは女性よりも男性のほうに多い

Paulhus, & Williams の研究では、協調性と誠実性が低いことがわかった。
知能に関しては、言語性IQより非言語性IQのほうが高いことはわかったが、自己評価と実際の知能のズレは見られなかった。

マキャヴェリズムは自分の願望を中心に考える傾向にあり、のちに言及するナルシシズムと同様に他者の願望などを考慮に入れない
さらに、自分の欲しいものを手に入れるために他者を騙したり大切にしている友人さえも支配しようとする

○ナルシシズム

ギリシア神話に登場する狩人・ナルキッソス。ナルシシズムの語源であり、泉に映った自分の姿に恋する呪いを受け、水面に映った自分にキスしようとしたら泉に落ちて溺死した。ちなみに筆者は初め、この画像をナルキッソスではなく井上裕介にしようとしていた。

これも親しみやすいように単にナルシシズムと書いたが、サイコパシーと同様に、正確には潜在性ナルシシズム (あるいは正常ナルシシズム) である。ただしこれにおいては重度になると「自己愛性パーソナリティ障害 (narcissistic personality disorder)」と見なされる点でほかの概念と異なる。

ナルシシズムの特徴は、過度な利己性うぬぼれ傲慢支配性思いやりがない批判を受け入れないことが挙げられる。

Paulhus, & Williams の研究では、外向性と開放性が高く協調性が低いことがわかっている。
知能に関しては、IQがわずかに高いが、それでも自己強化バイアスがはたらいていることがわかった。

ナルシシズムは自分の能力を誰よりも高く評価する傾向があり、他人の考えにほとんど関心を向けない。しかし、自分の行動に対する批判に対しては強く反発する特徴をもっている。

そして、ナルシストは親友のように友好的だった人物を些細なことで切り捨ててしまうことがある。
これは「対象恒常性 (object constancy)」の欠如によって起こるとされている。

対象恒常性とは、たとえ相手と些細な対立などがあったとしても、すぐに相手との関係が険悪になることはなく、これまでの関係に保たれることである。

しかし、ナルシストは対象恒常性が欠如しているゆえに、些細なことで彼ととケンカしてしまったら、仲直りする見込みはほとんどなくなってしまうのである。

○まとめ

いかがだっただろうか?
以下に簡単にそれぞれの性質をまとめておこう。

  • サイコパシー
    共感性が低く反社会的
    不安を感じづらいため衝動的で、スリルを求める
    その代わり大胆な行動をとることができる長所がある

  • マキャヴェリズム
    典型的な暴君タイプで、他者を支配・操作しようとする
    目的のためなら手段を選ばず、躊躇なく欺瞞をはたらく
    自らの願望に忠実で、逆に他者の願望には無関心

  • ナルシシズム
    いわゆる自己愛人間
    うぬぼれ屋で、傲慢
    ゆえに批判に対して過剰に反応する

また、ダークトライアドに関して述べられた書籍も紹介しよう。

'The Dark Triad: The Dark Psychology Behind Narcissistic, Machiavellian and Psychopathic behavior and manipulation'

この本は英語で書かれているが、ページ数は少ないため、DeepLなどの翻訳機能を駆使すれば、読むのに苦労はしないだろう。

ちなみにこの著者であるGrayson Wick氏だが、正体はよくわからない。
おそらく、kindle出版で小遣い稼ぎをしようと考えている一般人だと考えられ、研究機関に所属しているような人物ではないと見受けられる。

ただ、ダークトライアドの概観について知るだけなら良い教材だろうと考え、ここで紹介した。
もっとも、今後の記事ではこの本よりも詳しくダークトライアドについて解説するつもりだが。

次回はダークトライアドの関連概念であるダークテトラドおよび日常的サディズムについて解説したいと思う。

○参考文献

Paulhus, D. L., & Williams, K. M. (2002). The dark triad of personality: Narcissism, Machiavellianism, and psychopathy. Journal of research in personality, 36(6), 556-563.



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