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無茶な注文

――駄目。もう持ってるじゃん。
「電車止めるのは持ってないよ」

スパイダーマンスーツの話。
五歳息子はもはや「オタク」。
今やアニメでは飽き足らず映画を探して見るほどに。
「電車を止める」とは『スパイダーマン2』の名場面。
重ねた布団を暴走列車に見立て、演じるのがブーム。
自ずとそのコスチュームが欲しくなる……

――三月になったら、自分のお年玉で買いな。

その三月がきた。
朝。
「パパも同じの買ってよ」
――パパはコスプレ趣味じゃない。
「一緒にやりたいんだ」
お金はものではなく体験に使え。
知識人が言ってた気がするけど拒否。嫌だよ。

「お金はボクが出すから」
誰ですか、子どもに壱万円あげたお婆ちゃんは!
しかも分け与えられる性格のいい坊や……でも拒否。
――パパは酸素してるからマスクつけられないの。
「下だけでも」
もっと嫌だ。

夜。
「肉感すごい拾っちゃってる」
着たくなかった最大の理由を妻に指摘される。
「パパ、写真撮ろうよ」
――絶対に嫌っ!


如月

ふくらかな如月父子のペアルック

(ふくらかなきさらぎふしのぺあるっく)

季語(仲春): 如月、衣更着(きさらぎ)……寒さが戻り衣を更に重ねるの意から

※ふくらか……ふっくらとしているさま


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