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画になるとろろなっとう「信濃路」茗荷谷

インスタグラムをしていますか。ひと時に比べると、めっきりスマホで食べ物を撮ることも減ったように思う。ブームが一難去ったという感じだ。そういえば「映える」という言葉も使われなくなった。もう、インスタ映えのために飲食店で注文するなんて、かっこ悪いことになったのかもしれない。ほっとしますね。

美味しいものにかぎって、スマホをかざすのを忘れる、また、お店の人に嫌われたくないから撮影を控える…ゆえに、どうでもいい写真が増える…というデフレスパイラル。クラウドの中にはどうでもいい写真が溜まっていく。やよい軒のアジフライとか…おいしいですが、なぜに写真を撮ったのか謎は深まるばかりだ。

信濃路は、茗荷谷駅をでて、春日通りを渡ってから少しだけ東に進んだ、ビルの地階にひっそりとある、地元の老舗人気店だ。お昼時などこちらの美味しいそば目がけて様々な人たちが集まってくる。細身の、翁系のそばに近いのもありがたい。

果たして、蕎麦にインスタ映えを求めるだろうか。若い方などは、そのような強引な力業には及ばないだろう。しかし、何かの拍子に魔がさして、こちらの信濃路で蕎麦の写真を撮るとなると、インスタの鉄板、海老天を使用した天ぷらそばはお勧めできないのだ。

こちらの天ぷらそばはいい素材を使っていて、衣も最低限の厚みなので、とてもおいしい反面、チェーン店の蕎麦屋のボリュームを感じられないのですよ。おいしいが故の、映え力相殺。でもこういうことって、よくあるかもしれませんね。インスタを意識したアイスクリームやタピオカドリンクってたいしておいしくないことが多い気もする。

お蕎麦の御膳セットを頼むと、美しい長方形の蒸籠に、蕎麦と、天ぷらが別々に分けて美しく盛られ、これに茶碗蒸しや香の物なども付いてきてコスパが良い。ぜいたく気分を満喫できる。しかし、「長方形の蒸籠」「蕎麦、天ぷら別盛」「衣の少ない上質の海老天」これらの要素が相まって、見栄えの良い写真が撮りにくいのだ。まったく世の中は不平等にできている。

もしも万が一、こちらのお店でインスタグラムに投稿したいとなると、おすすめはとろろ納豆の蕎麦だ。こちらのおそば、とろろはやはり上質のものを使用しているのだが、おそらく本物の大和芋を使用しているのだろう。どんぶりに盛られた蕎麦の上、真っ白いすりおろし芋がこんもりと盛られていて美しい。当然、このようなとろろは家では作れない。また、納豆は肥え太ったと形容できるほど大粒の豆を使用。とろろの上にちょいと乗っかって、やはりつやつやと輝いている。

お味はあっさり。こちらのお蕎麦の食感にベストマッチ。梅雨時に体調がすぐれないときなどには特におすすめだ。つるっとはいって食べやすい。この時ばかりは、瓶ビールは控えておく(海老天には瓶ビールをどうぞ)。

とろろ納豆のインスタ、海外の方には理解しにくいか。でも試す価値はありますよ。

ひととは違う、あなただけの世界観をとろろで表現してはいかが。

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