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「ニュースが違って見えてくる!」代官山 蔦屋書店 コンシェルジュ推薦本5冊を高校生がご紹介!

“政治や社会が身近に感じられるようになる”5冊の本を読んで、ch FILESスタッフの高校生が感想などを座談会しました。本を選出いただいたのは、代官山 蔦屋書店 人文コンシェルジュの宮台由美子さん。「どうしたら政治や社会のことを身近に考えてもらえるか、熟考しながら選びました。これからの未来を担う高校生に自信を持ってオススメしたい本ばかりです」と太鼓判。

1冊目 『本日は、お日柄もよく』

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本日は、お日柄もよく/原田マハ(徳間文庫)
【宮台さん】 政治家が話す選挙や国会で話す演説。きちんと聞いたことありますか?
その演説、もしかしたらスピーチライターが手がけているかもしれません。
政治家のまわりには様々な立場の支える人がいて、選挙のたびに大奔走しています。どんな思いを抱いているのか、どんな政策を掲げているのか、政治家の声に一度耳を傾けてみたくなります。選挙や政治について知ることができる爽やかで感涙必至のお仕事小説。

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しの(高1) 政治家たちの街頭スピーチなどを裏で作っているスピーチライターと家族たちののお話なんですが、“何々制度”とかが出てくるんじゃなくて、政治の後ろにある、人の想いや言葉の力を存分に感じることができる、温かい本です。

この本を読んで感じたのは“人の想い”。政治とは、人の想いや言葉を具現化したものなんだなと思いました。

だからこそ、私たち国民が「こうしたい。」と意志を持つことが大切なんだと思ったし、人の想いは、行動の源だと感じられます。

小説の最初は結婚式のスピーチから始まるんですが、言葉の力って本当にすごいなと思ったし、主人公の恋の行方も読みどころです。とても面白かったです!


2冊目 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

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ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ(新潮社
【宮台さん】 イギリスのミドルクラスが通う小学校で平和な学校生活を送っていた僕が、中学校に入学して人種差別や所得格差、セクシュアリティなど様々なイギリスが抱える社会問題にぶち当たり、親子で悩みながら成長していくノンフィクション。世界中で起きている色々な混乱や問題を乗り越えていくために、どう考えたらいいのか。日本に生きる私たちにも、他人事ではない様々な社会問題を考える向き合い方や、ヒントが得られる一冊です。

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さおり(高3) まず、タイトルから目を引いて、面白いよね。

イギリスに暮らしている著者の家族の話なんだけど、旦那さんが外国人で、中学生の息子さんはハーフなんです。息子は「東洋人」と言われて差別を受けるんだけど、学校では他にも移民の子への差別やLGBTの差別があったりして…。

日本では考えられないような差別の問題があるので、日本ってこんなに安全で安心して住めてるんだな、海外では中学生の時にこんな壁にぶち当たるんだ、自分はこんなにも無知だったんだと知りました。

人間は誰かを見下してなきゃ生きていけないのかと思ってしまったし、肌の色や生まれた国、親の経済力などでその人の身分や価値を決める世界は、もうなくなって欲しいなと思いました。

でも筆者であるお母さんがすごく面白くて、所々に面白い説明が挟まれるので、楽しく読めて、すごく考えるきっかけになります。家族の話とか学生の話って、身近に感じるから読みやすいですね。


3冊目 『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

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目の見えない人は世界をどう見ているのか/伊藤亜紗(光文社)
【宮台さん】 パラスポーツなどで障害がある人をメディアで目にすることも多くなりましたが、実際に街で、たとえば視覚障害のある白い杖をついている方を見かけことはありますか? そんな時、あなたはどんなふうに感じるでしょうか?
大丈夫かな、危なくないかな、と心配したり、逆に少し離れてかかわらないようにしたりしたことがあるかもしれません。では、視覚障害の方たちは目が見えないでどうやって世界を認識し、生活し、行動しているのでしょうか?
自分と違う感覚を使って生活している人の存在を知り、好奇心や興味を持つことで、社会を見る目がきっと広がってくると思います。

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ももか(高2) 伊藤亜紗さんっていう学者さんが書かれた本なんですが、イラストをヨシタケ シンスケさんが描いておられます。

最初はちょっと難しそうでちゃんと読み切れるか心配だったですが、読み進めてみると伊藤さんの文体がやわらかくて、あっという間に読んじゃいました(笑)

まず驚いたのは、目の見えない人は道の傾斜を感じ取ったり、見える人よりも世界をより立体的に捉えているのかもしれないという発見でした。目の見えない人の世界は真っ暗で「可哀想」と私は無意識的に思っていたのかもと情けなくなったのと同時に、目の見えない人にもそれぞれの「個性」があることを知りました。

