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『遠回りの旅路』

青年は悩んでいた。
その答えを見つけ得ぬまま帰省した実家。
一人暮らしに家を出て三年が経っていた。
気まずい夕食後、母親が「皆でやらない?」と取り出してきたのは『日本旅行ゲーム』という双六。
青年の脳裏に、とある光景が昨日のように蘇る。

自身六歳の春。
夕食後、やはり母が「これやろうよ」と持ち出した。
北海道をスタートし各地の名産を買いつつゴールの沖縄を目指す盤ゲーム。
「勝負は嫌い」と拒否していため、買ったままやらずにいた。
渋々頷き、父親も加わって三人で遊んだ思い出。

途中、父が最短を目指さず各地を放浪する行動に出た。
「こっちの方が近いよ」と指摘しても「遠回りが楽しいんだ」と譲らない。
息子をわざと勝たせようとしてるのかと、幼心に感じた。
けれど今、また同じような駒の進め方をしてる父を見て――

「遠回りが楽しいんだ」

言葉が身に沁みた。
青年はふっと微笑むと、訝しむ二人の視線を受け流し、またサイコロを振った。


春宵のボードゲームのびりつけつ

(しゅんそうのぼーどげーむのびりっけつ)

季語(三春): 春の宵、春宵、宵の春



※日記から発想をとばして小説 にしています__🖋
ゲームは正確に言うと『どこでもドラえもん 日本旅行ゲーム』。
いつ以来だろう、童心に帰ってプレイしました。
こういうのって性格が出ますよね。自分は勝つと言うより、ゲームが盛り上がる方をつい優先するタイプです。


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