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表参道がファッションの街になった理由【建築史家が語る東京建築の歴史】

お寺でカルチャーを学べるKOKOROアカデミー


 お寺の在り方を、より時代に合ったカタチにしたい。そんな想いから、2016 年5月に銀座・中央通り沿いにオープンしたのが、築地本願寺のサテライトテンプルであるGINZAサロンです。

 現在、GINZAサロンで実施しているのが、僧侶が仏事や人生に関する相談に対応する「よろず僧談」と、仏教的な考え方をベースにした各種講座や、こころとカラダを豊かにする体験型講座などを受講できる「KOKOROアカデミー」です。そんなKOKOROアカデミーの講義の講師の先生方に、ご自身の担当する講義の魅力を伺いました。

講座名 シリーズ 建築さんぽ東京 講師・倉方 俊輔            講座内容
東京の様々なエリアにフォーカスして、その街にある建築にまつわる歴史をひもといていきます。実際の道順に沿って建築を紹介していくので、まるで実際に東京を散歩しているような臨場感を楽しめます。※ライブ配信あり

東京の「物語」をひもとく建築さんぽ


 意外と知られていませんが、日本は、世界に類を見ない建築大国です。中でも東京は、非常に多様な個性を持つ街で、エリアごとにその建築の背景は大きく違います。たとえば、上野と表参道は、同じ東京といえども、土地に秘められた物語は全く異なっているのです。

 まず、上野は、ル・コルビュジエが設計した日本唯一の建築である国立西洋美術館から、MoMA(ニューヨーク近代美術館)を手がけた建築家・谷口吉生さんの法隆寺宝物館まで、近現代の建築のミュージアムとしても知られています。

西洋美術館 (1)

上野恩賜公園内にある国立西洋美術館 

しかし、そんな上野は、江戸時代までは徳川将軍家の墓所である寛永寺をはじめ、いわゆる旧幕府の中心地でした。その後、明治に入ってから、上野恩賜公園に次々と美術館や東京藝術大学などの学校が建てられたことで、日本が文明化したことを示す西洋文化のショーケースとして扱われるようになったのです。

表参道がファッションタウンになった理由


 一方、表参道・原宿エリアは、もとは明治神宮に連なる大きな参道を持つ「郊外」でしたが、関東大震災の復興支援で建てられた同潤会アパートをはじめ、近代的な集合住宅が多数建築され、文化の集積地へと成長していきます。戦後は、現在の代々木公園に進駐軍の駐屯地ができ、隣接する原宿で米軍の放出品やアメリカ人向けの商品が売られるようになったことで、外国文化の発信地に。

 その後、表参道は、真っ直ぐな並木道であることや若者文化の発信地・渋谷近くという立地が幸いし、世界的な建築家たちが手掛けたトップブランドの旗艦店が立ち並ぶ街へと変化していきました。かつての「郊外」が世界有数のファッションタウンになるとは、明治神宮の参道を作った当時の人々には、思いもよらぬことだったでしょう。

同潤会 (1)

元・同潤会アパート

建築から見える「人間の営み」

 このように街と建築の関係を見ていくことは、偶然と時代の流れが重なり合った人間の営みを見ることにほかなりません。中でも様々な歴史の舞台となってきた街・東京の建築に触れることは、まさに人間の歴史を振り返ることと同義だと思います。さらに、こうした貴重な建築が、年を追うごとに失われていることは事実です。いまある限られた資産を通じて、その多面的な個性を知っていただければと思います。

 また、建築の良い点は、外観を鑑賞することが比較的自由であるということ。講義で出てきた建物を、実際に歩いて回るのも一興です。地方在住の方であっても、現在はオンラインでご参加いただけます。画面を通じて、東京の歴史さんぽを楽しんでみてください。

倉方 俊輔(くらかた・しゅんすけ)
建築史家。大阪市立大学教授。伊東忠太研究でも知られ、著著に『はじめての建築』『東京モダン建築さんぽ』ほか多数。近著に『京都 近現代建築ものがたり』。日本最大級の建築公開イベント「イケフェス大阪」に立ち上げから関わる。

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 現在は、オンライン受講が可能な講座も増えています。学びへの意欲が高まる秋だからこそ、KOKOROアカデミーの講座を通じて、新たなカルチャーに触れてみてはいかがでしょうか?

※KOKOROアカデミーセミナー受講、またはGINZA SALONにおけるその他のイベント参加に関しては『築地本願寺倶楽部』にご入会のうえ参加いただくこととなります。なお、入会金・年会費は無料です。入会はこちら



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