生活の中で、自動販売機はくじ引きみたいな、ロシアンルーレット状態で押すとか、回転寿司も食べるまで何を取ったかわからないというエピソードとか、すごくポジティブな捉え方をしているのが印象的でした。

しの 目の見えない人にどう関わろうかって考えることはあるけど、目の見えない人の世界がどうなっているかって知る機会がなかなかないですよね。

ももか うん。目の見える人と見えない人がグループになって絵を鑑賞する「ソーシャル・ビュー」のことも書いてあって、目が見える人が見えない人に「この絵はこういう印象があるよ」と説明していくと、人によって説明の仕方が違って新しい発見があるというのも面白かったです。

例えば私たちだったら「これは空の青だよね」とか言えるけど、「空の青ってどういう青?」って聞かれると難しいよね。細かいところまで突き詰めて自分の固定観念を壊していくのって面白いなと思いました。


4冊目 『2020年6月30日にまたここで会おう』

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2020年6月30日にまたここで会おう/瀧本哲史(星海社)
【宮台さん】 この本を高校生で読んだら、生き方が変わるかもしれません。
著者はエンジェル投資家で教育者でもあり多彩な顔を持つ方で、ご自身の思想と熱量を込められた伝説の講義を収めたのがこの本。
瀧本さんは、これからの世界を変えるのは若者であり、時間がかかっても正しい選択をしていけば必ず世界を変えられる。自らが明かりを燈し、明かりとなれ、と檄をとばします。さて、講義から8年後の今年の2020年6月30日。それはどんな日だったのでしょうか。
あなたの心にも、社会の一員として未来を生きるための力強い明かりが、きっと燈るでしょう。

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あみ(高3) 最初から「はい、瀧本です。」で始まって、本当に講義を聞いているようです。

8年前の講義とは思えないほど熱量が伝わってきて、今まで疑問に思っていたこの社会に対して、そういう考え方もあるのか、という新しい発見にもなりました。ちょっと難しいんだけど、教科書には絶対書かれていない裏側まで知ることができます。

瀧本さんのいろんな名言が出てくるんですが、「政治じゃなくても何でもいいけど、自分でできそうなことを見つけたり、できそうな人にやらせるという地道な方法でしか世の中は変えることができない。自分の人生は自分で考えて自分で決めてください」ということをおっしゃっていて、他人任せではなく、自分で考えることが一番大切だということを感じました。

あと、「この講義を聞いて「感動した」ではなく、行動を起こして欲しい」とおっしゃっているんです。私はいつも本を読んで「感動した〜」で終わっちゃうので、その言葉が身に染みました。

さおり あみちゃんは実際、自分はどんな行動を取りたいって思った?

あみ 私はこれまで“海外に逃げたい”って思ってたんです。日本はもうダメだから海外に行こう、って。だから大学も海外に行こうと思ってるんですが、瀧本さんは日本に残って日本を変えようとされていて。「2020年にまたここで会おう」と言って、2019年に病気で亡くなられたそうです。

私ももう少し日本のことを知って、日本を変える努力もしたいなと思いました。


5冊目 『かしこくて勇気ある子ども』

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山本美希/かしこくて勇気ある子ども(リイド社)
【宮台さん】 標題の「かしこくて勇気ある子ども」の一人であるマララ・ユスフザイさんは、わずか15歳の時に、正しいことを主張し、命を狙われます。
社会に対してきちんと自分の意見を言える人は、とても強く、素敵です。
でも実際にそういう子の親や身近な存在になったらどうでしょうか? この漫画に出てくる二人も、出産が近づきコントロールができなくなる身体と呼応するように我が子が命を狙われるような存在になってしまったら、と思い悩むようになります。ラスト、二人が見た幻影と言葉の意味を自分なりに読み解き、想像してみてください。未来には何が起こるかわからないけれど、それを乗り越えるためにどうしたらいいのか考えさせてくれます。

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みさき(高2) これは中が全部漫画で描かれています。

表紙に描いてあるカップルが、これから生まれてくる自分たちの子どもに、どんな子になって欲しいかということを語り合っていくんです。

奥さんは、偉大な功績を残した子どもたちを見て、自分たちの子どももそんな風に育って欲しいなと話すんだけど、徐々に、そんな親たちの理想が本当に子どもたちにとって正しいことなのかと悩んでいくんです。

世界のすごい子どもたちは、例えばノーベル平和賞を取られたマララさんとか、他にも自分で起業して世界で活躍する方とかアンネの日記のアンネ・フランクとか、ジャンヌ・ダルクとか。

子どもをどんな風に育てるかというひとつの選択を取っても、みんなやっぱり不安なんだなと思ったし、親も自分たちを産んで、悩みながら育ててくれているんだなと思ったら感謝しないといけないなと思いました。文字とか説明が少ないので、自分でいろいろ考えました。

マララさんのスピーチを英語の授業でやっていたのでとてもタイムリーで、社会を身近に感じることができました。

自分に自信が持てない人や福祉に興味がある人におすすめです!


