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つるっといわし・ぐいっと生「根室花まる 」KITTE丸の内店

東京駅の近傍、駅直結の複合施設であるKITTEは、そのむかしは一棟まるまる郵便局だった。なんとなく建物にその名残が残っているのだが、にわかに「なごり」を残したらしく、なんだかもったいないがらんとしたスペースが多い気がする。そして、その一見無駄にみえるスペースが、東京駅近隣の商業ビルにないほんわかしっとりしたいい雰囲気を出していて…実は用もないのに日曜日の夕方などふらりと出かけてみたりする。

KITTEの上階の飲食店フロアには、さまざまな人気店がしのぎを削っているようだが、「根室花まる」は別格の賑わいを見せている。現在では行列を作らずに呼び出し制になったようだが、以前はキッテの吹き抜け部分通路に十メートルを超える巨大な行列を作っていた。回転ずしとしては大大成功と言ってよいのではないか。

かくいう私も、キッテがオープンして間もないころから、「あの、北海道の回転すしや、スゴイらしいよ」とのうわさを聞きつけ、ふらりと出かけて行って…2時間以上並んだ口だ。長い。そして、キッテの吹き抜けからぼんやりと一階部分を眺めては、みんながこんなに回転ずしを好きな理由を考えて時間をつぶしていた。だって、結局割高でしょう。ここはそんなに安くはないですよね。

そう、根室花まるは、回転すし店としては高級店の部類に入ると考えられる。500円を超える皿も目白押しではないか。二皿食べたら1000円超え。回らないすし店に十分行けるお値段である。

しかし、この店の魅力はなんとなく、劇場のようなドラマティックな感覚を味あわせてくれるところにある。ほかの回転すしやとどう違うのか、なんとなくだが、お値打ちのネタが、ざっくり料理されて今出てきました、じゃじゃじゃーん、といった雰囲気が始終店内に漂っている。マグロもイカも、その他のおなじみのネタも東京の街ならこれくらいのネタならもっと安く食べられそうなものだが、こちらで頼むとなんだかすごく楽しい雰囲気になってしまうのだ。

流行った店によくある光景で、いい大人の二人連れなんかが、高級ネタばかりの金彩調の皿を20段、30段と積み上げているのを見るのも楽しい。いつか自分やってみたいものだ。「いくら」は頼まないけど。

私はこちらでは生きのいい「生ビール」を数杯頂くので、寿司は控えめだ。中でも、よく頼むのはイワシの握り。普通の店よりも大きめにカットされた…というか、ほぼ一匹の半身分のイワシのネタを小さなシャリにのっけてくれる。わずかな生姜とネギが香る。これを一口でつるりといただいて、ビールで流し込むのが好きだ。魚の生臭さは多少感じるが、それすらも心地よい。流行りの店の、ビールはなにより新鮮なのだ。これ大事。

汁物を頼むこともお勧めする。イワシのつみれ汁など、新鮮ないわしのつみれのほか、人参やダイコン、そしてゴボウとネギがたっぷり入っていて、これだけでも結構お腹いっぱいになる。酒飲みにはうれしい〆となる。

待つだけの価値はある。そんな回転すし。旅の終わりにいかがでしょう。新幹線の出発時刻とにらめっこして入念に計画を立てる必要があるが。

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