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《詩》オーロラ

腹に還れと言うあなたの
背中に北極星が泣いていた
どうしようもなさの砂金のように
しずかにひとつ泣いていた

犬が吠えている
赤く流れる渓谷に向かって
何かをそこにみたかのように
私の源が白い飛沫へと変わる
波に揺られて命が宿るように

月と川辺に座り
岩間からにじみ出る
透き通った赤を見つめている
目を細めた
どこをみているのかはわからない
けれど横に長引く目の真中にとらえた
ひっそりと立ち
こちらを見つめるあの獣を
そっと地を蹴り暗幕のなか
消える姿を

犬が吠えている
薄く淡い
上空の青色のカーテンに向かって
さよならと 最期に言う日に現れる
あのオーロラに向かって

古屋朋