本を読んで、政治・社会について考え方が変わったことはある?

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しの 話聞いてたら全部読みたくなりました(笑)。表紙とかタイトルから面白そうですよね。私がこの本(「本日は、お日柄もよく」)を読んで思ったのは、候補者が掲げた公約の後ろにある、その人の想いとか、どうしてそうしたいのか、という部分を見ることも大切なんじゃないかなということでした。

これまで政治って、どうしても「○○制度」とか、「憲法何条」みたいな言葉だけにとらわれて、難しいを感じてしまっていたんじゃないかなって。

だから自分が選挙に参加していくために、まず自分は社会をどうしたいか、ということを考えていきたいなと思いました。

さおり うん。私の本(「僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー」)で書かれていた差別は、普段自分に関係のあることではないと思っていたんだけど、身近なことなんだと気付かされたよ。いま学校に、フィリピンの男の子がいるんだけど、周りの子と合わなくてよくケンカになっていて。

今までは私がどうにかできることじゃないと思って関わらないようにしていたんだけど、これからは話にも参加したいし、その子がどうしてそういう行動をしたのかをもっとみんなにも知って欲しいと思った。差別の中にも、人それぞれ感じ方は違うだろうし、とても難しい問題だけど、自分ももっと関心を持ってニュースとか見ていきたいなと思ったよ。

あみ その国の文化を知る、と言っても、結局は人それぞれだったりもするもんね。

しの 国とかの括りで考えるのも良くないよね。

さおり うん、固定概念だったりするからね。これを打開しないとこれから先の世界は変えられないから、みんなで考えていけたらいいなと思いました。

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ももか 私もこの本(「目の見えない人は世界をどう見ているか」)を読んで、人って一括りにしたがるところがあるなって思ったんです。この人は女の人だから、とか男の人だから、とか。勝手に決めつけてカテゴリーに縛り付けてしまうところはあるよね。

目の不自由な人のことも、“自分とは違う存在”みたいに遠ざけていた自分がどこかにいたのかなと思って。外国の人もそうだし、自分の周りの人も、障害がある人も、必ず個性があって人それぞれ違うんだなと思いました。

しの 政治とかって、制度としてできていくけど、その前に、いろんな人がいるから、私にとってはこれがいいけど、他の人にとっては違うだろうし、他の人の目線に立たないとわからないから、みんなが声を上げていくことが大切なんじゃないかな。

選挙権の年齢が下がったこともあるし、私たちも10代としての意見を言っていくことで変わっていくんじゃないかなと思いました。

みさき 学校で多数決とかしたら票の多い方に寄って、自分の意見ってそんなに持たずにきたけど、選挙も人気のある方に入れちゃえとかじゃなくて、テレビとか周りの言葉に流されずに、ちゃんとスピーチとかを聞いて自分で選んでいくようにしたいなと思いました。

しの マララさんにしても、教育を受けたくて戦うとか、日本では考えられないし、やっぱりその人の視点を知らないとわからないですよね。

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あみ 日本ではちゃんと全世代の意見が聞けるように選挙があるのに、結局投票には高齢者の方ばかりが行って高齢者のための政策ばかりになっている気がするから、私たち若者が選挙に行かないと自分たちに不利になるよね。

さおり そうだね。まずは自分で興味を持って調べて行動を起こさなきゃ何も変わらないし、文句を言うならまず自分がどうにか視野を広げろってことだね。

ももか 政治に限らず、こういういろんな話が誰とでもできる空気ができたら最高だなと思うなぁ。

あみ 普段の生活に話題がもっと出てきていいのにね。

さおり それはある! 制度だけを暗記するんじゃなくて内容を学ばないと一生わからないもんね。

あみ 政治・経済って、暗記してるだけだから(笑)


本の選出:宮台由美子さんプロフィール

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宮台由美子(みやだい・ゆみこ)
代官山 蔦屋書店人文コンシェルジュ。
哲学、思想、心理、社会、評論などの人文書の選書展開や、イベント企画などを行う。人文書を身近なテーマと結びつけて対話をする代官山人文カフェを始め、本と読者をつなぐ企画に携わっている。


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